全員が青いオーブにタッチしたので、ちょっと先の階段の扉が開くか実験してみる。
ガチャ。
うん、俺が触ると格子戸が開いた。
離れると閉まる。
一応全員がちゃんとオーブの印を貰ったかチェックをした。
問題がないみたいね。
「今日のミッションは成功、ヒデオのゴリラさん達が役にたったわね」
「光栄ですチョリさん」
ユカリちゃんが、ゴリ太郎とゴリ次郎の手を取った。
「もちあげてー」
『ウホウホ』
『ウホウホ』
ユカリちゃんは二匹のゴリラに手を取られて宙に浮いた。
うん、凄く楽しそうだけど、絵面がFBIに捕まった宇宙人みたいだ。
そして、動画を見ているリスナーにとってはユカリちゃんが空中を上下しているように見えるだろう。
『すげえなあ、ゴリラ』
『ユカリちゃんの手の先に二匹、居るんだよなあ』
『不思議な無敵コングだ』
ユカリちゃんは来る前の不機嫌そうな感じと打って変わって上機嫌である。
「私、ゴリちゃんたちが好きになっちゃったわ、ヒデオさんの狩りに連れていってくださいな」
鬼だって嫌がっていたのに変わるものだねえ。
「ええ、いいですよ」
「ブウブウ」
「なによ、ヒカリちゃん、文句でもあるの」
「ヒデオは『サザンフルーツ』専属なんですから」
「それは心が狭いね、ヒカリくん」
前を歩いていたケインさんがふり返り、話に混ざってきた。
「だってー、私たちが最初にヒデオを見つけたんだもんっ」
「見つけたってより、助けて貰ったんでしょう」
「そうとも言う」
なんだか、変にモテモテだねえ。
まあ、ゴリラ達の人気なんだろうけどね。
「前衛をヒデオさんとゴリラさん、そしてケインさん、後衛を、わたしと『サザンフルーツ』でどう? 六人よ」
「魔法使いかあ」
ヒカリちゃんは思案顔だ。
「わ、私は入れないの」
「チョリ先輩は『
「ぎゃー」
パーティ編成は無情だなあ。
「しかし、バランスは良いんだけど、『
「鍵開けと罠外し、ルート先導と索敵かあ」
「私が『
「ばっかヒカリ、そんな簡単になれるもんでもねえぞ」
本職『
「そうだね、『
「ヒデオ、あんた『
「ヒデオは鈍そうだから『
雑談しながら、洞窟を歩くのは楽しいね。
たまにオークやトードなんかが現れて倒したりする。
「アイドルパーティするとして、しばらくは十階台をうろうろかなあ」
「僕は早く深い所に行って欲しいね」
「ケインさんの適正狩り場って四十階以下でしょ、やだー」
「本当に、どうして養殖でレベル上げとかしちゃったかなあ。なんだかステータスばかり育って冒険勘みたいな物は育って無いんだよね」
「まあ、大迷宮運営がアイドル活動に渋くなるとは思いませんものね」
「昔は良かったなあ、沢山のスタッフで迷宮に潜って活気があったよ」
「まあまあ、ケインくん、時代は移っていくからね。今は配信冒険者アイドルの時代よ、狩りで目立って歌は余技で売るのよ」
「『Dリンクス』のみのりんですよね」
「そうね、あの子のポジションは美味しいわ、アメリカのマリア・カマチョとコンビを組んだしね」
おお、マリア・カマチョといったら俺でも知っているビックネームじゃないか。
配信冒険者の『
「みのりん、良いよねえ、ものすごい【豪運】でドロップが山ほど、同じパーティに格好いいタカシくんと泥舟くんがいてワクワクしちゃう」
『Dリンクス』かあ、今度動画を見てみよう。
新しいDアイドルの形のヒントがつかめるかもしれないね。
と言っても、俺が考えるべき事じゃないけどね。
階段を上がり、小休止を挟んで迷宮を上がって行く。
やっぱ帰りは登りなので疲れるね。
それでも初めて迷宮に来た時よりも体力が付いている感じがする。
レベルアップの賜物だろうかね。
力も結構強くなったよ。
「『サザンフルーツ』はどんなアイドルグループになりたいんだい?」
「そうですねえ~」
ミキちゃんが思案した。
「ものすごい曲が売れて儲かるグループ!」
「ヒカリちゃんは即物的ね。私は、狩りもしたいけど、やっぱりアイドル活動中心で行きたいですね、ヤヤちゃんは?」
「私はあまり冒険が好きじゃないから、やっぱり楽曲かな、歌って踊って人気者になると良いですね~」
そうか、『サザンフルーツ』はどちらかというと楽曲系になりたいんだね。
「私は実家のような安心感を迷宮に求めたい!」
「なんでよ、ユカリちゃん」
「お父さんがお家を心霊研究所に改造したので、落ち着けない……」
「「「「あー」」」」
色々と問題があるんだなあ。
ユカリちゃんは冒険中心か?
ケインさんもそうかもね。
一口にアイドルと言っても色々とあるので面白いなあ。