そうこうするうちになぜか俺の変身は解けた。
「はああああ」
ホント、いつもヒヤヒヤものだよこれ。
また俺はへたりこんだ。
「ユート君の変身解除、どういう仕組みだかボクもわからないよ」
アプリ! 無責任すぎだろ。
「そのうち本当に解けなくなっちゃったりして」
おい、脅かすなよ、転生できなくなっちゃうじゃないか……。
俺たち三人は制服姿に戻っていた。公園はシーンとしていた。
トイレの壁ももちろん壊れていない。
「まあでも、とりあえず戻って来られてよかったじゃない。ユート君も……まあ、男だとこんなチンチクリンだけど」
アイリが俺を一瞥して苦笑した。
なんだよ、チンチクリンて。どうせ俺はチビだけどさ。さっきはあんなにかわいいとか言ってたじゃないか。でも反論できない……情けない……。
「アイリも極端だからなあ。そこまで言うことないよね。改めてよろしくね、ユート君。私は
うう、ミウさん、丁寧にありがとう……さっきはちょっと怖いと思ったけど、戦闘中だったからかな。
「あ……は、はい……お、俺はあの……い、石狩……優斗です」
「え? あれ? その名前もしかして……」
え? 俺の名前知ってるの? そんな人いるわけないでしょ。俺は孤高の陰キャひきこもりぼっちだよ……。
「中三の校内模試であの時、九位の名前が石狩優斗だったんだよね。私、十位だったからすごく悔しくて、その後、頑張って勉強したんだけど」
え? ミウさん、俺と同じ中学だったんだ。それにしても、俺の名前を憶えていてくれた人がいたなんて……もう死んでもいいや。うん、これ以上のうれしいことなんてもうないだろうから。もう転生しよう……。
「だから転……」
「うるさいぞアプリ!」
「え?」
ミウがちょっと驚いた顔をした。
「あ、え……と何でもないです。あの……」
「あはは。なんか力強い声も出せるんじゃない。さっきも強かったしね。変身解けてもチンチクリンなんかじゃないよ」
「え……」
「あ、それでさっきの話だけど、私、ライバル心燃やしてすっごく勉強したんだよね。一番の進学校に入れたの、石狩優斗のおかげだと思ってたの。それが君だったなんてね」
「あ……いや」
校内模試で九位に入ったのは一度だけだった。あの時はクラスの誰も相手にしてくれないなら成績で見返してやれって思って俺、ものすごく勉強したんだよね。「やったー」て喜んだのに、俺のぼっちは相変わらずで、心が折れちゃったんだけど。
「ふうーん。ユート君、ホントは勉強できたんだ?」
アイリが詰めてきた。確かに俺たちの高校は偏差値も平凡だけど……。
「え、あ……いや、成績良かったのはあの時だけで……」
それは本当だし。
俺にとっては、知り合いが誰もいなそうな高校を探す方がたいへんだったんだから。
「あの後、ずっと十位以内の張り出しに名前がないから、どうしたんだろって思ってたんだよね。顔も知らなかったし」
「あ……はは、あの後は……俺、勉強サボって成績落ちちゃって」
「そうなんだ。でもさ、地頭はいいんだろうから。それならさ、大学入試は一緒に頑張ろうよ」
えええええ!?
ああ、今、俺の人生の絶頂が来たんだ。もうここで死んだほうがいいのかも……。
「だから転生なんてないからね、ユート」
ああ、もううるさいよアプリ!
でもとりあえず、転生はおあずけかな。
「まあ、それにしてもやっぱり男だと貧相だなあ。もっかい魔法少女に変身してくれないかな、ユート君」
ああ、アイリさん、あなたは配慮というものがなさすぎです。