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第2話 恐竜退治

「ベル、援護は任せたで。」

そう言うと、金髪のお兄さんは、足音を立て、人混みの隙間を縫う様にして、恐竜に向かって走って行った。

「死なないで下さいよねぇ。」

そう言うと、ベルさんは、耳につけた鈴を鳴らした。


   チリーン


すると、周りでパニックの様になっていた人々が急に静かになり、スッと恐竜から離れる様に動いていった。

「えっ、凄っ」

驚きで声が出ない。

「これが私の力、『鈴の音』音を聞いた物や人を短い時間だけだけど、操る事が出来るの。」

ベルの能力、鈴の音 自分が鳴らした鈴の音を聞かせた相手を少しの間(約30秒程)、操る事が出来る。動く物であれば、問題は無い。

そんな事を言っている間にも、恐竜は暴れ、街を破壊して行く。

「そして、炎さんの力は…」

ビルが崩れ、2人に破片が降り掛かってくる。

「危っぶな。死ぬとこやったで。」

炎さんが四肢に炎を纏って、空を歩く。そして、2人に掛かりそうだった瓦礫を弾き飛ばす。

「後輩に怖い思いさせた代償は、デカいで。吹っ飛べや、  


        

炎が弾ける様に跳び、恐竜を吹き飛ばす。

「よっし、時間も間に合ったな。二人とも、帰るで。」炎は炎の勢いを少しずつ弱め、地面に降り立つ。

炎の能力、炎 見たら分かるが、炎を操る事が出来る。また、工夫次第で、物体として持つことも出来る。

「それよりも、これどうするんですか?」

佳は目の前の物体を指さす。そこには、黒焦げになった恐竜があった。

「うわっ、しまった。まぁ、アイツなら何とかしてくれるだろ。」

面倒くさそうな顔をして、頭を掻く。

「後始末のプロがいるんですね。」

白い服の掃除屋を思い浮かべる。

炎さんは手をヒラヒラと横に振って答える。

「あ、そりゃ普通はそう思うか。まぁ見てのお楽しみや。」

そう言うと、大きな扉が現れた。




「炎、ベル、只今メシと共に戻りましたぁ。」

「お疲れ」「ごくろーさん」「今度は何をやらかしたんだ」

様々な声が聞こえる。みんな2人の帰還を喜んでいるのだ。 多分

「なんですかぁ?これ。」

エプロンをつけたメガネの男の人が質問する。

「いいやろ、恐竜の新鮮な肉や。」

無理やり3人で扉から押し込んだ恐竜がそこにはあった。

「黒焦げの肉を新鮮とは言いませんよ。」

炎に突っ込む。

「せやなあ、アッハッハ。」

どうやらこの2人は仲が良いらしい。

「あのぅ、炎さん、この人は?」

おずおずと手を上げ、炎に質問する。

「あぁ、紹介するで、こっちは新入りの…何やったっけ。「佳です。」せや、ケイや。」

炎さんが、僕を近くに引き寄せて答える。

「こんにちは、ケイさん。僕は料理担当のナベです。よろしくお願いします。」

そう言うと、ナベさんは、僕の右手を取り握手してきた。

「所でケイ君は、料理ってするの?」

「まぁ、そんなに上手くないですけど。」

本当である。卵焼きくらいしか作りきれない。

「マジで、じゃあ今度料理一緒に作ろうよ。」

突然目を輝かせながら誘って来る。

すると、ベルさんは、ナベさんの首根っこを掴んで、子猫の様に持ち上げる。

「コラ、そんなに急に誘わないの。ごめんね、この子ものすんごい料理オタクなんだよね。」

「あ、いえいえ、僕も料理出来るようになりたいので。」

本当の姉弟みたいだなぁ。この2人は。

「ほら、ナベ、今から料理すんでしょ。」

ベルさんがナベさんを床に放り投げる。

「そうだった そうだった。さて、色々作ってみますか。」

「ジャ、俺も手伝うで。」

ぐへぐへと言いながら、目をらんらんとさせ、竜を丸ごと引き摺るナベさんに、炎さんがついて行く。

所で、ベルさんに気になった事を聞いてみる。

「そういえば、ベルさんとか、炎さん、ナベさんもですけど、本名なんですか?」

少し悩む様な仕草をして、ベルさんが答える。

「う〜ん、実は、この組織って、実はある理由で基本的には、コードネームで動くんだよねぇ。」

「その理由って?」

「この組織が、世界の均衡を保つための組織だって話はしたっけ?」

佳は、上の方をぼんやりとさっきまでの事を思い出す。

「何かヒーローみたいなものと言ってたのは聞きましたけど…」

「そうそう、実際そんなもんなんだけど、まず、世の中には、色々な種類の世界があって、」

そこら辺にあった紙にいくつかの丸を書く。

「そこには、ギャグの世界とか、ラブコメの世界とかがあるんだよね。」

丸の中に、可愛いキャラクターを書く。

「でもさ、ミステリーの世界に、急にゾンビが大量発生したら、どうなると思う?」

佳の方を向いて、ベルさんが問いかける。

「そりゃ、世界観が崩れちゃうじゃないですか。」

ベルさんが指を鳴らす。

「そう!そして、それを守るのが、私達の役目って訳。でも、あくまで私達は、その世界の中心たる、メインキャラにバレない様に事を進めなきゃならないの。」

佳は答える。

「そこで、偽名を使ってるってことですか。」

「そうそう、しっかし君、ほんとに頭良いな。羨ましいくらいだよ。所で、料理オタク達は大丈夫かな。」

「出来ましたよ〜。ドラゴンの卵のスクランブルエッグと、シチューです。」

2人がお盆に皿を乗せて、戻って来た。

そこには、さっきまで街を破壊しまくっていた竜で作ったとは到底思えない、美味しそうな料理が並んでいた。「「「いただきます。」」」

みんなの挨拶の声が揃う。

「そういえば、佳さんに、設備の案内ってしないでいいんですか。」

「せやな。ケイ、食べ終わったら、ここの案内したるわ。」

炎さんが、料理にがっつきながら言う。

「はひ、ははひはひた。」

佳は、余りの美味しさに、ほっぺたが伸びて、ハムスターみたいなことになっている。

「アハハハ、詰まらせないで下さいね。」

モブ達は、今日も元気である。

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