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第30話 やっと墜ちたと思ったら今回は女僧侶の回想


 シャリルは、眠りながら過去を回想していた。

 幸せな家庭、そして楽しかった友達と遊んだ事等。

 過去に、過ぎ去っていった出来事を。



『アレリオと出会ったのは何時の頃だっただろうか? ああそうだ』


『彼はあの時・・・村が盗賊に襲われた時に・・・・・・』


 一つの村の家々が、燃え盛る炎の勢いで、暖炉にくべられた薪の様に燃えていた。


 その村には沢山の人間の死体があった。


 切り刻まれた老女の死体、

 抵抗して、無惨にも殺された農夫の死体。

 首から上のない子供の死体。


 村の中で、唯一残っていた建物が、緩やかな小高い丘の上の教会だけであった。


 教会の中では、数人の老人達がフォークや鎌等の農具を構え。

 教会の中の扉の前で、盗賊達が来るのを待ち構えていた。


 この村の若い男達は皆ほとんど、隣町の鉱山で働いている。

 そのため、今は老人しか居らず、そこを盗賊に狙われたのだった。


 女性たちは、教会の奥で子供達を抱き締めてぶるぶると身を震わせていた。



「どうか主よ、この子達だけでもお救いください」


 教会の神父が、祭壇の背後の壁に立て掛けられた十字架の前で祈る。

 恐怖に怯える子供達の命の安全を神に願って。



『主よ、どうか我々の子供達を・・・』


 神への祈りを唱える女性達・・・。


 子供達は黙って、うつ向く者。

 事が分からず、無邪気に遊ぶ者。

 ひっくひっくと、すすり泣く者もいた。



「神父様、私も戦います」 


 その中に若い修道女シャリルもいた。

 彼女は手にメイスを持ちながら言う。



「シャリル、貴女は奥で子供達をあやしていなさい」


「でも・・・あの扉を突破されたらどのみち子供達が」


 しかし、神父は決意を固めたシャリルを止める。


 それを、彼女は何故かと問う。



「シャリル、貴女は危険なことに参加しなくていいのです、もし貴女の身に何かあったら私は貴女の村の神父に責められてしまいます」


 神父が言うように、シャリルは二日前。

 隣り村の教会から、用事でこの村に訪れていた所だった。

 そこを山から下りてきた盗賊の襲撃があり、運悪く巻き込まれてしまったのだ。 



「それに貴女を好の事をいている子供達は、貴女が盗賊に酷い目に遭う所は見たくないはずです」


 神父はゆっくりと優しく、子供を諭す様にシャリルを説得する。


 しかし、彼女は。



「神父様、でもっ!」


 何としても子供達を守らねばと言う決意を持つシャリルは、直も食い下がる。



「心配しなくても、もう少しで援軍は来ます、それまで皆で耐えるのです」


「はい・・・そうですね、分かりました私も待ちます」


 シャリルは神父に説得されて下がる。

 とそこへ、バンッバァンと大きな音が響く。

 教会の扉が盗賊達に叩かれているのだ。



「神父様ぁーー! 皆を連れて下がっていてくだせええぇ」


「んだ~~ここはオラたつが食い止めっからよ」


 五人の老人達が扉の前と脇に待ち構えると。

 扉は行きなり、ドォーーンと爆発して吹き飛ぶ。 



「うぅううっ!」


「がはっあぁ」 


 老人達は、爆風に巻き込まれて酷い怪我を負ってしまい、床に倒れて呻く。



「ひゃっはっはっはっ!」


「じじい、ばばあ共は殺せっ! 女は性奴隷だ、ガキ共は売りに出してやる」


「燃やせ、燃やせぇーー」


 教会にも、沢山の盗賊が雪崩混んで来る。

 シャリルはもうダメかと思った。

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