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第5話 ゾンビパニック 後編 その1


「影、朱雀って出せるか?」

炎さんが、影さんに質問する。

「ああ、まあ出せないことはないですけど。」

もはやどうでも良さそうに、影さんが答える。

「そういえば、影さんの能力ってなんですか?」

影の能力について聞いていなかった佳が質問する。

「ああ、僕の能力は、陰陽師で、式神を召喚したり出来るんだけど…   そうか、そういうことか、なるほど。」影さんが、何かに気付いた様に席を立つ。

「そういうことですか。」

「そういうことだ。」

二人は顔を合わせて、ニヤリと笑う。

「「みんな、僕(俺)達の作戦を聞いて欲しい。」」







2時間後


僕達はそれぞれの持ち場についていた。

「こちら、佳。準備出来ました。」

『こちら、三太。準備出来ました。』

『よし、始めるぞ。』

開戦の狼煙が上がる。


「ほんとに上手くいくんですかね。これ。」

そんな事を言いながら、ベルは高台から、ゾンビのいる場所を双眼鏡で睨みつけていた。

『大丈夫だ。俺を信じてくれ。』

トランシーバーから、炎の自信たっぷりな声が聞こえた。

「へいへい、先輩の言う通り。」

適当にあしらい、トランシーバーに口を近づける。

「太郎さん、建物に火をつけてください。」



場面は変わり、太郎は住宅地だったであろうところに立っていた。

『太郎さん、建物に火をつけてください。』

寂しそうな目をしながら、答える。

「こちら、太郎。了解。」

手に持った爆弾を、近くの、ボロボロの木造の家に投げ込み、すぐに後ろに下がる。


ドカーンと言う音がして、家が炎に包まれる。

トランシーバーを切る。

「昔はここらへんで遊んだなぁ。」

煙が入ったのか、目から一筋の光が零れる。


「こちら、影。範囲外のゾンビ、どこにいますか。」

影は、呼び出した赤い鳥、朱雀に乗って、はぐれたゾンビを一体一体倒して回っていた。

『3時方向、30メートルほど先に3体。』

ベルの指令が入る。

「了解。」

札を構え、走り出す。 

「行くぞ、朱雀。」

朱雀は、羽を広げ、高く飛ぶ。

[がぁあ]

ゾンビが、こちらに気づいた様にこちらを向く。

「滅」

影は、ゾンビを動きを避けるようにして、札をゾンビ達の顔に投げ付け、呪文を唱える。

[グアアギヤア]

ゾンビ達は、断末魔を上げながら、塵となって消えた。

「こちら、影。ゾンビ3体討伐完了。再度上空から捜索を開始する。」

『了解。』



「ベルさん、そろそろいいですか。」

『そろそろ良いぞ。これ以上は待ってもさすがに居ないだろう。』

佳は、太郎の持ち場の、広場を挟んで真反対の位置に、三太と2人で待機していた。

「しかし、おまえさんは、本当に凄いな。こんな所に来ても、全く逃げようとしないんだから。」

三太は、少し緊張していた佳に声をかける。 

「お世辞でも嬉しいですよ。」

微笑みながら言葉を返す。

「お世辞なんかじゃねえよ。俺だったらビビり散らして、部屋に引きこもってらあ。」

佳の頭をクシャクシャと撫でながら答える。

「それじゃあ、やりますか。」

2人は、手榴弾を構える。

「「せーの、エイっ(ソイヤッ)」」

2人は、木が積まれた倉庫に向けて投げ込む。


ドカーン 倉庫に火が付く。

『にゃ~』

「あ、猫だ。」

「おい、そろそろ行くぞ。」

手を振って、三太が佳を呼ぶ。

「あ、はーい。」

2人は、ベルの待つ高台へと向かう。

『にゃ?』

猫が振り向く。そこには、目も口も無かった。

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