「君は自分の命に、いくらかけられる?」
我ながらクズかっこいい登場を果たした僕は、目の前の彼女にそうたずねる。
案の定、彼女はと言うと……何事かとポカンとした顔で、メガネの奥の大きな瞳で僕をジッと見つめる。
「自分で言うのもなんだけど、僕はタダでは絶対に動かない人間なんだ。でも僕の友達が君を助けたがっている。だから君を助ける代わりに、対価として君は僕にいくら支払う?」
「は……え?」
彼女は困惑してるのか、なかなか対価の金額を提示してくれない。困ったなぁ。
だから僕は、ダメ元で押してみた。
「僕は別に君を助けなくても全然なんとも、これっぽっちも罪悪感はもたないよ。だって僕らは赤の他人で、これが初対面だからね」
実際、僕には関係のないことだし。
強いて言うなら、ちょっとヒメカが罪悪感を持つくらいかな。
「おい、テメー……いきなり出てきて、なにを……」
「わ、私は……」
「どうする? 早く決めなよ」
彼女と僕の後ろにいるチンピラ風情Aが、手を大きく振り上げる。
「い……」
「……ごちゃごちゃと!」
「一千万……っ!」
僕はニヤッと笑う。
「その言葉……忘れないでね」
チンピラAが手を振り下ろした瞬間、僕の身体に鋭い痛みが走る。それと同時に赤い血飛沫が地面や壁一面に飛び散り、僕はそのまま前のめりに倒れ込む。
背中からはドクドクと赤い液体が流れ出し、じわじわと痛みが広がっていく。本当、ここらは治安が悪いな。
でもかすれゆく意識の中、僕は思う。今日はラッキーだ。
一千万の金額がも手に入る上に、もうひとつ――――。
▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁
「おい、殺ったか?」
「脈はねぇ、死んでる」
「ならさっさとこの女を捕まえて、ズラかる……」
――――ザシュッ……――――
「……? なんだ?」
「お、おい……お前っ、足……!」
「あ?」
――――ブシュ……ッ!――――
「う、うわぁぁぁああ!」
チンピラの一人が、切断された片足を抑えながら地面に転がる。
「……面白いねぇ、君の
「お、お前……なん……!?」
チンピラたちは、化け物でも見たかのように悲鳴をあげる。
「どうしたんだい? そんな、化物でも見たかのような悲鳴をあげて」
「お前、さっき……死ん……!」
「あぁ、なるほど」
僕は納得したように頷くと、チンピラたちに軽く種明かしをする。
「たしかに僕は死んだよ。でもこうして生き返ったのさ。僕の『
僕は笑顔で答えてあげる。だって僕は優しいからね。
「僕はね……いくつか大事にしてることがあるんだ。例えば『ご飯や賭け事では、お金は他人のお金を使う』……」
『他人のお金は、僕のお金』。
『僕のお金は、僕のお金』。
他にもお金に関しては、いろいろと決めてることはある。けど。
「僕の大好きなお金に関しては、今回は置いといて……」
僕は手を大きく振り上げる。
「この
そしてそのまま、勢いよく振り下ろす。
――――ザシュッ!――――
「ぐっ……あぁぁぁぁぁぁ!」
「『
『殺られたら、殺り返す』。殺られた側としては、至極真っ当な理由。なんとも素敵な言葉だ。
――――シュッ! ザシュッ!――――
僕が手を振り上げて下ろす度、チンピラたちの汚い血飛沫がここら一体を赤く汚す。
「な、なんで俺の
泣きながらそう質問されて、僕は一瞬手を止める。誰かと思えば、僕を殺したチンピラAじゃないか。
「いい質問だね」
僕の『
僕の『
思わぬ副産物があったのだ。
それは、僕を殺した相手の『
それに気づいたのは、僕が十数回目の死を経験した時。たまたま僕を殺した相手が、能力者だったのだ。
『
もちろん戦闘系の
そうして何度も何度も殺されて、何度も何度も死んでいるうちに、僕は気づいたんだ。この『
……でもね。何度も何度も殺されて、何度も何度も死ぬより、僕は手っ取り早い方法を僕は見つけた。
なんともシンプルで、簡単なことだ。
それは『
でもこれにも、欠点がある。
『
いくら『
今回はたまたま一発でわかったか良かったけど、何度も死んで生き返るのは少し面倒だからね。単純な
そんなわけで、単純な
「でもどうせ今から死ぬんだから、ひ・み・つ♪」
そうして僕は、笑顔で手を振り下ろした。