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第7話

ダンジョンの新たな扉を通った青山と白石は、さらに驚くべき光景に出くわした。それは巨大な円形のホールで、天井は高く、中央には青白い炎の柱が立っていた。壁面には無数の文字や象形が刻まれ、床には幾何学的な模様が描かれていた。


「驚くべき場所…」白石は息を呑んだ。


青山はスマホを取り出し、撮影しようとしたが、画面は真っ白になるだけだった。「電波も通じないし、写真も撮れない…」


「ここは現実世界とは少し違うのかもしれないわね。」白石は周囲を見回した。


二人が中央に近づくと、炎の柱が反応するように揺らめいた。そして、その中から人影が浮かび上がった。赤い着物を着た若い女性の姿だ。


「火の巫女…」青山は声をひそめた。


女性は炎の中から二人を見つめていた。その表情には悲しみと、かすかな希望が浮かんでいるようだった。


『選ばれし者よ、よく来た…』


その声は直接、青山の心に響いた。


「あなたが…火の巫女ですか?」青山は震える声で尋ねた。


『そう呼ばれてきた…だが、私の本当の名は篝(かがり)…』


かがり…」青山はその名を繰り返した。「何故私をここに呼んだのですか?」


『真実を知ってほしい…私の物語を…封印の真実を…』


白石も一歩前に出た。「あなたの物語?伝説とは違うのですか?」


巫女・かがりは悲しげに微笑んだ。


『伝説は勝者が作るもの…私は…裏切られたのだ…』


青山と白石は息を呑んだ。これから聞く物語が、彼らの知る歴史を覆すことになるとは、まだ知らなかった。


『見せよう…千年前の真実を…』


炎の柱が広がり、部屋全体を包み込んだ。青山と白石の視界が真っ白になり、二人は意識を失いかけた。


「白石さん、しっかり!」青山は彼の手を強く握った。


白い光が消えると、彼らは同じ場所にいたが、周囲の景色は一変していた。古代の磐梯山の麓の村の光景だった。


『これは記憶…私の記憶…』


かがりの声が二人の心に響く。


「幻覚?」白石が不安げに周囲を見回した。


「いいえ…」青山は地面に手を触れた。「触れることができる。まるで本当にここにいるみたい。」


『過去に身を置いているわけではない…私の記憶の中に…』


そして、二人の目の前で、千年前の悲劇が再現され始めた。


火の巫女・かがりの真実の物語。封印の背後に隠された恐ろしい秘密。そして、それが現代にもたらす危機。


すべては、今まさに明らかになろうとしていた。


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