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八重山昔話「大うなぎ退治」

 むかしむかし、とある村で牛や山羊が次々にいなくなりました。

 真夜中の出来事で、犯人はんにんは全く分かりません。


「ドロボーがいるにちがいない。つかまえてやろう」


 村人たちは毎晩、交代で見張りをすることにしました。


 何日か見張りを続けたある夜。

 村はずれにある池の中から、何か大きくて長いものがはい出して来ました。

 そいつはなんとている牛に近づくと、大きな口を開けて飲みんでしまったのです。


「出たぞ!」


 見張りをしていた人々が、そいつをたいまつで照らしました。

 たいまつの明かりで見えた姿に、人々はギョッとします。


「うわぁ、おばけうなぎだ!」

「ツルツルすべってつかまらないぞ」

「ああ、にげてしまった」


 そいつは、ひとかかえ以上もありそうな太くて長い大うなぎでした。

 人々はその不気味な生き物をどうやってやっつけようかと相談しました。

 うなぎは意外にすばしっこく、すぐにげてしまいます。

 つかまえようにも、ヌルヌルしているので取りさえられません。

 うなぎは池の中へにげてしまいました。


「どうしたらつかまえられるだろう?」

「私に考えがある。みんな聞いてくれ」


 村人の中に、頭のいい男がいました。

 男は、大うなぎをやっつける方法をみんなに伝えました。


「家のカマドにある灰をできるだけたくさん持ってきてくれ。それと、武器になりそうな太い棒を用意してほしい」

「わかった」

「みんな、灰を集めよう」


 夜になり、男が指示したものを用意して村人たちがかくれていると、池の中から大うなぎが出てきました。

 うなぎは牧場の中をずるずるとはって牛に向かっています。


「今だ! 灰をかけろ!」

「ドロボーうなぎめ、これでもくらえ!」


 大うなぎが池からはなれたところで、男が合図あいずしました。

 村人たちは、持っていた灰を大うなぎにどんどんりかけます。

 灰まみれのうなぎは身動きがとれずに、草の上をのたうち回りはじめました。


「やっつけろ!」


 男の合図で、棒を持った男たちが大うなぎに近付いて、ボカボカとうなぎを打ちました。

 さすがの大うなぎも、たまったものではありません。

 太い棒で何度も打たれて弱っていき、ついにピクリとも動かなくなりました。

 こうして大うなぎは退治たいじされて、牛や山羊が飲まれることはなくなったそうです。



 八重山やえやま西表島いりおもてじまには、ウーニ(オオウナギ)と呼ばれる大型のウナギが生息しています。

 成長すると体長2m、体重20kgに達し、食用にもされています。

 お話に出てくる大うなぎは、それよりももっと大きかったみたいですね。

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