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第25話《4/29㈫祝》おはようのキス 

 カーテンの隙間から入り込んだ陽射しで、理玖は目を開けた。

 自分の家の、いつものベッドだ。

 目覚ましを掛けずに寝て起きる、いつもの休日。

 一つ違うのは、体中が、特に腰が異常に痛い。


(晴翔君はやっぱりotherだった。研究室のベッドでは手加減してたんだ。夜は、容赦なかった)


 部屋に着いたら、風呂に入って夕飯を食べて報告書の話をする、はずだった。

 きっかけが何だったか、よく覚えていない。

 気が付いたら、狭いベッドに二人で雪崩れ込んでいた。

 めちゃくちゃに抱いてほしいと、自分から言った気はする。

 晴翔の目はやっぱり獣じみて、tripするんじゃないかと思うほど気持ち善くされて、激しくされて、甘い言葉を何度も言われて。

 空っぽになっても何度もイカされているうちに、理玖の意識はどうやら飛んだらしい。途中から記憶が断片的だ。


(tripしたのとは、違う、よね。普通に、僕が潰れただけだよね。あんなに激しくて長いエッチしたの、初めてだから、よくわからない)


 やっぱり晴翔は若いんだなと、つくづく思う。

 隣を振り返ると、晴翔がいない。

 さっきウトウトと目を覚ました時には、理玖を抱いて寝ていたのに。

 理玖はベッドから何とか起き上がると、重い体を引き摺ってリビングに向かった。

 リビングで、晴翔が例の調査報告書を読んでいた。


「あ、理玖さん。おはようございます」


 カタカタした動きで晴翔の隣に腰掛ける。

 晴翔が息を吸うように理玖にキスをする。


「書類、読んでたの?」


 まだぼんやりした頭で、目を擦りながら眺める。


「あれ以上、理玖さんの隣に寝てたら、また襲っちゃいそうなので、ちょっと離れました。本当はベッドの中でおはようのキス、したかったけど」


 残念そうにしながら、頬や唇に、いっぱいキスされた。

 そのキスだけで、理玖の股間が疼いてしまいそうだ。


(嬉しいけど、反応するけど、今は無理。エッチするのは、身体的に無理だ)


 腰が悲鳴を上げている。

 さすがにこれは理玖の方が年上だからとか、そういう事ではない気がしてきた。


「勝手にシャワー借りちゃいました、すみません。理玖さんの家にいるんだって考えるだけで嬉しくて興奮するから、報告書読んで現実と向き合おうと思って」


 晴翔の顔が照れなのか反省なのか、わからない色に染まっている。

 仕事では見ない、珍しい表情だ。

 昨日から晴翔のレアな表情がたくさん見られて、胸がキュンキュンする。


(表情だけじゃ、ないけど。エッチが激しいとか、絶倫とか、前戯好きとか、巨根とか、シてる時の顔がエッチなイケメンとか……)


 エッチな晴翔ばかり浮かんできて、反省する心持になる。

 嬉しくなる言葉も沢山もらったのに、真っ先に浮かぶのはエロい晴翔ばかりだ。


 心頭を滅却すべく、理玖も報告書に視線を向けた。


「これ、晴翔君の私物?」


 書類を指さす。

 晴翔が首を振った。


「違います。いくつか発見があって、昨日の経緯も含めてお話したいんですけど。とりあえず理玖さんも、シャワー浴びますか? 軽く拭いたけど、お腹、カピカピでしょ?」


 指摘されて思わず腹を抑えた。

 どれだけ出したんだろうと思うほど、広範囲にわたりカピカピだ。


「……浴びてきます」


 恥ずかしくて俯く理玖に、晴翔が口付けた。


「昨日の理玖さん、めちゃめちゃ可愛かったです。ゴム、使い切っても止まれなかった」


 驚いて思わず顔を見上げる。


(コンドームって一箱十二個くらい入ってなかったっけ? 使い切ったの? じゃぁ、それ以上、してたの?)


 とはいえ、思い返すと納得だ。

 経過時間的にも腰の痛みも、コンドーム一箱分以上の行為を物語っている。

 晴翔はと言えば、ろくに寝てないはずなのに、ピンピンしている。

 むしろ顔色が良い気がする。


(いやでも、僕に気を遣って起きていたんだろうから)


「あ……、後で一緒に、お昼寝しようね」


 晴翔にぴたりと顔を寄せて、小さな声でお誘いする。

 いくら若くても睡眠不足は万病の元だ。


「昼寝ですね。シーツ、交換しておきます。ちゃんと眠れるか、わからないけど」


 またいっぱい口付けられた。

 晴翔に寝る気は微塵もないと悟った。


「ダメ、だよ。少しは、寝ないと……、ぁ、ん……」


 唇を吸い上げて、舌が絡まる。

 気持ちが善くて寝なくてもいいような気がしてくる。


(ダメだ、このままでは晴翔君の健康を害してしまう)


 理玖は晴翔の首に抱き付いた。


「晴翔君にぴったりくっついて眠りたい、から。僕のお願い、聞いて」


 そっと晴翔の顔を覗き見る。

 晴翔の顔が嬉しそうに笑んだ。


「理玖さんのお願いなら、何でも聞きます。俺も理玖さんを、ぎゅって抱いて寝たい」


 その場で、ぎゅうっと抱きしめられた。

 晴翔を寝かせたいのに、強い腕の温かさに理玖の欲が疼いてしまいそうだった。

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