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24 雨上がり


ー下駄箱にて。


「あ~めちゃくちゃ濡れちまったよ~!」


「あ、宝条君。」


「お!よっしーじゃねぇかぁ!おはよー!今日は遅いんだな!」


「あぁ、おはよう。この天気だからね。久々に遅くなっちゃった。」


「そうだよなー。降るって昨日テレビで見たけどこんなに朝から降るとは思わなかった~。」


「お、ちーっす、宝条。あ!平岡っちじゃん!こんな時間に珍しいね!」


「あ、入野さん!おはよー!雨だからねー。」


走ってきたのか。入野さん、少し見えている〜!?


「い、入野さん、そ、その、ジャージに着替えたら?」


「えー、なんでー?」


「その、服、濡れてて、風邪ひくかなと・・・。」


「あ、入野、ちょっとブラ見えてんぞー。」


なんてことを宝条君!?僕が遠回しに言ったのに!?


「うっわ、宝条サイテー。ってかこっち見んなし。くたばれ。」


「なんでだよ〜。せっかく言ってあげたのに~。」


まぁ、そう言われるよな。

入野さんが近づいてきて耳元で。

「気遣ってくれたんだね。ありがと!着替えてくるね!」


と言って入野さんはささーっと去って行った。

と、吐息がぁ〜!?雨の寒気が一気に吹っ飛んだ。頭の中でさっきの言葉がループする。


「よっしー。よっしー、大丈夫かぁ?顔まっ赤だぞー。」


「宝条君、サイテー。」


「よっしーまでー、冷たい~!!」



ーお昼休み。


「あー今日は屋上行けないね。どこで食べよっかー?」


「教室はー?」


「んー。いやー。あこは?平岡っちと最初の頃いつも食べてたとこ!」


「そ、そこはダメ!!」


とっさに言ってしまった。一番最初に入野さんとお弁当を食べたところだからか。

何か分からないが無性に嫌な気がした。


「いいところ知っているから、着いてきて。」



ー温室。


「へぇ~。こんなところあったんだ~!!」


「植物がいっぱいだな!温室ってやつか!」


「うん。今はあんまり使われてないみたいだけど。園芸部がないから。」


「そっかー!じゃーここで食べよーぜー!」


「でもなんか手入れされてるね・・・なんでだろ。」


「あーそれは、古文の菊乃井先生が趣味で手入れしてるんだよ。」


「えー!あの美人で有名な菊乃井きくのい先生かぁ〜!いいなぁ~。」


「へへーん、平岡っち、そんなこと何で知ってんの~?」


「た、たまたまだよ!入学した頃、学校で迷っちゃって。ここに辿り着いたんだけど。」


「それで先生にあった、と~。」


「まぁそんなとこ。学校に温室なんて珍しいから案内してもらったんだ。あと教室も。」


「ほんとに~、それだけかなぁ~?」


すごい目で入野さんが見てくる。なんだこの視線は!?


「それだけ!早く食べよー。昼休み終わっちゃうよー。」



ー放課後。


帰るころには雨はすっかり止んでいた。


「平岡っちー!久々に一緒に帰ろーよー!」


「うん!いいよー!」


「俺は?俺は?」


「うっさい、着いてくんな!どっか行け!」


「え~。ほんとに朝から冷たい〜。よっしーは~?」


「まぁ入野さん、許してあげなよ。それよりどっか行くの?」


「よっしーは優しいなぁ~。」


「あーうん!とっておきの場所!」


「とっておきの場所??」


言われるがまま着いていくと・・・。



ー植物園。


「じゃじゃーん!植物園でーす!!」


「入野にしてはかわいらしいとこじゃねーかー!!」


「うっさい、帰ってもいいぞー。」


「冗談だよ~。」


「でも、なんで植物園?」


「今ならあれが見られると思って!」


「あれー?」


と言われて着いていくと・・・。


「なるほど!そういうことか!!」


「うん!これを平岡っちに見せたかったの!」


「紫陽花がこんなに!!しかもいろんな色があるね!」


「あたしもこんなに種類があると思わなかったよ~!」


「見て回ろっか!」


3人で見て回り、いろんな色の紫陽花を堪能した。

この時期ならではの風景だ。友達3人とこうやって放課後を過ごすのも悪くはない。


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