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第30話 平穏願うOL、モラハラ退場でようやく静かに暮らせると思ったのに、まさかの事件編!幽霊と一緒に犯人追跡中!?

あれから絵梨花は、ぱったり姿を見せなくなった。やっぱり、専務──いえ、御父様の出向先である子会社に異動したらしい。一族の名誉のために、優雅にフェードアウト……ってやつだろうか。


そして数日後、お局にも異動が決まった。まさかの、付属病院へ。

希望していた部署は全滅だったようだけど、病院側で事務職の緊急募集があり、なぜか秒速で採用されたらしい。意外と需要あるのね……あの圧。


そんなお局が、最後の出社日に私のもとへ挨拶に来た。


「あ、綾坂さん。今から異動するね。本当に、これまで色々すみませんでした」

「は、はい。……どうぞお元気で」

「あの……翔くんのこと、よろしくお願いします」


……えっ、えっ!?

ちょっと待ってください。よろしくって、なに目線ですか?保護者?


たしかに私は、毎週彼のマンションに出入りしているし、外から見たら恋人っぽいかもしれない。でも実際のところは、進展ゼロ!こっちはいまも慎ましやかに、人間関係の基礎工事中なのです!


……そう言い返す間もなく、お局はダンボール抱えて、フロアからすたこら去って行った。私はただ、その背中を見送るしかなかった。


『花、これでモラハラ問題は完全にクリアねー』

『はい。これからは、人付き合いも仕事も、ちゃんと一歩ずつ頑張ります。ララ様、ご指導感謝します』


心から、そう思う。


あの偶然がなかったら、私は今も下を向いたままだったかもしれない。ララ様が宿ってくれたこの奇跡に、全力で感謝しなければね。


『──まぁ、確かにすごい偶然よねぇ。だって、〝殺人犯〟見つけちゃったんだもん』


……は?


『最初の出会い、覚えてる?わたくし、お店で太客に殺されたって言ったでしょ?』


そ、そうだった。思い出した……ララ様はその犯人を見つけ出し、復讐するために私に取り憑いたのだ。


『……え、本当ですか?ちなみに、どなたなんでしょうか?』

『驚かないでね──門前真照。この会社の、部長さんよ』

『……は、はぁあ!?じょ、冗談はやめてくださいよッ!!』


な、何言ってるんです!?あの御方が風俗狂いで、しかも殺人犯とか──いやいや、いくらなんでも人違いがすぎるでしょ!


『間違いないの。だけど時間がないわ。彼、海外出向を希望して逃げ切るつもりなのよ。花──復讐のときよ!』


い、いやいやいや……そんな昼ドラみたいな展開、現実にあります!?


『落ち着いてください。証拠、あるんですか?』

『彼、わたくしの名刺を持ってるはず。もしかしたら、スマホも……』

『名刺にスマホ……確かに、それを持ってたら怪しいけど……』


でも正直、それだけで問い詰めるのは無理がある。そもそも本人に聞いたところで素直に認めるとも思えないし、証拠品なんてとっくに処分されてるに決まってる。


『……でもやるしかないのよ。彼を問い詰めるの』

『ちょ、ちょっと待って!ララ様、仮に部長が犯人だったとして……どうするおつもりですか!?わ、私、人殺しとか絶対ムリですからね!?むーりーですからね!?』

『うふふ、大丈夫。最初はそのつもりだったけど……花を犯罪者にするのは、わたくしの美学が許さないわ。大好きなんだから、あなたのこと』


そ、それはそれでどう反応すれば……。


『とにかく、面談よ。自白させて、自首させる。それができれば、それでいいの』


う、うーん……部長と話す時間をもらうのはまだしも、証拠が薄い状態でどう切り込むのか……。


『あの……そもそも、なんで殺されたんですか?』


私はララ様のことを深く知らない。たしか、実家は茶道の家元なのに、なぜか風俗嬢をしていた──ぐらいしか。


でも、部長との面談に臨むなら、ララ様の過去をもっと知っておく必要がある。

……それに、正直言って、あの部長が人殺しなんてどうしても信じられない。


『そうね。詳しくお話する時が来たわねぇ……』


ララ様には、ここまでたくさん助けてもらった。今度は私が力にならなくちゃ。どういう結果になろうと、必ず……解決してみせようとも!




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