「こんな人畜無害そうな寝癖おじさんを怖がるとかどうかしてるわ」
「チョリさん酷いよ。ゴリラ見えるんだ、凄いね」
「ゴリラ~~? 鬼でしょ? それは角は無いみたいだけど~」
『ウホウホ』
『ウホウホ』
「しゃ、しゃべった」
声も聞こえるのか、ユカリちゃん優秀だなあ。
「この子、魔女っ子で売り出してるんだけど、霊能力とか、オカルト系の子なのよ」
「ムー系女子なのかあ」
「悪魔が主催する迷宮は秘密世界政府の陰謀なのよ」
「「……」」
陰謀論だけど、迷宮の方がパワー強すぎて変なバランスになっている感じだね。
「オカルト好きなんだ」
「お、お父さんが、心霊研究所をやっているのよ」
「いつも思うのだけど、ユカリちゃんのお父さんどうやってご飯食べてるの?」
「け、研究で」
「心霊研究じゃ食べられないでしょ」
「う、うん、持ち出し多いって」
「財産家なの?」
「パソコンソフトのロイヤリティーを持っていて、それでなんとか……」
「偉いお父さんだね」
「そうなのよ、パソコンワープロの百太郎の制作者なのよっ」
「ああ、レイトックのオマケのワープロだわ」
凄く有名なパソコンソフトの開発者だった。
俺でも知っている。
「この子たち、鬼なのに大人しいのね」
「ゴリラだからね、気は優しくて力持ちなんだよ。でかい方がゴリ太郎、ほっそりしてるのがゴリ次郎だよ」
「そ、そうなんだ」
ユカリちゃんはゴリラ達を上目使いでチラチラ見ている。
見られるのが珍しいので、ゴリ太郎もゴリ次郎もポーズを取って見せつけているね。
「じゃあ、明日はムカデ部屋攻略に行くから、準備してね」
「嫌なのに」
「十六階を突破しないと、『納涼肝試し、オバケ階を行く』にも呼ばれないし、仕事減るわよ」
「十階のフロアボスは突破したの?」
「したよ、護衛さんと一緒だったけど」
「ちょっと前だと、割と大人数で迷宮に入れたので、結構融通が効いたのよ。今は最大でも十八人だからねえ」
「その頃には何人ぐらいで行ってたの?」
「三十人とかでプロモーションビデオの撮影とかやってたわね」
「レベルアップも養殖でやってくれたのに、オバケ階の番組も霊能者アイドル枠で呼ばれてたのに~~」
「時代は変わったからね。今は『Dリンクス』のみのりんみたいに冒険者パーティで実績出す『
「ポータル使えないでどうやって深い所に行ってたの?」
「誰かにくっついて行けばポータルで飛べるのよ。でも最近はパーティ単位が中心だから、自前でポータルを飛べるのが基本ね」
「なんだか世知辛いわ」
「じゃあ、明日は一緒にがんばりましょう」
「……、まあ良いわ、鬼……、ゴリラにちゃんと護衛させてね」
『ウホウホ』
『ウホウホ』
任せとけカワイ子ちゃん、という感じでゴリラ達がポーズを取ってユカリちゃんにアピールをした。
さては、おまえら、ユカリちゃんが気に入ったな。
会議室にはコーヒーサーバーがあって、チョリさんが入れてくれた。
ありがとうございます。
「ヒデオさん、あんた明日ムカデ部屋だってね」
「そうなんだよ、カスミちゃん」
「いろいろグロいから気を付けてね」
「カスミちゃんはクリア済なんだ」
「そうそう、ウイングチートの企画で新人アイドルのムカデ部屋突破動画は人気コンテンツだったからね」
「私は話こなかった」
「ユカリはオカルト系だからさあ」
Dアイドルで同じ事務所でもタイプが色々いるんだなあ。
「カスミちゃんはどんなアイドルなの」
「ん、そういう疑問が湧いたら、黙ってMVを視聴だよ、ヒデオさん」
「そうだそうだ」
「そうだよ、ヒデオさん」
あら、アイドルと付き合う時は基本みたいだな。
俺は買ったばかりのDスマホでDチューブを開き、彼女達のMVを開いて見た。
ほうほう。
近くにいる女の子が歌って踊っている動画を見るのは変な感じだなあ。
おお、カスミちゃんは正当派な感じのアイドル曲だね。
ユカリちゃんは、コスプレで可愛い感じ。
チョリさんは正当派で歌が上手いなあ。
なかなか面白い。
『サザンフルーツ』の動画は……。
おお、なんか派手で楽しい曲だね。
『南国フルーツパラダイス』だって、ダンサブルで耳に残るね。
「お、ヒデオが私らの動画見てるよ」
「あ、ヒカリちゃん、みんな」
「こんにちはヒデオさん」
「私たちのPV見てくれたの嬉しいわ」
「ちゃんと、お気に入りボタンとチャンネル登録をしなさいよ」
「わたしのもわたしのも」
「わたしのも~」
『サザンフルーツ』は学校帰りなのか、制服姿だった。
目新しい感じで可愛いね。
「明日、ユカリちゃんを交えて、ムカデ部屋攻略に行くわよ」
「げーっ!」
「うわ、ムカデ部屋ですか」
「よりによって、ああ、だから
「そう、護衛は山下さんと、チャムスさんと、立花さんと、ヒデオよ」
「十階突破したばかりだから、習熟をしたいでーす」
「突破してから思う存分周回しなさいな」
「うへえ」
ムカデ部屋はなかなか大変な場所みたいだね。