『タカシくんタカシくんっ、どうかおねがいだ、ドラゴンの魔石をUSAに売ってくれたまえよっ』
テレサさんがポータルロビーから駆け出してきて俺の前に来て胸ぐらを掴んで揺すぶった。
今日の『ホワッツマイケル』はメインメンバーで狩りだったようだ。
マイケルもいるぞ。
『え、嫌ですけど』
『おねがいだおねがいだ、【従魔創造】で最強レベルの従魔はステイツが手に入れるべきなんだ、あと、研究もしたいし』
『チャーミーハニー』の人達が地獄門からどどどと駆けてきた。
『ちょっと待った~~!! タカシくんは日本人、日本人ならドラゴンの魔石は日本に売りましょうっ!! ええ、それが良いのです』
『なんだとー、貴様、日本政府の回し者だなあっ!! ロシアにあんな生物戦略兵器を取られる訳にはいけないんだっ、ウクライナを攻められるぞっ!!』
そう言ってテレサさんは若い配信冒険者を侍らせてニヤニヤしている駄目ドラゴンを指さした。
『だからこそ、日本政府がですね、ドラゴンを管理して、ですねっ!』
『日本なんかにドラゴンは管理できないっ! 空母も無いから運用しにくいぞっ!!』
グローバル口げんかが始まってしまった。
レグルス陛下がこっちを見た。
やばい、見つかった。
「チアキにみのり、こいこい、ワシのぬいぐるみをやろう」
「え?」
「あー、ぬいぐるみは可愛いけど……」
「お、マリア・カマチョだ、君はなかなか良い歌唱力だな、動画を見たよ。ぬいぐるみはいるかい」
『ください』
マリアさんはレグルス陛下にぬいぐるみをもらってニコニコしていた。
陛下の足下にある段ボールにぬいぐるみは沢山入っているようだ。
けっきょく、チアキもみのりもぬいぐるみを貰っていた。
というか、陛下はこんなに可愛くないだろうに。
レグルス陛下はうるさそうに、口げんかをしている、USA代表と日本代表を見た。
『やかましいっ、ワシの従魔を作って良いのはワシを倒した『Dリンクス』だけだ、他の組織や国がワシの従魔を作った瞬間、飛んでいって噛み殺して魔石に戻すぞ』
『『ぐうっ』』
『人が出した魔石を、国の兵器に作り替えようなどとは言語道断だ。恥を知るが良い』
さっきまで綺麗どころの配信冒険者のお姉さんに鼻の下を伸ばしていた駄目ドラゴンには言われたく無いだろうなあ。
だが、国籍に関係無く噛み殺すなら助かるね。
ロシアから狙われる可能性が下がる。
「なんで、そんな犬ころを作って、素晴らしいワシの従魔を作らなかったんだ。もったい無いぞ、タカシ」
「レグルス陛下はでっかいので、次に【従魔創造】の珠を手に入れたら作る予定ですよ」
「ああ、【サイズ変更】スキルが付いてない魔石なんじゃな、まあ、120階に来てまた倒せば良いぞ、わっはっは」
気楽に言うな、このドラゴンオヤジは。
『タカシくんタカシくん、くつしたくんを貸してください、実験したり調査したい』
『嫌ですよテレサさん、自分で出してください』
『そんなあ』
気が付くとマイケルがくつしたを撫でようとしてガブリと噛まれていた。
「ぐわーっ! 躾がなってねえぞ、タカシ、こいつ」
「うちのパーティの従魔だからね」
「くっそう、だが、犬良いなあ、よし、キャシーとマリアとあと二軍を連れて明日二十三階に潜るぞ」
「ま、負けませんからねーっ」
鮫島さんがマイケルに挑戦していた。
しばらくは世界中で二十三階が混み合うかもしれないな。
「おー、チアキ、ずいぶん強くなったネー」
「うん、【気配消し】覚えたよ」
チアキはパティさんの前で気配を消して移動した。
「ナイスナイス! あとは【観察眼】ね」
「がんばるっ」
パティさんがチアキの頭を愛おしそうになでなでした。
「タカシたちは、もう上がりか」
「ああ、そうだよ」
「これから『川崎タン麺』で晩ご飯だ」
ねえさん、ばらすな。
「タンメン、なんだそりゃ」
「ヌードルだ、さっき配信冒険者やってる店員と知り合ったから」
「そうか」
マイケルはテレサさんを振り返った。
『テレサ、俺らも『川崎タン麺』に行こうぜ』
げ、付いてくるのかよ。
「良いね、チアキとおしゃべりするよ」
「パティねえちゃんと話す~~」
『私も問題ない』
マリアさんがレグルス陛下のぬいぐるみを抱いてそう言った。
『タンメンか、どんなんだっけか? 辛い奴か?』
『それはタンタン麺、タンメンは塩味で野菜が乗ってる奴だ』
『よし、行こう、タカシ達とは情報交換しておかなくては』
やれやれだぜ。
レグルス陛下も一緒に行きたそうに、こちらをちらちら見ていた。
「レグルスさんも一緒にどう?」
「いや、ワシは迷宮から出られないでな、おねえちゃん達と二階に行くから良い」
二階に行くと聞いて配信冒険者のお姉さん達がキャーと黄色い歓声を上げた。
サッチャンよりレベルが高そうなのに、外には出られないのか。
悪魔教会のドアが開いて、大目玉閣下が這い出してきた。
「僕も行っていい?」
「まあいいや、お前も来いっ」
「駄目ですよ閣下、神父さんの仕事があるでしょう」
竹宮先生が教会から顔を出した。
「ぐぬぬ」
「残念だったな、大目玉。じゃあ、行こう行こう、タカシ、またな」
駄ドラゴンは女の子を連れて二階への階段の方に歩いて行ってしまった。
「あ、竹宮先生、【
「わあっ、タカシくんありがとう、助かるわっ」
後醍醐先輩には【ハイヒール】、藍田さんには【
『オーバーザレインボー』が上がってくれば将来レイド相手として助かりそうだしね。