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第24話 護衛たちとランチを食べる

 お昼になったので、ランチを食べようという事になった。

 山下さんのおごりで街中華の天竜に行く事となった。


「天竜は良いわね」


 なんだかチョリさんも付いて来た。

 アイドルなのに良いのかな。


 大きめのテーブル席にみんなで座る。

 さて、何を食べようかな。

 天竜は焼きそばとか湯麺が美味しいんだよね。

 あと一口餃子が安くて美味しい。

 皆も思い思いの料理を頼んでいた。

 チョリさんは冷やし中華だな。

 俺は焼きそばと餃子だ。

 ミカリさんは湯麺とチャーハン、大柄だからよく食べるね。

 ムラサキさんはタンメン、野末さんがラーメン餃子ライス、山下さんはタンメンと餃子だね。


「片瀬の奴、サッチャンに連れて行かれたって?」

「そうだね、どうもウイングチートの副社長竜胆って人が整形して戸籍に背乗りしていたらしいよ」

「元の片瀬って人はどうなったんだろうね」

「わかんないね、戸籍に背乗りしてたって事は、まあ、もうこの世には居ないんじゃないかな」


 山下さんとムラサキさんが物騒な話をしていた。


「ウイングチートで移籍してきたタレントを無茶推してたからねえ、正直助かったね」

「まあでも、ウイングチートからの移籍組は心強い後ろ盾を失った事になるから可哀想でもあるね」

「迷宮でDアイドル仕事してんのに、悪魔に逆らうからさあ、しょうがないよね」


 業界第一位のウイングチートという芸能プロダクションがサッチャンに斬り掛かって恫喝しようとして、逆襲にあったらしい。

 会社の関係者はサッチャンに皆殺しにあったんだけど、所属タレントさんは別のプロダクションに移籍して命だけは助かったらしい。

 でも、古株のタレントと移籍してきたタレントで色々ともめ事が起こっていたようだね。


 お、焼きそばと餃子が来た。

 山盛りで美味しいんだよね、ここの焼きそば。


「まあ、移籍してきたタレントは可哀想だけど、古株の私たちが気を使って道を譲るのは違うわ」


 チョリさんが力強く言った。

 確かにそうだなあ。

 タレント仕事はコネもあるけど、基本的に実力勝負の芸能仕事だからね。


魔術師ウイザードは誰を使おうか、山下さん」

「護衛魔術師ウイザードを使うか、アイドル魔術師ウイザードを入れるか、うーん」

「アイドルで魔術師ウイザードさんも居るんですか」

「いるよ、魔女っ子『ユカリ』、でもあんまり魔術の腕がなあ。護衛のチャムスを連れて行くかな」

「ああ、でもユカリちゃんもムカデ部屋越さないと」


 チョリさんが山下さんに突っ込んだ。


「ユカリちゃん、どんくさいんですよ」

「そ、そうなんですか」


 護衛もアイドルもいろいろな人が居るっぽいね。

 魔女っ子アイドルっていうのもあるのか。


「じゃあ、明日は俺とヒデオさん、ムラサキとチャムスが護衛で、アイドル側は、『サザンフルーツ』と『勇者ケイン』、そして『魔女っ子ユカリ』と『チョリ』の六人かな」

「十六階までだから大した事無いね」

「主にヒデオさんに仕事を教える感じの潜行だね」


 十六階ぐらいまで潜るのか。

 ゴリラ達が苦戦するぐらいの魔物は出てこないだろうね。


「ああ、そうだ、ヒデオさん、これから用事とか無いのよね」

「無いですよ、チョリさん」

「じゃあ、ユカリちゃんに紹介するわ。彼女はウイングチート系だから、ちょっと気を使ってあげないとね」


 あ、リーディングプロモーションに昔から居る子じゃないのか。

 それは不安だろうな。

 というかチョリさんは姉御肌な感じで良い人だな。


 街中華ランチを食べおわり、俺達は店を出た。

 俺はチョリさんに付いて支社ビルまで戻る。

 エレベーターにみんなで乗って護衛さんたちはジム階で下りた。

 俺も下りようとしたら、チョリさんに袖を引っ張られた。


「ヒデオさんはこっちよ」

「あ、はい」


 上の階まで乗って下りた。

 チョリさんの後を付いていく。


「アイドル達はこっちの集会室にたまり場があるわ」

「なるほど」


 チョリさんがドアを開けると会議室に何人ものアイドルがいた。

 カスミちゃんも居るな。


「仕事の無いアイドルはここに来て暇を潰しているのよ、たまにスポットの仕事が入るからね」

「ほうほう」


 チョリさんはキョロキョロと室内を見回してお目当ての人を見つけたっぽい。


「ユカリちゃん」

「ほえ?」


 うん、魔女っ子だこれは。

 三角帽子に濃い紫のエナメル系っぽい衣装。

 胸にはちょっとキモイ感じの兎のぬいぐるみを抱いている。


「ユカリちゃん、明日ムカデの部屋を攻略するわよ」

「え~~、ユカリ、ムカデ嫌いです~~」

「私も嫌いよ、でも、十六階を抜けられないと深い所に行けないから」

「ユカリはアイドルなんですよ、歌って踊って魔法を掛けるのが仕事で、迷宮を攻略するのは違うんです」


 アイドルは魔法掛けないと思うけどね。


「まあまあ、もうアイドルもC級ぐらいにならないと仕事が無くなってしまうわよ」

「でも、ユカリ、ムカデ、嫌いなんですよう」

「大丈夫、今回は山下さんたちだけじゃなくて、今話題のヒデオさんも護衛してくれるからっ」

「え、だれ、このおじさん、モサイんですけどー」

「こんにちは、丸出英雄です」


 失敬な子だけど、ちゃんと挨拶はしておかないとね。


 ユカリちゃんはゴリ太郎の方を見て、それからゴリ次郎の方を 見た。


「やだやだ、鬼を二匹も連れているじゃあ無いですか、嫌ですねえ」


 おや、この子、ゴリラ達が見えるのかい?


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