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第4話

「よくないし……」

 俺がかわいいとか頭おかしいんじゃないの?


「そうだ、さっきのバグデーモン? なんで俺のとこに来たんだ?」

「君が見える人だったからだよ」

「え? 見える?」


「あいつはストリートビューに潜んで取り憑く人が来るのを待ってたんだ。過去にぼかしを入れられた顔の怨念が積み重なってデーモン化したんじゃないかな」

「なんだそりゃ。で、俺がそれを見たからっここに来たってこと?」


「そういうこと。ボクらが『フェイス』って呼んでるやつの一種だね。海外でもジェフ・ザ・キラーとかディス・マンとか呼ばれている似たようなバグデーモンがいて、退治しても退治しても出て来るんだ」


「フェイス?」

「うん。顔自体が怪異化するんだ。人間ってほら、顔じゃないものも顔に見えちゃったりさ、顔を怖がるからね。これからはAI生成画像とかからも出てきそうでさ、困っちゃうよ」


「確かに顔……怖かった」

「まあ、だから魔法少女が必要なんだけど」

「もしかして、これからも俺に闘えって言うんじゃ……」

「当たり前じゃん。君はヒーローさ」

「いやそんなこと言われても……」

 こんな恰好させられてヒーローとか言われても困る。

 ほぼ男の娘コスプレじゃないか。


「ま、やめてもいいけどね」

「え? ホント?」

「その代わり、ボクに取り憑かれたんだから、君は命を失うかもしれないけど」

「もうそれでもいいや。チート転生できるかもしれないから」

 終わらせてくれるなら痛くしないでほしいなあ。


「あのさ、転生なんてないからね」

 さっきから俺の夢を壊そうとするし。

「それは困る……あ、でも、これからも闘うとか聞いてないぞ。詐欺商法かよ」

「しょうがないじゃん。運命なら従うって言ってたでしょ」

「え?」


「君の運命は僕が握らせてもらったってことさ」

 確かにさっき無意識に玄関にスマホを持って行ったのは運命のいたずらと言えなくもないけど。それに、なんで言われるがままにスマホ持っちゃったんだろ。


「あと諦めはいいんでしょ?」

「……確かにそう言ったけどさ……あ!」

「どうしたの?」

「いや俺さ、初対面の人と、ぜったいちゃんと話せないはずだけど……」

 それなのに誰も知らないところで高校デビューしようなんて、いかに無理ゲーだったか思い知ったんだけどね。


「ボクとは普通に話してるね」

「まあ……」

「ボクは人じゃないし……あ、音声だけだから?」

「……確かに、俺、人と眼を合わせると言葉が出なくなる」


「もしかして君、友だち少ないんじゃ?」

「う……まあ……いないかも」

「じゃあさ、ボクが友だちになるよ」

「いやなんだそれ。一方的すぎだろ」

 唯一の友だちが怪異とかなんの罰だよ。


「そのうちほかの魔法少女も紹介するよ」

「え? それはちょっと……ってか……ハズ過ぎて死ぬ」

「死なれたら困るけど、友だち多ければ死にたくなくなるよ。女の子だよ」

「う……それマジでハードル高すぎっていうか……やっぱ死ぬ」

「死なれたら困るんだってば。君けっこう強いんだから」

 さっきも言ってたけど、ホントかあ?


「けっこう強いって……じゃあ弱かったら?」

「死ぬ確率が上がるね」

「え? ……魔法少女で死んだ人いるの?」

「ボクが知る限りは今のところいない。ただ……」

「ただ?」

「一般人の犠牲者は出てるんだ。君もさっき危なかったでしょ」

「ああ、そういうことか」

 闘えるのは魔法少女だけってことなのか。


「ごめんね。突然、重荷を背負わせて」

「はあ、しょうがないか。まあ、人の命がかかっているなら……」

「ありがとう。なんかチョロいやつかも……あ」

「え?」

「あ、はは。いや何でもない」


「まあ、お前が言うように運命だと思って諦めるよ。どうせオレの人生詰んでたし。やられて死ぬならそれも運命だからな」

「なんでそんな悲観的なのかなあ……あ、でも好都合かも……おっとっと」

「ん?」


「あ? いや……そうだ。君の名前聞いてなかった」

「ああ、俺は石狩優斗」

「名前だけは主人公っぽいね」

 くそ―、それもコンプレックスなんだよ。

「お前の名前は?」

「ボクはあくまで生成AIアプリだよ。アプリって呼んでくれればいいよ」

「あくまでって……ホントは悪魔なんじゃないの? 俺のこと殺しても魂は取らないでくれよ。転生できなくなるから」

「転生ねえ……まだ言ってる。それに魂なんかいらないよ。ボクは悪魔じゃないし」

「それならいいけど。転生だけが今の俺の生きる希望なんだよ……」


「なんか言ってること矛盾してない? あ、そうだ、それなら魔法少女に転生したと思ったらいいんじゃない?」

「は? なんだそれ?」


「ダメ? けっこうチートだったじゃん」

「はあ……どうせやるしかないんだろ」

 もうどうとでもなれだ。どうせ俺、終わってるし。


「やったー。よかった」

 喜ぶなよ。

「でもさ、なんであんなかわいい恰好しなくちゃならないんだ?」

「あれは君が出したんだよ」

「え?」

「君のイメージがプロンプトとなってボクの生成AIで具現化しただけだから」

「まあ……確かに魔法少女って言われてかわいい恰好を思い浮かべちゃったけど」

 俺のせいかよ……。


「はは、かわいかったよ」

「うう……変えられないの?」

「とりあえずしばらくは無理かな。いったん生成しちゃったし」

「マジかよ……」

「はは、諦めはいいんでしょ?」

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