今年もやってきた、この行事。
「よっしー!球技大会だぜぇー!!がんばろうな!!」
「いやぁ・・・僕はちょっと・・・お腹痛いかなぁ。いや、ちょっと熱出てきたぁ、風邪かもぉ。」
「そんな露骨に嫌がるなよ~!」
「もっとも嫌なイベントランキング第3位、球技大会。」
「ボールなんか投げて何が楽しいんだ、僕は教室で本を読んで応援してるよ~。」
「でた!嫌なランキング!!ねぇね!1位は~!!」
「入野さん!・・・言わないよー。」
「なーに言ってるんだよっしー。こんなに天気もいいのに外出ないなんてもったいない!!」
さすが陽キャ。元バスケ部エース高身長イケメン。
「っていうかなんだそのランキング?1位何なんだよ~!気になるじゃねぇかー!!」
「言わないよー。はぁ憂鬱だぁ。」
「俺がフォローするからさ!一緒にがんばろーぜ!」
「んー。まぁやるだけやるけど文句言うなよ。球技全般ほんとに苦手だから。」
「任せとけ!!」
「そういえば男子は何するのー?」
「バスケだ!」
バスケだ!キラーン!じゃないんだよ。これだから陽キャは。
「女子は何なんだー?」
「バレーだけどー。バスケだったら外出ないじゃん。いいよねー男子は。」
それもそうだ。
「じゃぁよっしー!終わったら女子のバレー、見に行こうぜー!」
い、入野さんのバレーしてる姿を見に行く!?
な、何を考えてるんだ僕は!?
ただバレーも見に行くだけ、そう、見に行くだけ。
「う、うん!応援しに行くよ!」
「ありがと!それじゃ、あたしも平岡っちのバスケ見に行こうかなー!」
「え!?それはちょっと・・・見せられるものじゃないよ・・・。」
「あたしも見せるんだから平岡っちもがんばってるとこ見せてよ~!」
「う、うん。わかった・・・。」
ー男子バスケ 3組 vs 1組
ピー!!
笛が鳴った。と同時にボールがこちら側へ。
僕はチビだからゴールには届かない。
ドリブルくらいはできる、たぶん。
「よっしー!」
パスか!宝条め!
掴んだ!掴めた!!
ド、ドリブルして相手の陣地まで!
あれ、守りが固い。
隙間を掻い潜って!
とりあえず誰かにパスしよ!!
「宝条!」
「おう!ナイス!」
行け!宝条!!
おー!入った!さすが高身長!!
「よっしー!意外とやるじゃん!」
「パスするなんてもうやめてよー。」
グー!ニコ!じゃないんだよ。
あぁ焦った。さっきは運よく出来たけど、この後も上手くできるだろうか。
ふと目に入った。入野さんの笑顔!
あれ、いつから見てたんだろ。
グー!ってしてくれてる。
何を思ったか、僕も同じようにグーで返した。
あの笑顔を見れただけでもよかったかもしれない。
「平岡ー!!」
頭にボールが当たった!
浮かれていて試合が始まったことに気づいていなかった。
僕としたことが。
「平岡ー!平岡ー!」「よっしー!!」「平岡っちー!!」
「宝条、保健室だ!はこん・・・・・・」
意識が遠のいてゆく。
あぁダサいな、僕は。