「じゃあ、いくぜ、三、二、一、今!」
ムラサキさんがムカデ部屋の扉を開いた。
そこへゴリ次郎を走り込ませる。
通り終わったら、ムラサキさんは戸を急いで閉め、出て来たムカデを踏み潰した。
部屋の中に入ったゴリ次郎の足にムカデがまとわりつくが、噛みつかれたりはしないようだ。
ゴリ次郎は大股で走り、青いオーブにタッチして、戻って来た。
「ムラサキさん、開けて下さい、三、二、一、今!」
ムラサキさんが戸を開くと、足にムカデを沢山まといつかせたゴリ次郎が走り出てきた。
アイドルさんたちと、ケインさんがムカデを見てギャーと言い、他の人はムカデを踏み潰した。
ゴリ次郎の胸あたりまでムカデが這い上がっているね。
だれかを持って入るのは厳しいだろう。
山下さんとかチャムスさんが手分けをしてムカデを殺した。
俺も二三匹踏み潰した。
なかなか嫌な感じだね。
死んだムカデは粒子になって魔力霧になって俺達に吸い込まれ、魔石とドロップ品のムカデ飴を出して消えた。
「ムカデ飴?」
「ああ、毒消しにもなる飴だよ、豪の者はこれをなめながら歩いて中に入ってオーブを触って来るそうだ」
それは豪傑だなあ。
「ゴリラさんの肩にのればどうかなあ」
「途中でムカデが上がるのを止めるような物があれば良いんだけどなあ」
「「「「ひいいい」」」」
アイドル達は役に立たないなあ。
「チョリさん、なにか良い呪歌は無いんですか?」
「ない、というか、ムカデ見て歌いたくない」
「ミキちゃん【さちここばやし】の呪歌は?」
「むりむりむりむりっ」
無理っぽい。
「ゴリ太郎の肩に乗って貰って、ゴリ次郎は上がってくるムカデをはたく、のでどうかな?」
「とりあえず、ちょっと火炎弾魔法でムカデを減らしてから、ユカリちゃんで実験してみますか」
「最初は俺がやってみますよ」
「あ、そうですね、ヒデオさんもオーブに触らなきゃでしたね」
とりあえず、ゴリ太郎の肩に乗る。
うん結構高くて怖いね。
落ちると怪我しそう。
『浮いてる~~』
『空中浮遊だ!』
『やっぱ、ヒデオの超能力は変だよなあ』
「ユカリちゃん、ファイヤーボールを打ち込んで」
「はいっ、チャムス師匠」
『『紅蓮の炎よ、地獄の灯りよ、いまこの地に顕現し、我が敵を焼き尽くせ』』
チャムスさんとユカリちゃんがデュアルでファイヤーボールを格子越しに打ち込んだ。
部屋の中ではムカデの群れが爆発で吹っ飛ばされて飛び散っていく。
おお、結構減るね。
「いくぜ、ヒデオ、用意はいいか」
「大丈夫です、ムラサキさんっ」
「三、二、一、今!!」
戸が開いたのでゴリ太郎、ゴリ次郎を走り込ませる。
ゴリラは大柄なので、大股で四歩で部屋を横断できる。
天井からムカデは落ちてこないようだね。
青いオーブ自体にもムカデはたからないよいうだ。
ゴリ太郎の腕に支えてもらい、空中で伸びをするようにオーブにタッチ。
ゴリ次郎は忙しくゴリ太郎の下半身にたかるムカデを払っている。
よし、戻ろう。
足がチクッとして見ると、ムカデが噛みついていた。
乱暴に引き剥がして床に投げ落とす。
ゴリ太郎はまた四歩で部屋を横断して扉を出た。
ガチャーンと扉がしまって、ムラサキさん、チャムスさん、ユカリちゃん、山下さんが這い出してきたムカデを退治していた。
「おつかれさまーっ! できましたね」
「一回噛まれた、痛い」
俺はムヒEXを貰って噛まれた所に塗った。
「ムカデ飴もなめろ」
「ありがとうございます」
ムラサキさんが飴の皮を剥いて俺の口に入れてくれた。
おお、甘辛い感じの飴だ。
「同じ方法で、ふたりづつ出来そうだね」
「ムカデに一回噛まれるぐらいですね」
ヤヤちゃんがやってきて俺の足のかみ傷にヒールを掛けてくれた。
ありがとう。
「よーし、じゃあ、やっちまうか」
「次は私がやります、あとは?」
「うええええん、私やるー」
偉いぞヒカリちゃん。
さて、さっきのようにゴリ太郎の肩に、ユカリちゃんとヒカリちゃんを乗せてゴリ次郎とペアを組んで走らせる。
『おー、早く横断出来て飛んでるみたいだー』
『ムカデは降ってこないのか』
『透明ゴリラ攻略』
ゴリラが見えないヒカリちゃんは目をつぶってヒイヒイ悲鳴をあげていた。
ユカリちゃんはしっかり前を見ているね。
ゴリ次郎も目にも止まらないほどの速度で手を動かし、登ってくるムカデを払っていた。
ユカリちゃんがオーブにタッチ、ヒカリちゃんも目を開けてタッチ。
即座にふり返り、ゴリ太郎はまた横断である。
タイミングを合わせてドアを開き、漏れ出てきたムカデを退治する。
「ヒイヒイ」
「噛まれなかった?」
「だ、大丈夫ですっ」
「無傷~~」
うんうん、被害が無かったら何より。
そんな感じで、チョリさんとケインさん、ミキちゃんとヤヤちゃんと二往復して、ムカデ部屋を攻略した。
後半被害は無かったね。
ゴリ次郎が慣れてきたのもあるのだろう。
「これはなかなか良いね」
「走るより安全ですね。だいたい走りだと五匹ぐらいに噛まれますから」
「また、付き合ってもらってかまわないかい、ヒデオさん」
「ええ、良いですよ」
こういう難所はノウハウを作って抜けてしまうのが良いね。