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第185話 かーちゃんに『僧兵』のクラスチェンジ条件を聞く

 体中焼肉臭くなって自室に戻ってきた。


 お湯を沸かしてほうじ茶を入れて、冷蔵庫からキュウリのキューちゃんの入った小鉢をだす。

 玄関を向いて。


「【オカン乱入】」


 いつものように光の柱が降りてきてかーちゃんが出て来た。


「お、タカシ、今日もマンションやな」

「うん、最近は狩りも安定してきたからね」


 最近は戦闘でかーちゃんを呼ぶのがめっきりと減った。

 夜にかーちゃんを呼び出して、今日あったことを話す事が多い。


「強くなってるんやな、うち嬉しいで」


 かーちゃんはそう言いながらブーツを脱いで部屋に入って座布団に座った。


「チアキも入ったし、泥舟も職業ジョブチェンジしたからね」

「せやな、順調そうでなによりや、でもそういう時こそ偉い事が起こる事がおおいから、気を抜いたらあかんで」

「気を付けないとね」

「今日は何があったん?」


 かーちゃんと今日あった事を話しあう。

 先生達との狩りもだんだん彼らが強くなって来て楽しい所だ。


「そういえば、かーちゃん、『僧兵』の職業ジョブチェンジ条件ってなによ?」

「僧侶と戦士の両方になれる奴で、聖職者の資格を持つ、が条件やで」

「資格?」

「せいや、プロの聖職者というか、神父さんとか尼さんの資格やな、それがあってパラメーターが条件に達していればなれるで」

「……」


 それって、日本だと得度してないと駄目って事か?

 俺が髪に手をやると、かーちゃんは気が付いたように、ああと言って笑った。


「せやな、日本だと髪を切って坊主にならないとあかんなあ、神道の禰宜さんや巫女さんでもええんやろうが」


 後醍醐先輩もまだ僧侶の資格は取ってないから『僧兵』は出ないのか。

 だけど、外国なら聖職者でパラメーター満たせている人が居そうなものだがなあ。

 バチカンとかさ。


「あと、セコンディナ教だと、僧侶の証的な物を試練で取らねばならんな」

「神様が出す証明書的な物がいるのかもね、そうするとこっちで『僧兵』が出て無いのもうなずけるな」

「せやなあ、タカシ、『僧兵』やりたいんか?」

「うん、かーちゃんがやってるし、回復あるのは良いかもって」

「そうかー、嬉しいなあ、だけど『僧兵』って刃物もてへんで」

「うっ」


 『暁』が持てないのはキツいなあ。


職業ジョブは重要やからな、じっくり考え」

「解ったよ、かーちゃん」


 キューちゃんをぽりぽり食べながらかーちゃんはいろいろ話してくれる。

 でも楽しい時間はあっという間に過ぎて、召喚の限界はすぐ来てしまうね。


「それじゃ、また明日な、タカシ」

「うん、おやすみ、かーちゃん」


 かーちゃんは粒子になって消えていった。

 うん……。

 居なくなると、部屋の広さが感じられて寂しいな。

 異世界のかーちゃんと会って、ずっと一緒に居たいな。

 家族だからな。


 ベランダに出て夜景を眺める。

 五年前と同じで違っている風景だ。

 色々な物が変化していく。

 俺のまわりも急速に変わって行く。

 良い事も多いけど、悲しい事もあるな。

 俺は五年後、どうなっているんだろう。

 配信冒険者のプロになって最深部の魔王を倒せていたら良いんだけど。


 ポケットのDスマホが振動した。

 誰から、と思って見たが、非通知だ。

 間違い電話かな。

 出てみる。


『見つけた~、タカシく~ん』

「……誰だ?」

『りつこよ』


 げっ、りっちょん!

 見つけたって?

 下を見た。

 街灯の下で、りっちょんがこっちを見上げていた。

 こ、こわっ!!


『いまいくわ』

「くんなっ」


 ブツンと電話は切れて、りっちょんが小走りでマンションに入っていくのが見えた。

 やばい。

 鏡子ねえさんを。


 プルルルル。


『どうしたタカシ?』

「りっちょん来た」

『今行く』


 やばいな、りっちょんに家を知られてしまった。

 あいつはなんかおかしくなってるから怖いぞ。


 ピンポーンピポピポピーンポーン。


 チェーンを確認してドアを開ける。


「来たわ」

「帰れ」

「嫌よ」


 キュイイイイイン!


 りっちょんの義手の手の平が輝いてチェーンに光が当たった。

 ひいっ、赤熱してチェーンが壊れる!

 人の家に上がり込むのにレーザー砲を使うなっ!

 金属が焼ける嫌な臭いが立ちこめた。


「なにやってんだっ!!」

「なにやってんだっ!!」


 鏡子ねえさんとチアキの声がした。

 友達の声を聞くとほっとする。


 りっちょんがそっちの方を見た。

 柔和な菩薩みたいな顔が一瞬で般若みたいになった。


「裸族女とロリビッチ!! あんたたちがクソ『吟遊詩人バード』の命令でタカシくんを肉体でたぶらかしているのねっ!! ゆるせないっ!!」

「うるせえっ!!」


 ねえさんがりっちょんに肉薄して平手で押した。

 きゃっと言ってりっちょんは倒れそうになったがくるくる回って持ち直した。


「タカシ兄ちゃんっ!! 拳銃!! いや長銃!! 魔石も!!」

「い、いや、チアキ、『吟遊詩人バード』相手に長銃はさ」

「ぶっ殺すべき!!」


 魔石弾とか撃ったら、りっちょんがちぎれ飛んでしまうよ。

 俺はチェーンを外し……、熱っ、熱っ、なんとか外して、廊下に出た。

 隣の部屋の『楽園突撃隊』所属の八郎潟さんとか、『チャーミーハニー』縄谷ちゃんとかが戸口から顔をだして見ている。


「きいいいっ!! 私とタカシ君の純愛を邪魔する奴はしねえええっ!!」


 パッシュ!!


 ねえさんに向けてレーザー砲が打ち込まれた。

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