「宿かにゃ~?」「宿ですね。」
「ここは?」
一軒家だが、認識阻害の魔法でだろうか、一見すると宿に見えるようにしてある。
「私の家です。認識阻害の魔法で宿に見えるようにしております。」
「セイレーンの歌声で夜が輝き、シャスティフォルの飛び立つ頃、朝日が照らす、ミンチェスターの守護の下に。」
とハルビアが言うと、見た扉の違うところに扉ができ、
「さぁさ、早くこちらへ。」
俺たちはその扉の中へと入った。
「亡霊ルノワールの嘆きが響き渡るとき、赤き雨が降り注ぐ、ミンチェスターの守護の下に。」
扉が閉じ再び認識阻害がかかった。
家の中に入ると、見た目の宿らしき面影はなく、普通の家だった。
「さぁさ、ソファーへどうぞ、今お茶を入れますから。」
「ありがとうございます!」
ハルビアが紅茶を入れてくれた。いい香りだ。それにホッとする、美味しい。
「この紅茶、美味しいですね。」
「これは私が栽培しているものでございます。これが趣味でして。」
「あとでほんの少し分けてもらうことって・・・。」
「もちろん!いいですよ!」
「ありがとうございます!」
これは少し分けてもらいたいくらいの美味しさだ。やった!
「それで、あの光の柱が出現したっていうことは召喚されたんですね、王都で、勇者が。」
「王宮の仲間では分かりませんが、異様な気配は城から遠いここでも感じれます。」
「何者かが一瞬でそこに出現したと、勇者が召喚されたと言ってもいいでしょう。」
「ネルビアさんに確認したところサリヴァンの方でも、魔力酔いの人が多いようです。魔力の濃度が高くなっていると。」
「それは私も王都にいながら感じ取れます。あちらも魔王が召喚されたのでしょう。どちらが先に召喚したというのは置いといて、召喚されたということは、十中八九、戦争になるでしょうね。魔法戦争です。」
「となれば、人間族は魔人族も魔族も関係なく殺しにかかってきますよね?」
「そうなる確率はかなり高いです。実は今の王都はダンタリア帝国の戦争に向けて準備を行っていたんですが、それが勇者魔王の召喚によって、方向転換することには違いないでしょう。」
「ダンタリア帝国と戦争!?何か戦争の準備をしているとは聞いていたんですが・・・。そうですか。因みに獣人国との戦争がどうなったか聞いてもいいですか?」
「一部の魔人族が獣人族を守っていたんですが、被害は多大です。奴隷になった獣人もおりまして、見せしめにされた獣人も・・・おります・・・。」
「それは王都から仕掛けた戦争ですか?」
「はい、一方的に。」
「よし、王都を破壊しましょう。」
「ちょ、ちょっと落ち着きましょう!?お気持ちは痛いほど分かります!今は王都に勇者がいるのです。どれほどの力なのかもわからないのに突っ込んで行くのは・・・。」
リアの気持ちを考えるといてもたってもいられなくなってしまった。少し冷静にならなくては。
「すみません。仲間にもその被害者がいるので・・・。」
「そういえば先程、獣人族を魔人族が守っていたと仰っていましたが。」
「それは私の部下ですね。諜報部隊とも言えるでしょう。流石にこの王都で私一人だけというのは無謀なので・・・。私が訓練した部隊です。優秀ですよ!」
「そうでしたか!獣人にも味方がいるのに少し安心しました。」
「ですが王都は魔法に対抗するものを持ち合わせております。魔法耐性です。王宮に肩書持ちの魔導士がいて、魔法耐性を兵士にかけ仕掛けてきました。魔法しか使えない魔人族は格好の的になるでしょうね。」
「それは問題ないかと・・・少し待っててくださいね・・・。」
◈スキル『創成生造』 付与魔法「魔法耐性無効化」作成
◈作成に成功しました
「よし、私が魔人国一帯に付与魔法で魔法耐性の無効化を施しますのでそこは大丈夫かと。」
「そんなことが!?いや、灯生様ならできるのか・・・。」
「王国の脅威は勇者だけではないのです。6人の肩書持ちも参戦してくるでしょう。彼らは王国の守りの剣であり盾ですから。」
「それはどんな人たちなんですか?」
「剣聖コーネリア、瞬光ギリアン、双乱モロント、巌壁ドーガリオン、花弓ヘルファン、魔導士ロッシーニ、この6人です。武器は剣、槍、双剣、盾、弓、魔法ですね。かなりの実力者たちです。」
「その魔導士ロッシーニは人間族なのですか?」
「はい、人間族にして初めて魔法を取得した人間です。かつてはサリヴァン魔術学校にもいたとか。」
「なるほど・・・まぁその6人は置いといて。」
「えぇ!?置いておくんですかー!?」
「なんか名前の感じからしてあんまり強くなさそうなので・・・。」
「はぁ、流石灯生様ですね・・・。」
「問題はこの戦争がどうやったら終わるかですよ。」
「あぁ確かに。それもそうですね。」
「召喚で出現させた、勇者と魔王をぶっ殺すしたら戦争なくなるんじゃないんですかねー?」
「それはいい考えですね!!」
「いやいや冗談ですよ!勇者も魔王も勝手に召喚されてこの世界に呼び出されているんだから。」
「勇者や魔王がクソ野郎じゃない限り、殺さないですよ。流石に。」
「そ、そうでしたか・・・。まぁ少し様子を見ますか?」
「そうですね。こちらの勇者にはあったりできるんでしょうか?」
「ギルド長に相談してみないと分からないですね。一応話しは通しておきますね。」
「ありがとうございます!あと・・・今日はここに泊まっても??」
「あぁもちろんです!そのつもりでお呼びしたんですから!」
「助かりますー!ありがとうございます!」
俺たちは王都での安全圏を獲得した。