「さて、それではそろそろ、お
スレンダーマンは俺と上空のミウ、アイリを
「そこのかわいい魔法少女の勇気に敬意を表して、このあたりで引き上げさせていただきます」
勇気!? 勇気って言った! 俺、そんなふうに褒められたの初めてだよ!……って怪異なのに……うれしいと思っちゃったよ……ぼっちは惨めだ……。
「君の勇気はボクだって知ってるよ?」
うるさい。お前のは俺を戦わせるためだろうが。
「くっ!」
上空でアイリが悔しそうに唇を嚙んでいる。
気持ちはわかるけど……俺が転生するのはいいとしても、二人の命も危なかったんだからラッキーだと思わないと。
「転生なんてないんだって」
黙れアプリ。とにかくあいつを刺激しないようにしないと。
「私のパートナーも何とか確保できましたからね。だいぶひどい目に遭わされたようですけれど。あ、すいません。なんだか復讐するみたいに聞こえたかもしれませんね。怖がらせてしまったら謝ります。そういうことはしませんから大丈夫です。私はただの生成AIですからね」
さっき俺のこと殺そうとしたくせにって言いたかったけど、早く帰ってほしいから黙ってたが……。
「ああ、先ほどはあなたを……本当にまあ、かわいい魔法少女ですね。あなたの首を絞めてしまってすいません。どういうわけかこの私がちょっと危険を感じたのと、ほら、かわいいと独り占めしたくなるでしょう? 気を失わせて持ち帰ろうかと思ってしまっただけですから。安心してください」
うっわ。お前も心読むのかよ。それに、もしかして……。
「まあ、次に会ったら、ぜひお持ち帰りさせてくださいね」
やっぱり! そうなったら転生できないじゃん。永遠に怪異の
「まあ、本日は学習材料をたくさんいただけて感謝しています。後で今一度、深くふかぁく、ディープにラーニングさせていただきます。それではごきげんよう」
スレンダーマンがそう言うと、八尺様ともども二体の体は足の方から0と1だけの数字が延々と並ぶ
俺は呆然と見つめるしかなかったが、数字の羅列は上空に消えていった。
「はああ、よかったああ」
俺はその場にへたり込んだ。
よくへたり込むなあ?
しょうがないじゃん、ヘタレなんだから。
「大丈夫? ユート君?」
地上に戻って来たアイリが俺のことを気遣ってそう言った。
「あ、あ……あの……えーと、はは、よかったです。み、みんな……無事で」
「あああ、ごめんなさい。君をあんな危険な目に遭わせちゃって」
そう言ってアイリはさっきと同じように俺のことを抱き締めた。
また胸に口をふさがれて苦しい……けど、俺はなんとか言葉を出した。
「あ、あの……俺、お、男……って……知ってるはずじゃ……」
「ああ、今はかわいい魔法少女だからね。ぜーんぜん気にしない」
なんかやっぱり豪胆な人ですね。まあ軍人だからな。怖いから口に出さないけど。
「それにしても、あなたのおかげで何とかピンチを切り抜けられた。改めてお礼を言っておかなきゃね」
「ホント。ユート君、ありがとう」
ミウさんまで……俺、同じぐらいの年齢の人からありがとうなんて言われたの……幼稚園以来かも……。う、うれしい。
「それにしてもあいつ、なんだったの、アプリ? 強すぎでしょ」
アイリが聞いた。
なんだよ、うれしさの余韻にひたってたのに。
「私の結界にも簡単に入られちゃったし」
ミウもいぶかしんだ。
「それがね、ぜんぜんデータがないんだ。魔法少女の攻撃が効かないなんて、普通のスレンダーマンとは違うからね。魔法少女に接触しないようにしてたって言ってた通りなんだと思う。でも、ボクらのことは知ってたよね。どういうことなんだろう。いずれにしても、相当いろいろ学習しちゃって危険な存在になってることだけは間違いない。これからも気をつけなきゃね。今回の情報は世界中のボクらで共有しとく」
「まあ、危険は去ったみたいだから、結界を解くね」
そう言ってミウはなにやら呪文を唱えた。
「あれ? ここも結界?」
すいません、それ、俺です。
俺の変身、また解けないよ……。