「影、朱雀って出せるか?」
炎さんが、影さんに質問する。
「ああ、まあ出せないことはないですけど。」
もはやどうでも良さそうに、影さんが答える。
「そういえば、影さんの能力ってなんですか?」
影の能力について聞いていなかった佳が質問する。
「ああ、僕の能力は、陰陽師で、式神を召喚したり出来るんだけど… そうか、そういうことか、なるほど。」影さんが、何かに気付いた様に席を立つ。
「そういうことですか。」
「そういうことだ。」
二人は顔を合わせて、ニヤリと笑う。
「「みんな、僕(俺)達の作戦を聞いて欲しい。」」
2時間後
僕達はそれぞれの持ち場についていた。
「こちら、佳。準備出来ました。」
『こちら、三太。準備出来ました。』
『よし、始めるぞ。』
開戦の狼煙が上がる。
「ほんとに上手くいくんですかね。これ。」
そんな事を言いながら、ベルは高台から、ゾンビのいる場所を双眼鏡で睨みつけていた。
『大丈夫だ。俺を信じてくれ。』
トランシーバーから、炎の自信たっぷりな声が聞こえた。
「へいへい、先輩の言う通り。」
適当にあしらい、トランシーバーに口を近づける。
「太郎さん、建物に火をつけてください。」
場面は変わり、太郎は住宅地だったであろうところに立っていた。
『太郎さん、建物に火をつけてください。』
寂しそうな目をしながら、答える。
「こちら、太郎。了解。」
手に持った爆弾を、近くの、ボロボロの木造の家に投げ込み、すぐに後ろに下がる。
ドカーンと言う音がして、家が炎に包まれる。
トランシーバーを切る。
「昔はここらへんで遊んだなぁ。」
煙が入ったのか、目から一筋の光が零れる。
「こちら、影。範囲外のゾンビ、どこにいますか。」
影は、呼び出した赤い鳥、朱雀に乗って、はぐれたゾンビを一体一体倒して回っていた。
『3時方向、30メートルほど先に3体。』
ベルの指令が入る。
「了解。」
札を構え、走り出す。
「行くぞ、朱雀。」
朱雀は、羽を広げ、高く飛ぶ。
[がぁあ]
ゾンビが、こちらに気づいた様にこちらを向く。
「滅」
影は、ゾンビを動きを避けるようにして、札をゾンビ達の顔に投げ付け、呪文を唱える。
[グアアギヤア]
ゾンビ達は、断末魔を上げながら、塵となって消えた。
「こちら、影。ゾンビ3体討伐完了。再度上空から捜索を開始する。」
『了解。』
「ベルさん、そろそろいいですか。」
『そろそろ良いぞ。これ以上は待ってもさすがに居ないだろう。』
佳は、太郎の持ち場の、広場を挟んで真反対の位置に、三太と2人で待機していた。
「しかし、おまえさんは、本当に凄いな。こんな所に来ても、全く逃げようとしないんだから。」
三太は、少し緊張していた佳に声をかける。
「お世辞でも嬉しいですよ。」
微笑みながら言葉を返す。
「お世辞なんかじゃねえよ。俺だったらビビり散らして、部屋に引きこもってらあ。」
佳の頭をクシャクシャと撫でながら答える。
「それじゃあ、やりますか。」
2人は、手榴弾を構える。
「「せーの、エイっ(ソイヤッ)」」
2人は、木が積まれた倉庫に向けて投げ込む。
ドカーン 倉庫に火が付く。
『にゃ~』
「あ、猫だ。」
「おい、そろそろ行くぞ。」
手を振って、三太が佳を呼ぶ。
「あ、はーい。」
2人は、ベルの待つ高台へと向かう。
『にゃ?』
猫が振り向く。そこには、目も口も無かった。