カーテンの隙間から入り込んだ陽射しで、理玖は目を開けた。
自分の家の、いつものベッドだ。
目覚ましを掛けずに寝て起きる、いつもの休日。
一つ違うのは、体中が、特に腰が異常に痛い。
(晴翔君はやっぱりotherだった。研究室のベッドでは手加減してたんだ。夜は、容赦なかった)
部屋に着いたら、風呂に入って夕飯を食べて報告書の話をする、はずだった。
きっかけが何だったか、よく覚えていない。
気が付いたら、狭いベッドに二人で雪崩れ込んでいた。
めちゃくちゃに抱いてほしいと、自分から言った気はする。
晴翔の目はやっぱり獣じみて、tripするんじゃないかと思うほど気持ち善くされて、激しくされて、甘い言葉を何度も言われて。
空っぽになっても何度もイカされているうちに、理玖の意識はどうやら飛んだらしい。途中から記憶が断片的だ。
(tripしたのとは、違う、よね。普通に、僕が潰れただけだよね。あんなに激しくて長いエッチしたの、初めてだから、よくわからない)
やっぱり晴翔は若いんだなと、つくづく思う。
隣を振り返ると、晴翔がいない。
さっきウトウトと目を覚ました時には、理玖を抱いて寝ていたのに。
理玖はベッドから何とか起き上がると、重い体を引き摺ってリビングに向かった。
リビングで、晴翔が例の調査報告書を読んでいた。
「あ、理玖さん。おはようございます」
カタカタした動きで晴翔の隣に腰掛ける。
晴翔が息を吸うように理玖にキスをする。
「書類、読んでたの?」
まだぼんやりした頭で、目を擦りながら眺める。
「あれ以上、理玖さんの隣に寝てたら、また襲っちゃいそうなので、ちょっと離れました。本当はベッドの中でおはようのキス、したかったけど」
残念そうにしながら、頬や唇に、いっぱいキスされた。
そのキスだけで、理玖の股間が疼いてしまいそうだ。
(嬉しいけど、反応するけど、今は無理。エッチするのは、身体的に無理だ)
腰が悲鳴を上げている。
さすがにこれは理玖の方が年上だからとか、そういう事ではない気がしてきた。
「勝手にシャワー借りちゃいました、すみません。理玖さんの家にいるんだって考えるだけで嬉しくて興奮するから、報告書読んで現実と向き合おうと思って」
晴翔の顔が照れなのか反省なのか、わからない色に染まっている。
仕事では見ない、珍しい表情だ。
昨日から晴翔のレアな表情がたくさん見られて、胸がキュンキュンする。
(表情だけじゃ、ないけど。エッチが激しいとか、絶倫とか、前戯好きとか、巨根とか、シてる時の顔がエッチなイケメンとか……)
エッチな晴翔ばかり浮かんできて、反省する心持になる。
嬉しくなる言葉も沢山もらったのに、真っ先に浮かぶのはエロい晴翔ばかりだ。
心頭を滅却すべく、理玖も報告書に視線を向けた。
「これ、晴翔君の私物?」
書類を指さす。
晴翔が首を振った。
「違います。いくつか発見があって、昨日の経緯も含めてお話したいんですけど。とりあえず理玖さんも、シャワー浴びますか? 軽く拭いたけど、お腹、カピカピでしょ?」
指摘されて思わず腹を抑えた。
どれだけ出したんだろうと思うほど、広範囲にわたりカピカピだ。
「……浴びてきます」
恥ずかしくて俯く理玖に、晴翔が口付けた。
「昨日の理玖さん、めちゃめちゃ可愛かったです。ゴム、使い切っても止まれなかった」
驚いて思わず顔を見上げる。
(コンドームって一箱十二個くらい入ってなかったっけ? 使い切ったの? じゃぁ、それ以上、してたの?)
とはいえ、思い返すと納得だ。
経過時間的にも腰の痛みも、コンドーム一箱分以上の行為を物語っている。
晴翔はと言えば、ろくに寝てないはずなのに、ピンピンしている。
むしろ顔色が良い気がする。
(いやでも、僕に気を遣って起きていたんだろうから)
「あ……、後で一緒に、お昼寝しようね」
晴翔にぴたりと顔を寄せて、小さな声でお誘いする。
いくら若くても睡眠不足は万病の元だ。
「昼寝ですね。シーツ、交換しておきます。ちゃんと眠れるか、わからないけど」
またいっぱい口付けられた。
晴翔に寝る気は微塵もないと悟った。
「ダメ、だよ。少しは、寝ないと……、ぁ、ん……」
唇を吸い上げて、舌が絡まる。
気持ちが善くて寝なくてもいいような気がしてくる。
(ダメだ、このままでは晴翔君の健康を害してしまう)
理玖は晴翔の首に抱き付いた。
「晴翔君にぴったりくっついて眠りたい、から。僕のお願い、聞いて」
そっと晴翔の顔を覗き見る。
晴翔の顔が嬉しそうに笑んだ。
「理玖さんのお願いなら、何でも聞きます。俺も理玖さんを、ぎゅって抱いて寝たい」
その場で、ぎゅうっと抱きしめられた。
晴翔を寝かせたいのに、強い腕の温かさに理玖の欲が疼いてしまいそうだった。