ミリカは、シャリルが歌わないように、何か使えそうな物を探す。
そして、彼女の口に猿轡の代わりに手近に落ちていた瓦礫の欠片らしき石をはめ込む。
「いいっ! 貴女の相棒は死んだのっ! でも直ぐに蘇るから心配しないでねっ」
「むぐっむぐぅ~~」
ミリカが、口角を吊り上げながら語る。
シャリルは、彼女を怒りと憎しみの篭った瞳で睨み返す。
「そうねぇーー? 貴女も直ぐに彼の後を追わせて上げる、そして貴女も蘇って私の女友達になるの」
ミリカは、反抗的な目を向けるシャリルを怖がらせるべく。
恐怖を掻き立てるような事を言い出す。
「むぐぐぅ~~」
ミリカはシャリルを見下しながら、一人であれやこれやと勝手に喋り続ける。
「仲のいい友達として、恋ばなとか~~オシャレについて話したいしぃ~~」
「んぐぐ~~」
勝手に語り続けるミリカは、シャリルが何も言えないので勝手に妄想を言いまくる。
「もぉ~~分かっ~たわよぉ? そぉ~~んなにっ! 仲良ーーく成りたぁいのならぁ? そうして、・あ・げ・る♥」
「ん~~んん~~むぐぐううぅぅぅぅぅ~~~~~!?」
ミリカさっきから聴いてたら、かなり頭のヤバイ奴か、虐めの主犯みたいだぞ。
とジョージは思っていたが。
余計な口を挟むと怒りが自分に向かって来るかも知れないと、思いとどまる。
そして、ミリカは遂にシャリルの頭を両手で押さえる。
シャリルは目を見開き、涙を流して怯える。
そんな彼女も、ガタガタと震えていたが、遂には首をグキッとへし折られた。
「どうする? 俺たちじゃ、こいつらをアンデッドにしたって腐肉の塊にしか出来ないぞ・・・こいつらの死体をあの装置まで運んでスケルトンに変えるか?」
ジョージは腕を組んでどうしようかと思い、取り合えず相棒であるミリカに相談する。
「そうよねぇーー? そうしましょうか? スケルトンちゃん達、ちょっと物は相談なんだけどねっ! この二人の遺体を私達にくれないかしら」
スケルトン達は相談する。
身振り手振りで何を話しているのか分からないが、答えは出たようだ。
すると、スケルトン達は親指をぐっと前に出したので、良いぞってことだな。
それと身振り手振りで君たちがいなければ勝てなかった。
加勢してくれてありがとう、と頭を下げた。
「ミリカ、良いってさ?」
ジョージは、言葉を発する事のできないスケルトンの変わりに翻訳して喋る。
「本当、嬉しいっ! ありがとうっ♥」
ミリカは、スケルトン達一体一体に次々と抱きついていき、キスをして喜ぶ。
キスをされたスケルトン達。
彼等の方も、それぞれキスされた額や頬、こめかみの部分を擦り喜ぶ。
「何々っ? ついでに遺体も運んでくれるってさっ」
その様子を見たジョージ。
彼は、スケルトン達はミリカのキスが嬉しくて堪らないのかと思った。
「えっ? そこまでしてくれて、いいの?」
「ついでだから、全然いいってさっ!」
スケルトン達の親切さに、ミリカはそこまで甘えて良いのかと思うが。
ジョージは彼等の身振り手振りを見ながら、彼女に良いと言っていると翻訳する。
「じゃあ早速、実験室に行きましょう」
ミリカを先頭にジョージ。
それから遺体を運ぶスケルトン達が続き。
彼等スケルトン達に、実験室までアレリオとシャリル達の遺体は運びこまれた。
スケルトン達は、アレリオを左の台に乗せ、シャリルは右の台に乗せられた。
「ねぇ、見てっ!」
「んっ何だ?」
スケルトン達はレバーを動かす。
そして、天井からシャリルに紫色と緑色の妖しい光線を浴びせる。
すると、苦痛の表情を浮かべていたシャリルの遺体が安らかな眠り顔に成っていき。
それは寝息さえ聞こえて来そうに見えた。
それだけではない。
彼女の姿も変化する。
だんだん肌の色も色素が薄く成り明るかった肌がさらに雪のように青白くなり。
さっきとは、正反対の口元が歪み邪悪そうな寝顔になる。
「悪堕ちか、この表情は」
「そうじゃあないの? アンデッドにするんだしぃーー」
そして、ジョージとミリカ達が呟く中。
レバーの付いた機械が段々と煙を上げ緑の雷が走り始めた。
「おいっ! これは・・・」
「ヤバイわよね・・・」
機械は地震のように激しく揺れ始めた。
それで、ガタッタッタッガッタと今にも爆発しそうな音を出す。
そして、当の機械はガッシャッーーと、また大きく妙な音を出すと故障してしまう。
「おいっ! いったいどうなっているんだ、これは!?」
「しっ知らないわよっ! 何っ何なのもうっびっくりしたぁーー」
ジョージとミリカ達が、スケルトン達に聞くと。
シャリルの遺体を乗せた台と、装置の魔力が、ほぼ切れてしまったとのこと。
「はぁっ! 魔力切れっ?」
大きな声を上げたミリカに対して、スケルトンはうなづき、イエスと答える。
「じゃあこの子・・・シャリルちゃんは・・・魔力切れでアンデッドにできないの?」
スケルトンは大丈夫。
どうやらその娘が魔力を吸いとったようだと、シャリルに骨だけの指をさす。
指を差されたシャリルは、ゆっくりとした動作でムクリっと起き上がった。