ヒューーーーーーードーン!
アイリのロケットランチャーが巨大ヒサルキに命中した。
「キイイイイイイイイ!」
巨大ヒサルキの腹に穴が開き、崩壊し始めた……と思ったのに、うわ! なにあれまたキモい……。
無数の茶色い物体がバラバラと落ちていく。
巨大ヒサルキは小さなヒサルキに分解されただけだった。
「スノーホワイト!」
白いドレスを来た魔法少女が叫び、吹雪のような白い大きな塊がヒサルキの大群に襲いかかった。
端っこの方からヒサルキがみるみる凍っていく。
でもやつら、やっぱりすばしっこい。「キイイ」「キイイ」と叫びながら大群の半分以上は逃げてしまった。凍ったヒサルキはすうーっと消えた。
「クソどもめ! 逃げ足だけは速いな」
アイリさん、言葉に気を付けた方が……。
「とりあえずもう一回ドーム作るね」
エミリがまた黒い日傘を開いてくるくる回した。
「さっきより強化しとくから」
「ありがと、エミリ。じゃあ、ユート君、ユイナとカノン、紹介するね」
う……そんなこと言われても俺……話せることなんにもないんだけど……。
「ユイナ、カノン。新しい魔法少女のユート君。かわいいでしょ?」
いちいちかわいいって言わなくていいですから、アイリさん。
「くん?」
赤ずきんの恰好をした魔法少女が首をかしげた。
ほら……まただよ、アプリ、お前のせいだぞ……。
「あ……まあ、その……」
俺は言葉が出ず、挙動不審に目をキョロキョロさせてしまった。
「あはは。どうしたの? 私は
そう言って赤ずきんの魔法少女はにっこり微笑んだ。
いや、よろしくねって言われても……。
俺は無言で軽く頭を下げた。
「もしかして君、男子ってこと?」
今度は白いドレスの人が聞いてきた。
こっちがカノンさんか。
アイリと同じぐらい背が高いな。
肌が白くてお姫様みたいだ。
「あ……え……」
もちろん俺が言葉を発せられるわけがない。
「男子だけどさ、それだけ魔法少女適性がすごいってことだよ。それにね、ユート君は中学の時の私の目標だった人なんだ。だから、エミリも含めて3人、私からもよろしくね!」
ああ、ミウさん、サポートありがとうございます。
もう天使です。なんか後光が差してます……。
「ふーん。まあいいや。私は
あ、ああ、年下だったんだ。
「ユート君は私の同級生でパートナーなんだよね」
アイリさん、俺がしゃべれないからって唐突に誤解呼びそうなこと言わないでください……。
「パートナー?」
ユイナさんが首をかしげた。
ほら……。
「そう。相棒の絆で結ばれてるんだよね、ユート君」
ああもう……どうとでもしてください。
「そうなんだ。最強ミリオタのアイリが相棒って言うくらいだから、相当強いってことですよね。えーと、ユートさん」
ユイナが言った。
「だから、私はミリオタじゃなくてミリタリー魔法少女だって。何回言えばわかるの」
アイリが口を挟んだ。
「あはは……」
俺はますます言葉が出ない。
「でもね、ユート君はホントすごいんだよ。おとといなんか、私とアイリを守ってめちゃめちゃ強い謎のバグデーモンと闘ってくれたんだ」
ミウさんがまた助け舟を出してくれた。
「へえ、そうなんですね。じゃあ、きょうはみんなで共闘、頑張りましょう!」
そう言ってユイナは右手を俺の方に出した。
お姫様と握手? いやそれ、無理だって。
「あ、じゃあ、せっかくだから、六人で円陣組んで手を合わせない?」
赤ずきんのユイナが提案した。
「いいね、それ。一回やってみたかったし」
アイリが同調し、右手の甲を上にして差し出した。
「じゃあみんな、私の手の上に手を載せていって!」
5人の魔法少女の右手が重なった。
俺は呆然と立ち尽くしていたが……。
「ユート君も!」
ミウさんが俺を誘った。
いやそこに入れなんて……それ、コミュ障陰キャにはとんでもない無理ゲーですって……。
「ほら!」
ミウさんが近づいてきて、俺の右手の手首をつかんでひっぱった。俺はますます硬直した。
「君は大事な私たちの仲間なんだよ?」
ミウさんが俺にほほ笑みかけた。
「え……」
俺は体の力が抜け、ミウさんに引っ張られるままに円陣の輪に入れられ、右手を一番上に載せられた。
「掛け声は男子のユート君にお願いしようかな」
「え……」
アイリさん、容赦なさすぎです。
「ちょっとアイリ。あなたがやりなさいよ。そういうの得意でしょ?」
またミウさんが助けてくれた。
「え? ああ、まあね。私が一番いいか。じゃあみんな、準備はいい?」
「おー!」
四人の声が重なった。
「ほら。ユート君も声出せ!」
アイリさん、スパルタ怖いです。
「あ、お、おお……」
「よーし。じゃあ行くよ! 勝利に向かって、ファイト!!!!」
「ファイトー!!!」
「ふ、ふあいと……」
うわ、四人に一瞬遅れちゃったよ。
「オー!!!!」
五人の声とともに、俺の右手が上に跳ね上げられ、俺はちょっとヨロヨロしてしまった。
「はは、ユート君、初々しくてかわいいね。私、君のこと、ライバルにしよっかな」
ゴスロリのエミリさんが俺を見てニヤリとした。
いや、そんなこと言われても……。
俺たちは、さらにパワーアップしたヒサルキの総攻撃が迫っていることにまだ気づいていなかった。