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第11話 ボス部屋を罠で模様替えした

『敵を倒しました。経験値を獲得します。経験値が一定に達しました。レベルが10アップします。

 ダンジョンボスとしての仕事を完了しました。報酬としてスキルを獲得できます。』  


 ──頭の中に声が響く。  


 1分ほど続いた爆発音と火炎の嵐が、ようやく収まった。  


「……上手くいったみたいだな。」  


 俺の罠が完璧に機能した。  



 あの時、俺が獲得したスキルは──  


【術式付与】 


 このスキルは、術式を武器や物体に刻み込み、あらかじめ必要量の魔力を流しておくことで、魔法の才能がなくても少しの魔力を流すだけで魔法を発動できるというものだ。  


 ──だが、俺はこのスキルをさらに悪用した。  



 俺は、術式を微細な魔力でも発動するように調整し、扉の周囲に付与しまくった。  


 つまり、この部屋に入った相手の体に流れる微細な魔力を感知し、即座に魔法が発動する、"地雷"のような罠を作り上げたのだ。 そうすれば悩みだった発動時間の遅さと魔法の確実性を克服することができる。

 結果、相手は何が起こったのか分からないまま、爆炎に包まれて死んだのだろう。  


「ハハハ……これが、俺の知恵の力だ!!」  


 この戦術を試したことで、【炎初級魔法Lv3】が【炎初級魔法Lv5】に、【魔力操作Lv6】が【魔力操作Lv7】に、上がった。


 さらに、一度発動しても魔力を補充すれば半永久的に罠として機能する。  


 「我ながら完璧なアイデアを思いついてしまった。」  


 あぁぁー、俺のダンジョンボスとしての溢れ出る才能が恐ろしい。  



 そして今回、炎初級魔法がLv5に上がったことで、新しい魔法を習得した。  


 1. 炎牢 

    - 相手を炎で拘束し、燃え尽きるまで逃がさない。いわば、"火炎の檻"。  


 2. 噴炎  

    - 足元から超高温の炎を噴き出し、相手を焼き尽くす魔法で範囲攻撃としても優秀。  


 ──俺は、この二つの魔法を組み合わせ、合計20もの術式を扉に付与していた。


 炎魔法を選んだ理由は単純だ。  


 たとえ相手の防御が強くて倒せなくても、空間の酸素を燃やし尽くせば、酸欠状態に追い込める。  


 つまり、この罠は──"生存不可能"な殺しの空間を作り出していたのだ。




「よし、術式に魔力を補充しながら、ステータスを確認するか。」  



 ――――――――――――――――――――


 『ステータス』

 種族: ゴブリンキング Lv23

 職業:  迷宮守護者ダンジョンボス  


 専用スキル: 小鬼王剣術 Lv5 

        眷属支配  

 汎用スキル: 魔力操作 Lv7  

        炎初級魔法 Lv6  

        雷初級魔法 Lv3  

        風初級魔法 Lv1  

        土初級魔法 Lv1  

        水初級魔法 Lv1  

        術式付与  

        万能翻訳 《バベル》 


――――――――――――――――――――  


「……そういえば、【小鬼王剣術】と【雷初級魔法】もレベルが2ずつ上がってるな。」  


 これは、炎魔法ばかりに頼りすぎないように、隙間時間で鍛錬を重ねた成果だ。  


 ──このボス部屋の仕様のおかげで、休憩なしで鍛錬を続けられる。 

 外では、こんな廃人じみた修行はできないだろう。  


「……そろそろ、このボス部屋を出たいとは思っているが……。」  


 出るからには、できる限りスキルの熟練度を上げておくべきだろう。




「それにしても、今回の相手は2人だけだったのに、レベルが一気に10も上がった。相当強い相手だったんだろうな……。」 


 もし、正面から戦わなければならなかったとしたら──ゾッとする。  


「まぁ、終わったたことを考えても仕方がない。勝てたのだから次の戦いに向けて、切り替えよう。」  




「さて、新しくスキルを獲得できるわけだが……何を選ぶか。」  


 即戦力となるスキルはすでに揃っている。  


 だからこそ、長期的に戦力を底上げできるスキルを選ぶべきだろう。  


 そして、何より重要なのは──  


「このボス部屋を出た後のことを考えることだ。」


 この部屋を出れば、魔力と体力の自動回復の恩恵がなくなる。  

 つまり、今のような無制限の鍛錬はできなくなる。  


「……ってことは、回復系のスキルを取るのが正解か。」  


 だが、魔力回復速度を加速させるスキルを選ぶと、この部屋にいる間は魔力が無限に回復するため、熟練度を上げるのが難しい。  


 ──なら、違う形で魔力の問題を解決すべきだ。  


「……よし、決めた。」  


 選ぶのは、魔力そのものの総量を増やすスキル。  


『【魔力増強Lv1】を獲得しました。』  


 これなら、ボス部屋を出た後も、より多くの魔力を持って戦える。  




「魔力増強Lv1を獲得した……さて、次の成長計画を考えるか。」


 このスキルにより、俺の魔力量はより増えるだろう。ただし、増えた魔力を有効に活用できなければ意味がない。  


「……優先するべきは、魔力の制御だな。」 


 魔力量が増えても、それを適切に扱えなければ、ただの魔力タンクでしかない。  

 現に、【魔力操作】のレベルは7だが、まだ無駄な魔力消費が多く、魔力を練り上げるスピードも遅い。  


 だから、魔力制御を極めることで、より少ない魔力消費と時間で強力な魔法を使えるようにする。  


「まずは、魔力操作をLv10まで上げるのを目標にするか……。」  


 加えて、【術式付与】もより複雑な術式を扱えるようにする必要がある。

 今は初級魔法を付与することしかできないが、中級・上級魔法を刻み込めるようになれば、戦術の幅が大きく広がる。それに戦闘でも使える魔法が増えるだろう。  


 ──ボス部屋にいる間に、やれることはすべてやっておく。  


 そう決めた瞬間、  



 ──ゴゴゴゴ……ッ!!  


 部屋全体がわずかに揺れた。  


「……ん?」  


 ダンジョンが揺れることなど今までなかった。  


 一瞬、違和感に身構える。  


 ──何かが変わろうとしている。  


 そして、次の瞬間。  


『ダンジョンの成長を確認。今ある階層が新しくなり、加えて新たな階層が形成されます。』  


「……ダンジョンが、成長……?」  



  ダンジョンが成長するということは、俺のボス部屋にも何かしらの変化が起こる可能性がある。


 それが俺に取ってプラスに働くかマイナスに働くかまだ分からないがそれに備える必要があるな。



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