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第188話 朝の『Dリンクス』

 プルプルプル。


 軽快な電子音で目を覚まし枕元のクレイドルで充電していたDスマホのアラームを止めた。


 朝か。

 今日も良い天気……。

 お日様笑ってぴっかりこ♪


 無意識に【元気の歌】みのりバージョンを口ずさんでいた。

 もちろん俺は『吟遊詩人バード』では無いので効果は無いが、目は覚めた。


 フランスパンを切ってオークハム、トマト、とろけるチーズを乗せてオーブントースターに入れる。

 お湯を沸かしてインスタントコーヒーをマグカップに入れて飲む。


 ピンポーン。


 ドアを開けると、鏡子姐さんとチアキがいた。


「おはよう、ねえさん、チアキ」

「おはよー」

「おはようございまふ」


 チアキはまだ眠そうだな。


 ねえさんのコーヒーと、チアキのポタージュスープをマグカップに入れてやる。

 テーブルに付いた二人の前にハムチーズトーストを置いた。

 俺の分も皿に入れる。


「「「いただきます」」」


 ねえさんがバリバリとハムチーズトーストに噛みついた。

 チアキもちまちまと食べ始める。


 最近は朝ご飯を一緒に食べることが多い。


「今日の狩りは?」

「二十五階ぐらい迄でレベル上げだな」

「初見の階だな、楽しみだ」

「泥舟の長銃の試運転でもあるな」

「長銃凄いよ、射程距離があって命中率も高いんだ」


 昨日はチアキと泥舟で特訓してたからな。


「問題はロシア人だな」

「やっとマイケルを退けたっていうのにな」

「迷宮で出たらりっちょん撃ってもいい?」


 りっちょんは迷宮のモンスターでは無いのだが。


「即死はやめてくれよな」

「りっちょん殺すべし!」


 すっかりチアキがりっちょんスレイヤーだな。


「午前中は? ねえさん」

「みのりを学校まで護衛して、その後チアキとのんびりするぞ」

「河原で銃の訓練するんだ」

「射撃は迷宮に行けよ」


 河原でバンバン撃ってたら捕まるぞ。


「そうする? 鏡子」

「久々に五階でだらだらするかな」

「早く【射撃】【気配察知】【気配消し】が欲しいっ」

「ねえさん、注意してくれよ、ロシアの奴らは手段を選ばないから」

「わかった、まかせておけー」


 どうしてもパーティがばらける日中が不安だな。

 五人揃っていると安心なんだが。

 一番怖いのは、武力がない、みのりをさらわれる事だな。

 学校内では俺と泥舟で守ろう。


 朝食が終わると、鏡子ねえさんとチアキは峰屋邸へと出勤、お嬢様の登校の護衛をする。

 俺は食器を洗ってから徒歩で登校だ。


「おはようタカシ」

「おはよう泥舟」


 泥舟の家の前で奴と合流である。

 一緒に登校するならみのりの家まで足を伸ばせという意見もあるかもしれないが、お屋敷街は、ちょっと遠いのだ。


 泥舟に昨日の事をかいつまんで話す。


「うわ、りっちょん来たのか」

「とりあえず、『チャーミーハニー』が日本の防諜組織らしいから、もうマンションに突撃はしてこないだろう」

「なんだか、防諜組織とかスパイとか現実感が薄い話だよね」

「まったくだ」


 ああいう人達は映画の銀幕の向こうにいて欲しいものだ。

 まあ、それを言うと凄い退魔武器で魔物を倒す俺たちもWEB小説みたいではあるんだけどな。


 朝の日差しの中、友達と喋りながら登校は楽しい。


「お、新宮、泥舟、おはよう」

「東海林、おはよう」

「東海林君おはよう」


 東海林の家の前で奴と行き会った。

 ついでに一緒に歩く。

 これまたついでに昨晩の事を話した。


「日本政府の防諜組織って、新宮でなきゃ、措置入院を検討している所だな」

「そうだよなあ、妄想だよなあ、でもロシア人組織の手先になった右手にレーザー砲を付けたアイドルが凸してきて、組織の射手に【必中】でレーザーを壊されてロケットリュックを付けたロシアの盗賊に抱きかかえられて逃げたんだ」


 説明すればするほど嘘くさい。


「レーザー発射口の色ってなんだろうか」

「うーん、矢が刺さったということは、防弾レンズかそうでないかじゃないかな」

「ロシアだと雑だから発射口に安いレンズを付けていたのか」

「そうだな、たぶん次は高い防弾レンズで来るぞ」

「げー」

「そうか、次の対決の時困るんだね」

「レーザー砲とかどうすりゃ良いんだ?」

「迷宮売店で煙幕玉を買うんだ新宮、お前と鏡子さんは気配察知で煙の中を動けるし」

「あ、そうか、光線だから煙幕で無効化できるんだね」


 東海林は頭が良いからナイスアイディアを出すな。

 煙幕玉か、一個二千円ぐらいだから、沢山買って収納袋に入れるか。

 光学兵器対策は意外に簡単だったな。


「罪獣もロシアか、やっかいな相手だな、プーチンの顔色は最近ますます悪くなっているし、本国からせっつかれているんだろう」

「ロシアには迷宮が無いから、どこの国の迷宮で大魔王を目指しているんだろう」

「北朝鮮か、ベラルーシじゃないか? 影響力がある国がまだまだあるからな」


 日本や他の国から迷宮探索に効果的なレアスキルやレア装備を奪って攻略するつもりなんだろうな。


「しかし、大魔王を倒したら迷宮が無くなるって思ってるのかな」

「……そういやそうだな」


 多分だが魔物達がアバター的な物なら、大魔王を倒しても迷宮は消えないと思うのだが。

 そこらへん、ロシアの考えは雑だよな。


 学校に着いた。

 泥舟と別れて自分のクラスへ東海林と一緒に入る。


「タカシくんタカシくん、大変だよ」


 みのりがいつも通りデデデと走り寄ってきた。

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