「見えないゴリラ? ってなんだよヒデオ」
「透明で見えないゴリラですね、ケインさん」
今現在、俺らは地下五階の森の中を進んでいる。
ケインさんが、俺が何もしてないと言いがかりを付けてきたので、ゴリ達の事を説明したのだ。
「そ、そんな、能力というか、スキルがあるもんかっ!」
「ゴリ太郎、オークを倒せ」
『ウホウホ』
ちなみにゴリ達の声は他人には聞こえない。
近づいてきたオーク三匹はゴリ太郎に殴られて一瞬で肉塊に変わった。
「こんな感じですよ」
「そ、そうか、な、なかなか便利な能力みたいじゃないか、ヒデオ」
「ありがとうございます」
迷宮の魔物は倒されると粒子になって消えて行き、魔力という紫色の霧が我々の胸に吸い込まれ、その後に、魔石とドロップアイテムが出るんだ。
オークさんからハムが出たね。
魔石も二個出たよ。
「よ、よし、リーダーたる僕の指示でゴリラを動かすんだヒデオ」
「はい、解りました」
と言っても、ケインさんの指示とか聞かないけどね。
そして、指示に逆らっても透明なのでばれないのです。
ケインさんよりも、山下さんや『サザンフルーツ』の子達の方が大事だしね。
ジャングルのような森の感じは良いね。
木々の間の小道が迷宮みたいになっていて、魔物が襲ってくる感じだね。
『
ケインさんは、まあ、レアっぽい雷の剣を振り回して割に危ない。
当たると敵が痺れて止まるから便利なんだけどね。
【剣術】のスキルが無い感じだね。
五階の洞窟の入り口に着いた。
ここから六階からの洞窟ゾーンに入る。
半グレも一杯の場所だね。
「気、気を付けるんだ、ヒデオ、アイドルのパーティは良く狙われるからな、気を引き締めろ」
「はいはい」
ケインさんは軽戦士なのに、一歩引いた中衛ぐらいの位置にいるね。
まあ、バックアタックとかあると困るからいいんだけどさ。
「フロアボス前でお弁当かな?」
「ヒカリさん、体調はどうですか、八階で一度休憩を挟みますか」
山下さんがヒカリちゃんに体調を確かめている。
そうか、休憩とかも護衛の仕事なんだね。
「うん、疲れたから八階で休もうでは無いか、山下さん」
「そうですね、ケインさん」
山下さんはケインさんにもニコニコ対応して良い人だね。
なかなか腕も立つし。
洞窟の中に入ると大きい蜘蛛が出て来たり、大きいカエルとかが出て来たりするね。
ゴリ達と山下さんで倒しちゃう感じだ。
別の配信冒険者パーティとすれ違うのも緊張するね。
どれも半グレじゃないかと思ってしまうよ。
でも違うみたいだけどね。
「今日は襲撃は無いのかな」
「ヒデオさんがいますからね」
「この僕、勇者ケインを恐れているのさ」
軽口が出るぐらい、順調に迷宮を進んで行けている。
八階に入った所の安全地帯で大休止だ。
「ヒデオ、チョコとか無いのか」
「チョコですか、チョコバーで良いなら」
俺はリュックの中からスニッカーズを出してケインさんに渡した。
「こんな駄菓子じゃなくてさあ、もっとちゃんとしたお菓子を用意しとけよっ、気が利かないなあ」
「それはごめんなさい」
「じゃあ、私が貰うよ、スニッカーズ」
「ああ、良いよ」
俺はヒカリちゃんにスニッカーズを渡した。
「お菓子も護衛の役目?」
「違うよう、山下さん出して無いでしょ」
「良かった、でも、次回からは買い込んでおこうかな」
「あはは、無理しないでヒデオさん」
「駄菓子でも良いよ、スニッカーズとか好きよ、私」
「私はカリカリ梅が好きですねえ」
ヤヤちゃんはあまり甘い物は欲しくないのか。
ヒカリちゃん、ミキちゃんは甘い物好きそうだね。
迷宮探検はやっぱり登山とかケイビングとかと同じで体を使う運動ではあるので、休憩と水分と行動食が要るみたいだね。
「半グレ来ないねえ」
「そろそろ来そうだけど」
「九階十階の間にありそうですよ」
『半グレかあ、今日はあんまり目立った動きが無いな』
『九階で誰か集まってるな、どこだあれは』
『ヒデオ、気を付けろ、一階下で待ち伏せしてるぞ』
「わあ、ありがとう、たすかります」
コメントを入れてくれるリスナーさんたちも良い情報をくれるなあ。
一階下か。
さすがに石松君はいないだろうけれど、トレインが駄目だったらどうするんだろうなあ。
「山下さん、どうします?」
「ヒデオさんは『サザンフルーツ』とケインさんを守っていてください。半グレ達との交渉は私がやります」
「お願いできますか」
「ええ、任せてください」
「早く行こうよ、フロアボスフィールドまでに夕方になっちゃうよ」
「ええ、行きましょう、ケインさん」
さて、一階下の半グレをなんとかしてから、フロアボスだね。
十階から先はあまり半グレパーティは居ないそうだから良いよね。
俺達は階段を下りてて九階へと向かった。