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八重山昔話「欲張りな役人と力持ちの村人」

 むかしむかし、とある島に欲張りな役人がいました。

 役人は、王府への人頭税の他に、村人にとても重い税を言いつけていたのです。

 王府に納めない税は倉にためんで、自分のものにしていました。

 村人をくるしめて自分だけがいい思いをする、悪い役人でした。


「お役人様、これでは生活ができません。もっと税を軽くしてもらえませんか?」

「だまれ、もっと税を増やしてやるぞ!」


 たまりかねた村々の人が役人に言いました。

 しかし、役人は全く聞く耳を持ちません。

 すると、そこへひとりの男がやってきました。


「お役人様、私が一度に持てるくらいの数でいい、みんなに返してもらえませんか?」


 男は役人にたのみました。

 役人は1人の人間が一度に持てる数など大したことはないと思いました。


「仕方ない、お前が一度に持てるだけの米を返してやろう」

「ありがとうございます」


 役人が言うと男は礼を言って役人の倉の床下ゆかしたに入っていきます。

 どうしてそんなところへ行くのかと役人が不思議に思っていると、男は倉の下で「うーん」と手足をふんばりました。

 すると、倉がゆれて、柱が地面からはなれたではありませんか。

 役人はビックリして、あんぐりと口を開けたまま声も出ません。


「ではいただいていきます」


 男は倉を持ち上げて、ニッコリ笑いました。

 そのまま倉を高々と持ち上げながら、ゆうゆうと歩いて村へ帰っていきました。

 米は倉ごと持っていかれたので、1粒も残っていません。

 役人はおそれおののき、こんなところにはいられないと言って島からげ出してしまったそうです。

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