「ひっさしぶり~!よっしー!!」
「会いたかったよ~!」
「あ、うん、久しぶり。」
「えー何その温度差~!」
「一週間ぶりじゃんかよー!」
「それで、できたの?」
「あったり前よー!!俺を誰だと思って、るっ!!」
「元バスケ部エースの高身長のイケメン、宝条 隆ノ介君、でしょ。」
「なんかそう客観視されると照れるなぁ~。」
こいつこんなキャラだったか?
いや、僕が知らないだけか。
「なんかゴールデンウィークで気持ち悪くなったね。」
「そんなこと言うなよ~、俺とよっしーの仲だろ~!」
初めて話してから1か月も経っていないんだが・・・。
それよりも、だ。
「じゃー見せて?」
「ん?何を?」
「絵だよ。描くって言ってたよね?」
「あー油絵ね!ちゃんと描いたし持ってきてるぜー!!」
「流石にここにはないよ。美術室に置かせてもらってる!放課後見せるよ!」
「なんだそのドヤ顔。」
「えー、一週間ぶりの再開だと言うのに、なんか冷たい。入野ー、なんかよっしーが冷たい~!!」
「そんなん、宝条がうざいからでしょー。」
「あ、平岡っちおっはよー!!」
「あ、入野さん!昨日振りだね!おはよー!」
「え、俺との温度差、激しくね?ねぇ激しくね!?」
「てか、昨日振りって??いつの間にそんな淫らな関係にぃ~!?」
「違うよ。バイトを一緒にしてたってことだよ。」
「あーなんかそんなこと言ってたな。初バイトだったんだろ?どうだったー??」
「うん、まぁ、なんとかなった、かな。」
「ちゃんとがんばってたよ〜ん!平岡っち、仕事覚えるの早いんだも-ん!」
「そ、そんなこと、ないよ。」
「にひひひ〜!照れちゃって~!」
「なーんか仲良くなってね?ゴールデンウィーク前より。」
「そ、そんなこと!?まぁ、あるかも。」
なんで入野さんも照れるのー!!
か、顔、合わせらんない!?
宝条が変なこと言うから!!
一日中、僕と入野さんは少しよそよそしかった。
ーそして放課後の美術室。
「あれ?入野も来たのかー!」
「そんなに俺の絵が気になるのか!!」
「いや、平岡っちの付き添いで。」
「そこは嘘でもいいから気になって来たーって言うとこだろ!!」
「うん。気になって来たー。」
「全然感情こもってない・・・。」
「はやく見せてよ宝条君!!」
「しゃーねぇーな!このサイズ描くのは初めてだったからあんまり期待すんなよー。」
「よいしょっと!」
被せた布がなくなっていき、絵が姿を現す。
なんて言葉に表現したらいいか分からなかった。
こんなにキラキラしていて躍動感のある絵は初めて見た。
あのノートに描いてあったサイバーパンクの絵がこんなにも変わるものなのかと、僕はそう思った。
入野さんも見入っていて、その間は無言の空間だった。
「どうだ??変かな?」
「宝条、お前こんな絵描けるんだな!?」
「お前美大行けよ!?これまじですげー!!」
「僕もそう思うよ。期待以上だ!」
「そうか?そんなにすごいか!?」
「うん、これは自信持った方がいいよ。」
「もっと見たいからもっと描いて!!」
「えー。これ描くのほぼ寝ないで描いたんだけど・・・。」
「それでも描いて!!」
「殺す気か!?」
「そういえば題名ってあるの?」
「あー、一応考えてはいるけど・・・。」
「『アレキサンドライトシティ』って名付けた!!」
「宝石のように輝く町って意味だ!」
「まぁ名前はちょっとダサいかも。」
「えー。そうなこと言うー?」
ほんとにすごいと思った。
こんな絵が描ける宝条君は天才なんじゃないかって。
一方で、僕には何もないという黒い感情も湧き出てきた。
それを内から出さないように押し殺す外側の僕。
もう夕日が沈んでゆく。
美術室の絵具の臭いが、帰宅しても頭の中に残っている。