目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

第25話 スカッと炸裂OL、干し草女の逆襲劇場!謝恩会は戦場です!

『花、よくやったわ!あとは絵梨花よ!』

『はい、この勢いに乗って突撃します!』


お局を撃沈して気が大きくなった私は、ターゲットを主任のテーブルへと切り替える。そう、あの東薔薇主任の隣に、絵梨花が居座っているのだ。


ビール片手に、背後からそっと接近。勝算?そんなの知らないけど、負ける気は全くしない。


「東薔薇主任、お疲れ様でーす」


突然の乱入に、二人は一瞬ぽかん。でも、絵梨花だけはすぐに眉間にシワを寄せ、殺意レベルでこちらを睨んできた。


「……綾坂さんもご苦労さま」

「いえいえ、主任の采配が素晴らしかったおかげです」


笑顔でお酌をしながら自然体を装う私に、絵梨花がピシャリ。


「なによ綾坂さん、邪魔しないでくれる?」

「あら、幹事と会計の信頼関係ですけど、なにか?」

「だ・か・ら~、あなたは私が間に入らなきゃ何もできなかったじゃない!」


絵梨花の声がひときわ高くなる。よし、効いてる効いてる。


「そんなことありませんわよね?主任?」


振ると、東薔薇主任は少し驚いた顔をして、でもはっきりと答えてくれた。


「まあ、そうだな。綾坂さんはよくやってくれているよ」

「ひ、東薔薇様……?」


絵梨花の顔が引き攣った。そのぽかんと開いた口、なかなか見応えある。写真に撮って額縁に入れたいくらい。


「実はね、途中で気づいたんだ。細かい準備や調整、全部綾坂さんがやってたんだって。もっと早く直接やり取りしておけば良かったと思ってる」


ふふん、これは思わぬ援護射撃。性格悪いな、東薔薇──でも、いいぞもっとやれ。


「……そ、そんな。あんまりですわ。わたくしがどれだけ気を利かせて動いていたか、ご存じないんですの?」


あらあら、涙ぐみそうな声。けど、それもこれも、あなたの自作自演のツケよ。

じゃあ、ここは私からもダメ押しの一撃を。


「ええ、主任のおっしゃる通りです。実は、謝恩会に限らず普段からそうなんですの。私、絵梨花さんの〝気配り〟の後処理にいつも追われてましたから……まぁ、それも今日まで、ですけどね?」


絵梨花は私の皮肉よりも、主任からの〝裏切り発言〟に動揺している様子。ショックが隠しきれていない。そんな中、さらに追い討ちのひと言が飛んできた。


「綾坂さん、終わったら打ち上げでも行かないか?」


……え?

えええ!?何言い出すのこの人!?


「ち、ちょっと、東薔薇様!?」


絵梨花の絶叫がいい感じに響き渡る。いやいや、そっちのリアクションはありがたいけど、問題は私の気持ち。


……え、どうしよう。普通に断りたい。ぶっちゃけタイプじゃないし。

でも、この流れで断ったら、あまりにも惜しい展開になるし……


『花、ここは受けなさい。とどめを刺すのよ』

『ええ~~っ!?気が進まないですうう~!』

『気分より結果。仕留めなさい』


うう……気分がアレでも、ここは戦略的に、ね。仕方ない、演技モード発動。


「主任……もしかして、二人きりで?」

「ああ。幹事と会計、水入らずってやつだ」

「……絵梨花さんじゃなく、私と?」

「もちろん。綾坂花さんと、だ」


その返答に、絵梨花の顔が凍りついた。


「東薔薇様……!わたくしが先にお誘いしていたというのに……なんて、酷い……!」


彼は無言のまま、視線も合わさず彼女の言葉をスルー。

絵梨花の目に、ぷるんと光る涙が浮かび──そして、ついに一滴、ぽろり。


「失礼しますっ!」


彼女はガタッと立ち上がり、足早に会場を後にしようとする。

でも──


ここで逃がしてたまるか。


私は絵梨花を追って会場の外へ飛び出し、その腕をぐいっと掴んだ。


「なによっ、痛いじゃない!離してよ!」

「花束贈呈、まだ残ってます。投げ出すおつもりですか?」

「……ふん!もう、やってらんないわよ!」


顔をそむけて涙を隠しながら、彼女は小さな声でぼそりと呟く。


「……ったく、なによ。色気づいちゃってさ。〝干し草女〟のくせに……」


……は?今なんて?


この期に及んで、まだそんなこと言うの?そこまで言われたら、徹底的にやってやる!


「今……私のこと、干し草女って言いましたよね?」




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?