「ん。ここは・・・。」
目が覚めた。記憶が混濁している。
あぁそうか、ボールにぶつかって、倒れて、それから・・・。
「平岡っち!大丈夫!?」
「よっしー!目が覚めたみたいだ。保健室の先生呼んでくる!」
「あれ、僕は・・・ここは。」
「平岡っち!平岡っち!」
あぁ保健室に運ばれたのか。あぁなんて情けない。
ボールが当たったくらいで気絶して倒れるなんて。
「先生、こっちです!」
「平岡君!記憶はある?ボールが頭に当たったんだけど、痛くない?」
「あぁ、はい、大丈夫です。す、すみません。」
「うん、よかった。念のため、明日にでも病院に行ってね。何かあったら大変だから。」
「はい。ありがとうございます。」
「入野さん、宝条君、ありがとう。もう大丈夫だから・・・。」
「よ、よかったぁ。ほんとに頭痛いとこない??」
「ちょっと痛いけど、たんこぶできたくらい、かな・・・。」
「びっくりしたぜ!頭ボールに打たれて倒れたんだぜ!肝が冷えたよ。」
「うん、覚えてるよ。大丈夫だから、2人ともありがと。」
入野さんも、宝条君も心配そうな顔から少し安堵したようだ。
手があったかいな。あれ?
手握られてる?これは入野さんの手!?
えーーーー!?どういうこと!?
なんで手を握ってるの!?心配させてしまったか・・・。
入野さんの手の暖かさがとても安らぐ。
「入野さん、ありがと。手握っててくれたんだね。」
「あっ、ごめん、手握っちゃってた。ほんとに心配したんだからね!!」
「それにあの時あたしのこと見ててボールに打たれたんでしょ、ちょっとは責任感じるよ。」
「いや、あれは僕も悪かったんだよ。入野さんが見ててくれたから、嬉しくてつい・・・。」
「あの、俺もいるんだけど、イチャつくのは2人の時にしてくんない?」
「宝条!イチャついてなんかないしー!頭勝ち割るよ!」
「えー、怖すぎ~。」
「それじゃあたしバレーあるからもう行くね!平岡っち、もう少し休んでなよ!」
僕ももう大丈夫だから、と言おうとしたけど少し顔を赤らめて走って行ってしまった。
「よっしー、もうちょっと休んどくか?」
「いや、大丈夫だよ。入野さんのバレー見に行こ!」
「分かった!何かあったら俺に言えよ!」
「うん!ありがと!!」
僕と宝条君は女子がバレーをしている運動場へ向かった。
それにしても外は暑い。
あ!?入野さんだ!あぁきれいだ・・・。
ずっと入野さんから目が離せない。
いつもの入野さんとは違う、真剣な入野さん。
バレーしている入野さん。さっきまで手を握ってくれた入野さん。
今まで嫌いだった球技大会。
この光景を見れただけでもよかった気がする。
結果は3組女子の勝ちだった。
そしてどんどん勝ち進み、決勝も勝ってしまったのだ。
すごい!!入野さん!!じゃなくてみんな!
「入野さん!おめでとう!」
「うん!ありがと!がんばれたのは平岡っちがずっと見てくれてたからだよ。」
ひぇ!?そんな耳元で言われても・・・。
「そういえば男子バスケはどうだったの?」
「あー、あれは1組の勝ちだったよ。別によっしーのせいじゃないからな!!」
「うん!まぁバスケも楽しかったよ!ありがと!宝条君!!」
「おうよ!またやろーぜ!バスケ!」
「それは遠慮しとくよ。」
「えー。」
いろいろあったけど今年の球技大会は終わった。
運動はやはり苦手だ。苦手だけど・・・今日はとても楽しかった!
ランキングからは外しておこうかな!