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Answers~この世には不思議なことなどありまくりなnoですわ!~
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ぴすぴす
ミステリー推理・本格
2025年04月14日
公開日
7,194字
連載中
ごきげんよう、クソ雑魚ナメクジな一般市民の皆様方。 このお話はわたくしと執事の市川が織り成す一話完結型のミステリ短編集ですわ。 それぞれのお話には基本的につながりはありませんの。 一話は問題編と解答編の前後編に分かれていますわ。 問題編では市川が姑息且つ卑怯な問題を提起してわたくしをいぢめてきますわ! 解答編ではその問題をわたくしが華麗に! 優雅に! 見事に! 解決致しますわ! (お嬢様……嘘はいけません。お嬢様の足りない頭では解決は不可能です) うるさいですわ市川! 問題には高度な叙述的問題もあれば、ただ単に理不尽極まりなくわたくしをいぢめるためだけの姑息な問題もありますわ。 ほんと市川は性格が悪いですわね。 広義のミステリに含まれないような問題もありますわ。 そんなに長いお話ではありませんので、気軽にクイズ感覚で楽しむのがいいですわ。 市川をぎゃふんと言わせてやるのですわ! (お嬢様、ぎゃふんは最早死語でございます…) ※不定期で更新ですが、必ず問題編は月曜日に掲載され、解答編は土曜日に掲載されます。 ※タイトルは誤字ではございません……ですわ!

第1話:問題編『妻を殺したのは……』

「市川! 暇ですわ!」


 お嬢様が唐突に私に仰いました。どうやらいつもの退屈病が発症してしまったようです。こうなったらお嬢様はしつこく私にちょっかいを出してくるのでございます。大変仕事の邪魔でございます。


「お嬢様……申し訳ありませんが、私めにも仕事がございます。お嬢様の暇つぶしにいつも付き合ってはいられません。どうか勝手に一人遊びでもして自らを慰めてください」

「市川、それはなんだか妙に卑猥な表現のような気がしますわ……。開始早々に発禁処分で公開停止は嫌ですわよ、わたくし……」

「お嬢様……いくらお嬢様の頭が弱いからと、第四の壁を平気でお破りになるのと、お下品な発想はお止め下さいませ。お仕えしている私めらの品性も疑われます」

「あなた、ひょっとしてわたくしのこと嫌いなのかしら?」

「滅相もございません。お仕えする主の事を嫌いなどと……使用人の風上にも置けませぬ。いくらお嬢様の頭が弱く、知能が低く、お下品で、世間知らずで、我儘で、高慢で、人としてどうなのかと思っていたとしても、主の事を嫌いなどと申すはずがございません」

「やっぱり嫌いでしょ! 嫌いですわよね? ていうかそこまで言いますの?」


 お嬢様は少し涙目になられていました。少しいぢめ過ぎたようでございます。このままではクビになりそうですので、少しフォローすると致しましょう。


「ですが、お嬢様の学業での成績はあまりよろしくないのは事実でございます。ですので、決してすべてが偽りであったというわけではございません。真実はいつも一つでございます」

「フォローになってない! あなたそれフォローだと思っているの! ていうか真実は一つってまるでわたくしの頭が悪いのが真実だって言ってるみたいじゃない! そこっ! 首を傾げない!」


 やれやれ……しつこいお嬢様でございます。さすれば、ここはひとつ、それが本当に真実か見極めるのが筋と言うものでございましょう。


「わかりました。では、お嬢様。ひとつ私めが問題を出しましょう。頭が悪くないお嬢様なら、きっとすんなりとお答え頂けるのではないかと……」

「なるほどですわ。わたくしの頭が東京タワー並みであることの証明ができますわね! どんとこいですわ!」

「東京タワー……? よくわかりませんが、ではフェルマーの最終定理より、3以上の自然数nについて……」

「ストップ! せ、専門的なことはわかりませんわ! ていうかフェルマーの最終定理って解いたら賞金もらえるやつですわよね? 解けたら大金持ちですわよ!」

「……お嬢様は既に大金持ちでございます。少々文句が多すぎでございますね。まったくお里が知れるでございます」

「わたくしの里はここですわよ! そもそも、あなたわたくしの教育係だったでしょう!」

「やれやれ……ああ言えばこう言う。どうしてこう育ってしまわれたのやら……」

「あなたの教育のせいですわよ……。もういいですわ……さっさと他の問題出しなさい……」

「では、こんな物語はいかがでしょうか?」



     ◇



そろそろ冬の足音が近づき、肌寒さを感じる季節となった。

それでも紅葉はまだ燃え盛るように色づき、その赤さは山をさらに美しく染め上げている。

私は妻と共に山の中を歩いていた。

一歩一歩、足元を確かめながら、ゆるりゆるりと山道を進む。


山道は急な勾配が続き、気づけば爪の間に土が入り込んでいる。

息を荒げながら視線を落とすと、地面にはいくつかの木の実が散らばっていた。

その一つ一つを手に取り、慈しむように眺める。


ふと一息ついて空を仰げば、色とりどりの木々が空を覆い、その鮮やかな景色に心が弾む。

妻も同じように感じているのだろうか。

私の後ろを歩きながら、ときおり顔を上げては周囲を確かめるように見回している。

彼女の横顔にたなびく黒は、陽の光を受けて艶やかに輝いていた。


……少し痩せたのではないだろうか。

そろそろ冬の準備を始めなければと思い、妻に声を掛けようとしたその瞬間だった。


突然、


 パーン


乾いた音が周囲に響き渡った。


何の音だろうかと立ち止まり、私は警戒心を抱きつつ周囲に目を配る。

しかし、その瞬間再び、


 パーン


またもや乾いた音が鳴り響く。


次の瞬間、妻の身体がぐらりと揺れた。

そして、「ばたん」と音を立て、その場に崩れ落ちた。


私は一瞬、何が起こったのか理解できなかった。

混乱しながらも、妻の元へ駆け寄る。

彼女の身体はぴくりとも動かず、目は見開かれたままだった。

頭からは赤黒い液体がどくどくと流れ落ちている。


コレハイッタイナンナノダ

ナニガオキタノダ


そして、また……


 パーン


乾いた音が山中に響き渡った。


その瞬間、私の体に激痛が走る。

肩口からは、先ほど妻の頭から流れていたものと同じ赤黒い液体が勢いよく噴き出していた。

あまりの激痛に耐えきれず、私はその場に倒れ伏した。

地面に転がりながら、痛みと混乱の中で何が起きているのかを理解しようともがいていた。


その時、私は小さな谷間のような地形に身体を滑らせた。

高さはそれほどでもなかったが、転げ落ちるように身体が躍ったせいで、節々に鋭い痛みが走る。

流転する世界の端で、私は見てしまった。


アレダ


アレガツマヲコロシタノダ


幾度となく、あれは私たちを付け回していた。

あれはただの気まぐれな存在ではなかった。

山中での偶然の遭遇は、一度や二度ではなかった。

どんな距離を保っても、どんな道を選んでも、ふとした瞬間にその姿が視界の端に映る。

それでも私たちはそれを軽視してしまった。

襲いかかるそぶりもなく、単なる興味本位だと信じてしまったのだ……。

害はないと高を括り、見逃していたのが裏目に出たのだ。

あれは、やはり悪意を持っていたのだ……。


妻を失った今、私の中に残されたのは虚無と怒りだけだった。

あの存在を見逃し続けてきた自分への苛立ち、そして、妻を奪った憎しみ。

心が痛みに侵される中で、唯一確かなものが浮かび上がった。

それは復讐の炎だった。

目の前に黒い帳が降りる中、私は心に誓った。

復讐を果たすと……。



さて、私は誰だろう?



     ◇



「こわっ! 怖いですわ! 怖い話ですわ!」

「お嬢様、替えの下着はこちらにございます」

「漏らしていませんわ! ていうかなんであなたわたくしの下着を持ち歩いているんですの!」

「使用人の嗜みにございます」

「……うちの使用人どうかしていますわ」

「それで、お嬢様答えはおわかりになりましたか?」

「……わかりませんわ。『誰』ってどういうことですの……? 意味が分かりませんわ……。何やら銃で撃たれたぐらいしか情報がありませんわ。登場人物はもういませんわよね?」

「さて、一体誰の事なのでしょうね……」



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