ダンジョンの新たな扉を通った青山と白石は、さらに驚くべき光景に出くわした。それは巨大な円形のホールで、天井は高く、中央には青白い炎の柱が立っていた。壁面には無数の文字や象形が刻まれ、床には幾何学的な模様が描かれていた。
「驚くべき場所…」白石は息を呑んだ。
青山はスマホを取り出し、撮影しようとしたが、画面は真っ白になるだけだった。「電波も通じないし、写真も撮れない…」
「ここは現実世界とは少し違うのかもしれないわね。」白石は周囲を見回した。
二人が中央に近づくと、炎の柱が反応するように揺らめいた。そして、その中から人影が浮かび上がった。赤い着物を着た若い女性の姿だ。
「火の巫女…」青山は声をひそめた。
女性は炎の中から二人を見つめていた。その表情には悲しみと、かすかな希望が浮かんでいるようだった。
『選ばれし者よ、よく来た…』
その声は直接、青山の心に響いた。
「あなたが…火の巫女ですか?」青山は震える声で尋ねた。
『そう呼ばれてきた…だが、私の本当の名は篝(かがり)…』
「
『真実を知ってほしい…私の物語を…封印の真実を…』
白石も一歩前に出た。「あなたの物語?伝説とは違うのですか?」
巫女・
『伝説は勝者が作るもの…私は…裏切られたのだ…』
青山と白石は息を呑んだ。これから聞く物語が、彼らの知る歴史を覆すことになるとは、まだ知らなかった。
『見せよう…千年前の真実を…』
炎の柱が広がり、部屋全体を包み込んだ。青山と白石の視界が真っ白になり、二人は意識を失いかけた。
「白石さん、しっかり!」青山は彼の手を強く握った。
白い光が消えると、彼らは同じ場所にいたが、周囲の景色は一変していた。古代の磐梯山の麓の村の光景だった。
『これは記憶…私の記憶…』
「幻覚?」白石が不安げに周囲を見回した。
「いいえ…」青山は地面に手を触れた。「触れることができる。まるで本当にここにいるみたい。」
『過去に身を置いているわけではない…私の記憶の中に…』
そして、二人の目の前で、千年前の悲劇が再現され始めた。
火の巫女・
すべては、今まさに明らかになろうとしていた。