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15 アレキサンドライトシティ


「ひっさしぶり~!よっしー!!」

「会いたかったよ~!」


「あ、うん、久しぶり。」


「えー何その温度差~!」

「一週間ぶりじゃんかよー!」


「それで、できたの?」


「あったり前よー!!俺を誰だと思って、るっ!!」


「元バスケ部エースの高身長のイケメン、宝条 隆ノ介君、でしょ。」


「なんかそう客観視されると照れるなぁ~。」


こいつこんなキャラだったか?

いや、僕が知らないだけか。


「なんかゴールデンウィークで気持ち悪くなったね。」


「そんなこと言うなよ~、俺とよっしーの仲だろ~!」


初めて話してから1か月も経っていないんだが・・・。

それよりも、だ。


「じゃー見せて?」


「ん?何を?」


「絵だよ。描くって言ってたよね?」


「あー油絵ね!ちゃんと描いたし持ってきてるぜー!!」

「流石にここにはないよ。美術室に置かせてもらってる!放課後見せるよ!」


「なんだそのドヤ顔。」


「えー、一週間ぶりの再開だと言うのに、なんか冷たい。入野ー、なんかよっしーが冷たい~!!」


「そんなん、宝条がうざいからでしょー。」

「あ、平岡っちおっはよー!!」


「あ、入野さん!昨日振りだね!おはよー!」


「え、俺との温度差、激しくね?ねぇ激しくね!?」

「てか、昨日振りって??いつの間にそんな淫らな関係にぃ~!?」


「違うよ。バイトを一緒にしてたってことだよ。」


「あーなんかそんなこと言ってたな。初バイトだったんだろ?どうだったー??」


「うん、まぁ、なんとかなった、かな。」


「ちゃんとがんばってたよ〜ん!平岡っち、仕事覚えるの早いんだも-ん!」


「そ、そんなこと、ないよ。」


「にひひひ〜!照れちゃって~!」


「なーんか仲良くなってね?ゴールデンウィーク前より。」


「そ、そんなこと!?まぁ、あるかも。」


なんで入野さんも照れるのー!!

か、顔、合わせらんない!?

宝条が変なこと言うから!!


一日中、僕と入野さんは少しよそよそしかった。



ーそして放課後の美術室。



「あれ?入野も来たのかー!」

「そんなに俺の絵が気になるのか!!」


「いや、平岡っちの付き添いで。」


「そこは嘘でもいいから気になって来たーって言うとこだろ!!」


「うん。気になって来たー。」


「全然感情こもってない・・・。」


「はやく見せてよ宝条君!!」


「しゃーねぇーな!このサイズ描くのは初めてだったからあんまり期待すんなよー。」

「よいしょっと!」


被せた布がなくなっていき、絵が姿を現す。


なんて言葉に表現したらいいか分からなかった。


こんなにキラキラしていて躍動感のある絵は初めて見た。

あのノートに描いてあったサイバーパンクの絵がこんなにも変わるものなのかと、僕はそう思った。


入野さんも見入っていて、その間は無言の空間だった。



「どうだ??変かな?」


「宝条、お前こんな絵描けるんだな!?」

「お前美大行けよ!?これまじですげー!!」


「僕もそう思うよ。期待以上だ!」


「そうか?そんなにすごいか!?」


「うん、これは自信持った方がいいよ。」

「もっと見たいからもっと描いて!!」


「えー。これ描くのほぼ寝ないで描いたんだけど・・・。」


「それでも描いて!!」


「殺す気か!?」


「そういえば題名ってあるの?」


「あー、一応考えてはいるけど・・・。」

「『アレキサンドライトシティ』って名付けた!!」

「宝石のように輝く町って意味だ!」


「まぁ名前はちょっとダサいかも。」


「えー。そうなこと言うー?」



ほんとにすごいと思った。

こんな絵が描ける宝条君は天才なんじゃないかって。



一方で、僕には何もないという黒い感情も湧き出てきた。

それを内から出さないように押し殺す外側の僕。


もう夕日が沈んでゆく。

美術室の絵具の臭いが、帰宅しても頭の中に残っている。


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