ー王宮。
異様な雰囲気が漂っていた。
「や、やりました!王よ!!勇者の召喚に成功いたしました。」
真ん中を中心とした召喚陣を囲うように、円形に貴族たちが薄ら笑っている。
その中心に居座る人物こそ、ランドベルク王国 37代国王 ゴルザスタイン・ランドベルク王だ。
召喚と共に発生した蒸気に包まれてその中心には一人の少年がいた。
「よくやった魔導士ロッシーニよ。後で褒美をやろう。さて、そこの少年よ。名前は何と言う?」
「ここ、どこ・・・かぁさん、とぉさん・・・どこ・・・。」
「貴様!!王の御前であるぞ!!さっさと名前を言うのだ!!」
「まぁ落ち着けドカチリチ伯爵よ。少年よ、混乱していると思うが、今はお主の親はここにはおらぬ。お主は別の世界に呼び出され選ばれたのだ。勇者に。」
「な、何を言っているの?べ、別の世界??勇者??意味が分からない・・・。」
「これは、また、ひ弱な勇者だな。あれを首に付けて部屋に入れておけ!」
「仰せのままに。」
暴れ泣きわめく少年は首輪を付けられ、その後部屋に閉じ込められた。
「6人の肩書持ちはいるか?」
「ははー!ここに。」
「お主らにあの少年の面倒を任せる。魔王を倒せるくらいの強さを身に付けさせよ。」
「王の仰せのままに。」
「王よ。この後5大貴族との会議がございます。」
「あぁ分かっておる、ドカチリチ。皆を呼べ。」
「ははー。」
先に召喚を行ったのは魔人族側の革新派ではなく王国側だった。
ー王宮 大会議室。
「それで魔王召喚の光の柱は見えたのか。」
「はい、ここと同じような光が南の魔人国の方から見えておりました。」
「一刻も早く魔人国へ兵を送るべきです、王よ!」
「落ち着け、サルタヴァ伯爵。行き急いでもしょうがないであろう。それに勇者も召喚されたばっかりだ。」
「その勇者があのような腑抜けではな、グゼレー伯爵。」
「まぁまぁ、6人の肩書持ちがいるのです。魔王を倒せるくらいは強くなるでしょう、メディシス侯爵。」
「王よ、いかがいたしますか。ダンタリア帝国に助力を求めるのは。」
「うむ。確かにそれもよいが。あまり他国に、それも同じ人間族の国なんぞに助力を求めた後、魔王が死んだ暁には戦争を仕掛けてくるぞ、カンタレラ公爵。」
「私もそれを危惧しておる、ドカチリチ。まだ勇者が召喚されたばかり。少し様子を見て、使えそうならそのまま国で兵を作り上げる。雑魚なら帝国に助力を求める、それでよいか。」
「王の仰せのままに。」
「うむ。して、グゼレーよ。獣人国の奴隷どもは利益になるか?」
「はい、王よ。しっかり躾けもしております。魔人族が介入してきたのは
「そうか。それならよい、お前に任せる。」
「有り難き幸せ。」
「それからメディシスよ。マトシリカの内情は任せたぞ。魔人族側の動向を逐一知らせるのだ。」
「かしこまりました、王よ。」
会議は終わり各貴族は元の都市へと戻って行った。
「ミハイルよ。勇者の成長を逐一報告せよ。一刻も早く人間族以外の種族は滅せねばならぬ。」
「承知いたしました、王よ。」