今ではすっかり聞きなれた車の音が駐車場で止まる。
夜の7時近くになってつぐねぇ達は帰ってきた。
彼はすごくうれしそうな笑顔を浮かべており、話し合いがうまくいったことが伺えた。
しかし、何を驚いたかというと、なんと別れ間際に彼からつぐねぇを抱きしめてなにやら囁いていたのだ。
多分、浮かれていたのと、誰も見てないという気持ちがそうさせたのだろう。
しかしっ……。
甘いのである。
お店の方からは丸見えなのだ。
それでこの前のつぐねぇの抱きつき事件をチェックすることが出来たのだから。
いやいや、今はそれどころじゃない。
彼からつぐねぇを抱きしめ、それをつぐねぇが受け入れていると言う事だ。
そして、その表情……。
うーっ、我が姉ではあるが、まさに女の顔だ。
くーっ、壁を殴りたい衝動に駆られる。
くそっ、なんかすごく腹が立ってしょうがない。
なんか大切なものを取られてしまったかのような感覚だ。
でも、それはそれで置いといて。
どうやら、うまくいった帰りに何かあったらしい。
まぁ、何かというか、この場合、きちんとした告白とお付き合いの申し込みしかないわけで…。
それはつぐねぇが本当に欲しかったもので、やっとやっとつぐねぇは手に入れることが出来たんだという安心と本当によかったという気持ちが湧き上がってくる。
もっとも、なんかムカムカしてくるのも一緒に湧き上がってくるんですけどね。
ともかく、めでたいめでたいということで自分の心に折り合いをつける。
そうこうしているうちにつぐねぇがドアに手をかけている。
お店に入るみたいだ。
いかん、いかん。
平常心、平常心。
私は何も見てませんと。
「あっ、おかえりつぐねぇ。うまくいった?」
まぁ、つぐねぇの今の様子を見たらうまくいったというのはわかりきっているけどさ。
一応、聞いておこう。
「うん。うまくいったわよぉ。二人ともいい人だったし。それに……」
そこまで言った後、ニヘラといった擬音がぴったりな感じてつぐねぇの表情が崩れる。
まさに幸せに酔っているといった感じと言っていいだろう。
それを望んでいたはずなんだけどなぁ。
心の中がモヤモヤしてる。
でも顔に出すわけにはいかず、「それはよかったじゃない」と言って誤魔化す。
「さっさとお風呂に入って今日は休んだら?」
「うん。そうする。ごめんお店お願いね~♪」
そう返事を返しつつつぐねぇは二階に上がっていった。
ふう。
明日から大丈夫かなぁ。
色ボケみたいにならなきゃいいけど……。