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第12話 ボス部屋がバージョンアップしました

『ダンジョンの成長を確認しました。今ある階層が新しくなり、新たな階層が追加されます。』


 ──その通知とともに、小さな揺れが起こり、それが徐々に激しさを増していった。  


 ゴゴゴゴゴ……ッ!!! 


 壁にひびが入り、天井から砂塵が舞い落ちる。  

 まるでこの部屋そのものが、生まれ変わろうとしているかのようだ。  


「……これは、本格的に変わりそうだな。」  


 俺は思わず息を呑んだ。  


 そして次の瞬間、  


 ──ビキビキビキッ!!  


 空間に大きな亀裂が走り、まるで空間そのものが砕けるかのように、部屋全体が歪み出す。


 その亀裂から、今まで感じたことのない、底知れぬ黒いエネルギーが溢れ出し、ボス部屋全体を包み込んだ。  


『ボス部屋の格が向上しました。ボス部屋に新たな特典が追加されます。』


 ──そして、その瞬間。  


 俺の頭に、新たな情報がどっと流れ込んできた。  


《ボス部屋の進化》 


 ① ボス部屋の拡張 

 部屋の広さが3倍に拡大され天井が高くなり、巨大な石柱がそびえ立っている。前からあった椅子はさらに豪華になりまさしく王が座るに値する椅子になっていた。以前の扉と椅子だけの殺風景な部屋とは違い、まるで王の間のような荘厳な空間になった。 


「……これは、もはや"ボス部屋"じゃなくて"玉座の間"じゃねぇか。」  


 威厳のある空間。冒険者たちは、ここに足を踏み入れた瞬間から威圧されるだろう。


 さらにボス部屋に新たな特典が付与された。  


 ② ボス部屋の特典 

【眷属召喚】  

 - ゴブリン・ジェネラルを最大3体まで召喚可能。

 - 通常のゴブリンとは違い、高度な戦闘技を持ち、独自の武器を装備している。

    -死亡した時の再召喚不可  


【守護部屋の主】 

 - ボス部屋内の環境を自由に変化させることが可能。罠を配置したり、霧を発生させたり、地形そのものを操作することができる。体育館3個分の広さを持つこの部屋を、まるごと"戦場"に変える事もできる。 


【成長促進】 

 - ダンジョンボスが得られる経験値・熟練度が2倍になる。今回得た特典の中で最もシンプルでありながら、最も強力な特典となっている。 


「……これはすごいなあ。」 望み通りの特典におもわず感嘆の声が漏れる。


 これで俺は、さらなる速さで強くなれる。


 最後はダンジョンボス専用の装備が宝物庫に追加されていた。


 ③ 専用装備の出現  

【小鬼王の戦鎧】

 - 戦国時代の甲冑のような形状。  

 - 肩や背中には大小の棘のような突起がついており、見るだけで威圧感を与える。 

 - 防御力上昇 + 重量操作の加護付き。



 重量操作の加護のおかげだろうか。鎧をつけても全く重さを感じることがなく、むしろ以前より体が軽くなったように感じる。この鎧を身にまとえば、より"ボス"らしい風格が出るだろう。  


【小鬼王の小刀】 

 - 人の腕ほどの長さの小刀。非常に軽く、取り回しが良い。  

 - 攻撃速度上昇 + 術式定着の加護付き。  



 これまで大剣しかなく小回りの利く武器がなかったから超近距離での戦いや奇襲をかける時に重宝する。また、術式定着の加護があるので魔法の術式を付与すればさらに強力な武器となるだろう。


【小鬼王の大太刀】

 - 以前の【小鬼王の大剣】が進化した武器。 

 - 刃が太く、重々しかった大剣が、スラリとした刀身へと変化。  

 - 攻撃力大幅上昇 + 重量操作の加護付き。


 俺は大太刀を手に取り、軽く振ってみる。  


「……おお。」  


 以前よりも遥かに洗練された斬撃の感覚。 威力は落ちるどころか、むしろ増している。これなら防具があってもその上から斬り裂けそうである。  



 ──俺は、新たな力を手にした。  


 たが、まだその力を十分に引き出すことができてないだろう。ここからさらに鍛え上げてどんな相手が来ようとも叩き潰せるようにならないといけない。


 こんなところで死ぬわけにはいかないのだから。





 ――――――――――――――――――――





「ルミナとアイザックが戻ってないって?」

「はい、数日前に出発したのですがそれ以降消息不明です。」

「あのルミナとアイザックだよ?九大迷宮インヘェリア・ダンジョンに行ったわけではあるまいし、新しくできたダンジョンであの二人がやられるとは思えない」

「はい。ですが……ルミナさんはまだしもアイザックさんが何日も報告をしないとは思えません。」

「そうか、分かった。では至急、本部に通達してくれ、大遠征エピゴノイを行う。」

「まさか……A級冒険者にまで声をかけるのですか?出費が幾らになるか分かりません。」

「仕方ない、あのダンジョンにはそれだけの危険度があると僕が判断した。」

「了解しました。それでは、そのように手配します。」

「あぁと、もう一つ。今この街に滞在しているかの御仁にも声をかけてほしい。」

「あの方ですか?!あの方が動かれるとは思えません」

「大丈夫、少し貸しがあるんだ頼むよ」

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