ビンバッチョロピピロン!!
ビンバッチョロピピロン!!
ぬおおお、変な着信音で目覚めたぜ。
今日の気分は最悪だね。
「はい、丸出です……」
『おはようございます、ヒデオさん』
今日もミキちゃんがモーニングコールをしてくれた。
ありがたいねえ。
「いつもありがとう、出社するよ」
『おまちしていますね』
プツンとスマホを切る。
着信音を変えたいのだけど、良くわからないな。
最高級機種だから、ゲームとか色々出来るらしいんだけど、おじさんにとっては猫に小判だね。
Dモッターもやって無いしなあ。
流しで顔を洗って歯を磨く。
「おはよう、ゴリ太郎、ゴリ次郎」
『うほうほ』
『うほうほ』
ゴリラズもいつものように上機嫌のようだね。
パジャマから普段着に着替えて、装備を着ける。
なにげに重いね。
でも胸宛てを着けるとしゃっきりするね。
アパートを出て、市役所の裏、リーディングプロモーションの川崎支社に入る。
エレベーターから降りて社内に入る。
今日はカスミちゃんに止められなかったね。
「ヒデオ! おはようっ」
「おはよう、ヒカリちゃん、ミキちゃん、ヤヤちゃん」
「おはようございます」
「おはようございます、今日はよろしくお願いしますね」
お、山下さんも来たぞ。
「おはよう、ヒデオさん」
「おはようございます、山下さん」
「今日こそ、フロアボスを突破しようね」
「「「はいっ!」」」
「野末さんは来ないんですか?」
「前衛は、ヒデオさんとゴリラくんたちと、俺だね」
「フロアボスに勝てますか?」
「ヒデオさんはソロでも行けそうだよ。『サザンフルーツ』が居れば問題は無いだろう」
「山下さんはフロアボス倒してますよね」
「そう、だから、ボスアタックまで一緒だけど、最後はフィールドの外に居るよ」
「あの日はどうするつもりだったんですか」
「あの日は、勇者ケインが来るはずだったけど、スケジュールが合わなくてね、偵察で十階まで行くつもりだったんだよ」
そうだったのか。
「今日は来てますよ。初めまして、『サザンフルーツ』のみなさん、ヒデオさん、僕が勇者ケインです」
「わ、ケインさん」
「ケインさん、十階まだだったんですか?」
「そうとも、これでも僕は、Lv.40だからね、頼って大丈夫だよ、ハハハ」
勇者ケインさんはイケメンで格好いいね。
「勇者って
「いや自称よ、実際の
レアっぽい大剣もしょっているし、なかなか使えそうな人だね。
「それでは、みんなで迷宮に行きましょう」
「うん、その前に、ヒデオさん……、言いたく無いんだけど、仮にもアイドルパーティの護衛なんだから、もうちょっと何とかならないかな」
「いやあ、申し訳ないねえ」
「ヒデオはこれで良いのよ」
「何をやってもお笑いの人みたいになるので、その」
「これが一番、らしいんですよ、ケインさん」
ケインさんはくるりと回って格好いいポーズを取った。
「でも、華麗な僕のパーティに彼のような冴えないメンバーは欲しく無いねえ」
「……、じゃあ、あなたがやめなさいよ、ケインさん」
「あ、ヒカリちゃん」
「ヒデオは山下さんより頼りになるんですからねっ」
「君い、僕は先輩だよ、先輩のいう事が聞けないのかい?」
「ヒデオと一緒じゃないと嫌です」
「お言葉ですが、ケインさん、私もヒデオさんじゃないと」
「そうですそうです」
勇者ケインは俺の方を目をすがめて見た。
「こんな冴えない中年がねえ、まあ良いか、あまり前に出ないでくれたまえよ」
「わかりましたよ、ケインさん」
こらこら、睨まないの、ヒカリちゃん。
皆で歩いて駅前へと行く。
陸橋を渡って商業施設へと入る。
「あら、『サザンフルーツ』よ」
「勇者ケインも居るわ、素敵ねっ」
「お、ヒデオだ」
やや、Dチューバーの追っかけの中で俺を認識してくれた人がいるね。
配信冒険者っぽい若い男の人だな。
地獄門をくぐると迷宮ロビーだね。
ちょっと硫黄臭い匂いがして、外界より一度ぐらい気温が低い感じ。
「ああ、ヒデオくん、我々はここで待っているから、お弁当を買ってきたまえよ」
「ケインさん、ヒデオさんは付き人では無いんですよ」
「ええ? なんで庇うの山下さん、こいつは低レベルなんでしょ?」
「滅茶苦茶強いですよ」
「あはは、そうは見えないなあ」
「じゃあ、買ってきますよ、何が良いかな」
「ヒデオがそんな事する事ないよ」
「まあまあ、こういうのは新入りがやる仕事だからね。シュウマイ弁当で良いかな」
「僕は特製弁当を買ってきてくれたまえ」
「解りました、山下さんは?」
「先に買ってくれば良かったね、とりあえず、お金を」
山下さんが、ウインクして万札をくれた。
こんなにはいらんて。
お茶とかも買っておくかな。
俺は地獄門を出て、商業施設の一階に降りた。
崎陽軒のスタンドで、お弁当を買い込んだ。
まあ、ケインさん以外はシウマイ弁当で良いね。
人数分のお弁当をリュックに入れて背負った。
小走りで戻った。
ロビーの応接セットで勇者ケインさんは王者のように『サザンフルーツ』と話していた。
やっぱイケメンだから絵になるね。
「ヒデオ、ご苦労、じゃあ行くか。ポータルで逆走しては駄目なのかい、山下さん」
「ポータル転移が出来るのが私しか居ませんからね」
「わざわざ十階分降りるのは面倒だね、半グレたちもいるし」
「そのための、私とヒデオさんですよ」
「ヒデオはそんなに強いのかね? 典型的な駄目親父っぽいけど」
「ケインさん、ヒデオを悪く言わないでっ」
「ヒカリちゃん、良いから」
「だってぇ」
「オヤジのくせに、アイドルをたらしこむとか、素行が悪いねえ、あとで社長に言っちゃうぞ」
「ケインさん、早く潜りましょう」
「あ、ごめんごめん、ミキちゃん、そうだね」
うーん、ケインさんはなかなかの難物っぽいね。
仲良くなれるかなあ。