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3 扉の向こう側


扉に入るとそこには、庭のような植物に囲まれた空間が広がっていた。

そしてそこに、シルクハットを被った英国紳士のような装いの外国人が立っていた。



「ようこそ、籠本 灯生様。お待ちしておりました。」

「転生について蔵之介様より伺っております。」


「私はここの管理者を務めております。名は、『モルゲン・スターノイツ』と申します。」

「以後お見知りおきを。気軽にモルゲンとお呼びください。」



「はじめ、、まして、、、篭本 灯生です、、、よろしくお願いします。」

「蔵之介さんから転生について聞くよう言われたのですが、、、」



「はい、仰せつかっております。」

「灯生様が転生していただく世界は、以前いた世界と似て否なる世界でございます。」


「人はもちろんおりますが、そこには魔法やこちらの世界ならではの動植物。」

「そして、亜人や魔人と呼ばれる種族もいます。そうですねぇ、時代的には、元いた世界の中世くらいでしょうか。」


「あっ、それから神と呼ばれるものもおりますね。元いた世界にはいなかったでしょう。」

「なにせ、あの世界ではあやふやなものになっていましたから。」


「まぁ、いわゆる、ファンタジーのような世界ですね。お分かりいただけましたか?」



「神様がいるのですか!?というか、元の世界にはいなかったのか。」

「その、なんていうか、、、凄く王道な転生ものの世界観ですね、、、ゲームのような、、、ほんとにそんな世界があるんですね、、、」



「はい、ちゃんとございますし、そこに転生していただきます。」

「もちろん、心臓を貫かれたり、首を切断したり、毒を盛られたりすると死にますので。」

「まぁ、そこは元いた世界と同じかと、、、あなたが自害したように、、、」



「で、でも、もう、死ぬことに恐怖はありませんので大丈夫です、、、もう一度死んでますから。」



「ふん。そうは言っても、あなたにはすぐに死なれては困りますので。」



「それは、、、どういう、、、?」



「あっと。そういえば、これもお伝えしなければなりません。」

「魔法があるということは、自身のスキルというものやレベルというものもございます。」

「ここでは、あなたに役立つスキルやアイテムをお渡しします。」



なにか隠されたような、、、まぁいっか。


「そこはゲームみたいですね、、、それで、役立つスキルやアイテムっていうのは?」



「私が手によりをかけて厳選させていただきました。」

「それではスキルから。」


と言ってモルゲンが床にステッキを2回打ち付けた。

すると、頭の中や体全身にスキルの声が響いた。



ー『不死身』、『即解』、『福来幸』、『創生成造』、『体魔操慣』、『思考念熟』、『隠蔽変化』、『禁忌録』を獲得しました



「8つのスキルが届いたと思います。使い方や効果は転生後のお楽しみ、ということで。」

「そしてアイテムですね。」


というとまた、モルゲンが床にステッキを2回打ち付けた。

すると目の前に、3個のアイテムが、次元の狭間のようなところからでてきた。


「左から順に、

一つ目は、『無限収納箱アイテムボックス』。これは名前の通り、無制限に入る収納箱。身に着ける必要はなく、自身が思った時にいつでも収納ができます。アイテムは亜空間に仕舞われます。


二つ目は、『工具七式』。アイテムや武器なんかをこれで自在に作ることができます。


そして三つ目は、『初期装備一式』。初心者用の武器や防具、服、それから当分の資金ですね。」


「それから、これは私からのプレゼントです。」


と言うと、またもやモルゲンが床にステッキを2回打ち付けた。

すると、水晶に入った箱庭のようなものが出てきた。スノードームみたいだ。


「これは、『アトリエ』というものでして、『無限収納庫』にも仕舞える、まぁ簡単に言うと家ですね。」


「この『アトリエ』には、寝床やキッチンはもちろん、こちらの世界の知識や言語、魔法などといったものを記した本を納めた書庫、自由にアイテム等を生成できる鍛冶場など揃えております。また、自身で好きに改造してくださって構いません。夢のマイホーム、というわけです。」



「そんな!?家まで!?マイホーム!?こんなの以前では考えられなかった、、、」



「普段はこの水晶に入っているので、『アトリエ』を出したい時は、この水晶を出したい場所へ放ってください。逆にしまいたい時は、『アトリエ』から出た後に、戻れとそう思えば水晶の中へと戻りますので。」



「なんて便利な!?」



「ここまでで何かご質問は?」



「なんかもういろいろ凄すぎて、、、というかこんなに貰ってばっかりで混乱してるというか、、、」

「こんな俺が転生してやっていけるのかと、少し不安で、、、」



「ご心配には及びませんよ。」

「スキルもアイテムもかなりチートなものばかりなので、十二分に役に立つかと。」


「おっと、そういえば一つ訂正しておかなければなりません。」

「転生と言いましたが、細かく言えば少し違います。転生と転移の中間、といったところですかねぇ。」


「記憶と名前はそのままです。後々困ることになりますから。」

「魂の器、すなわち体、は新たに違うものになります。以前の体では様々な力が収まりませんので。」


「なので、ご自身の思ったような体や容姿に変えることができます。顔も、ね。」



スタイル抜群のイケメンにもなれるということか!!

と思ったが、それはそれで目立ちそうだしやめよう。


「なるほど、、、わかりました。力が収まらないって、どういうことですか?」



「例えば、元の体に魔力を入れたとしましょう。すぐに破裂します。と、こういうことです。」



「あ、なるほど、、、」


考えただけでゾッとする。



「郷に入っては郷に従え、と、言うことですよ。どんな自分になるのかは、転生中に決められるでしょう。」



あの苦しい人生からこんなこと想像もできなかった。

こんな俺が転生して幸せな人生を送れるのか、、、まだ少し不安だ。

それでも、、、俺は、一度死んだのだ。前進するしかない!



「ご準備はよろしいですか?」



「はいっ! 大丈夫です! よろしくお願いします!」



「よい返事です。少し勇気が出たようで。承知いたしました。」


「それでは、灯生 様に転生していただく世界、、、その名は、『マーデリュドメルン』!!」

「戦いと魔法の世界!とくとご堪能あれ。それでは!いってらっしゃいませ。」



と、モルゲンが言うと、

俺は体が宙に浮かんでいるかのような感覚に見舞われ、意識がだんだん遠ざかった。


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