目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第28話 今度こそ悪堕ち・・・だといいな・・・


「シャル・・・君だけは・・・生きろ・・・生きて帰るんだ」


 アレリオは力なく途切れ途切れに喋った。

 その姿は弱々しく憐れであった。



「うるさいぞっ剣士、それに生きて返す訳ないだろうが」


「アンデッド・・・よ、俺の・・・命はくれて、やるっ! ・・・っだから彼女は、シャルだけは・・・頼む、『ごふぉっ』・・・ううぅっ! はぁっはぁっ」


 ジョージは耳障りだと感じて怒鳴るが、アレリオは直も苦し気に喋り続ける。



「それって、仲間になるってことだぞ」


「そうよぉーー? 私達の仲間入りするの?」


 俺とミリカは、剣士に仲間としてアンデッドに成ってくれるのかと聞くと。



「ダメよっ! アレリオ、諦めないでえっ」


「シャル・・・『はあっ』いいんだ・・・もう、俺は・・・『はあっはあぁっ』さあっ! 『がふっ』・・・アン・デッドよっ! 俺に止めを・・・」


 シャリルは、ボコボコに腫らした顔から涙を流して叫んだが。

 アレリオは、覚悟を決めたようだ。



「殺すのはいいが、その前に」


 俺は自らの腕を軽く削ぎ、ショートソードに俺の血を垂らす。


 そして俺は。



「剣士よ、アレリオって言ったか? 良く頑張ったな、さあ最後に望み通り止めを刺してやろう」


 ジョージは血に濡れたショートソードをアレリオの胸に突き刺した瞬間。

 その胸から、血が噴水のようにバアーと噴き出す。



「アレリオォーーーーッ! あっ! そんな・・・グスッグスッ! 許さない絶対に貴女らを許さないっ!?」


「うるさいわねぇっ?」


 シャリルの言葉を五月蝿く感じた、ミリカは彼女の左肩をレイピアで貫いた。



「ぐあぁぁっ!」


「うるさいって、さっきも言ったでしょ」


 今度は首の皮を鋭い爪で切り裂き、それを引っ張り、ベリベリと音を立てて剥がす。



「いぎゃあっぁぁーーーー!?」


 シャリルは首に感じる苦痛に絶叫し、そして消え入りそうなか細い声で懇願する。



「もうやめて・・・下、さい・・・アレリオが・・・自分の、命の変、わりに? 私を逃がす・・・約そ」


「ああっ! あの約束ねーーえぇ? 貴女さあ、あんな口約束を守ると思っているの?」


 やめてと頼むシャリルだが。

 ミリカは、さも当然とばかりに小馬鹿にしたような笑みを浮かべ。

 先程の約束は守らないと冷たく宣言する。



「やっぱり・・・ね? 守って・・・くれる、訳ないかあ~~ふっふふふ?」


「当たり前だろう? 誰が行かして返すかアホッ!」


 すると、シャリルは目を瞑り天井を向き歌いだした。

 なんだ、気でも触れたかとジョージとミリカ達は思った直後。



「主よ~~ぉ我~~ら~~? ・・・に光ぃを~~・・・」


 シャリルの神聖な歌声が十字路に木霊した。

 その歌声を聴いたアンデッド達は。



「ぐわわっ! わわわあぁぁっ! ぁっ! わっわ」


「おあぁぁぁおぇっ! あぎゃっぁぁぁぁ」


 歌声は、二人を含む周囲のアンデッド達の脳内に響く。


 なんだこれは、痛い痛い痛いとジョージとミリカ達は苦しむ。

 そして、スケルトン等も頭を抱えて、脳内に響き渡る痛みにもがき苦しむ。


 ジョージとミリカ達は絶叫して口から嘔吐しのたうち回る。

 呪文か、それともこれは聖歌なのか。

 頭に感じた硝子が刺さったかのような鋭い痛みに、二人は不様に苦しみ続ける。


 ジョージがのたうち回っていると、ミリカは頭痛の痛みをこらえ、立ち上がる。



「こおぉのっ! ビッチプリーストがあぁっ!?」


 ミリカは手近にあった瓦礫の石を投げ、それは歌うシャリルのこめかみに当る。



「うっ」


 シャリルの歌は、彼女が呻くと歌声が止まる。

 そして、ミリカは彼女の口に石をはめ込んだ。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?