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第13話 ドライブデート

「タカ君は今まで何人と付き合ってどんな人だったの?」

「え……?」

「だってさっき私答えたからさ。タカ君の昔の彼女や恋愛って聞いたことなかったから気になって」

ドライブ中、奈々の学生時代の恋愛を聞いていたら俺にも同じ質問をしてきた。


「元カノや昔の恋愛って聞かれてもいないのに話すものじゃなくない?」


奈々は青春やり直したいと言った時に、恋愛とは縁がなかったと自分から言ってたので知っていたが、30代を過ぎると奈々のように自分から話さない限り恋愛話は話題に上がらなくなってきた。聞いたとしても、今付き合っている人がいるかどうかで過去の恋愛話になることはほとんどない。大人同士、しかも異性から過去の恋愛を聞かれたら興味を持たれていると思ってもいいと個人的には思っている。



「確かに。で、何人と付き合ったことあるの?」


「……3人」


やましいことはないが人数を聞いてどうするのだろう。そんなことを思いながら、でも正直に答えた。


「へーそうなんだ」

聞き流すような反応になんとなくムッとした。


「何、その反応?」


「いや、だってこれが20人とか言われたら驚くけどタカ君だって大人だし、付き合ったことあるのは分かっていたから。そうなんだ、って思っただけ。」


「それなら人数聞かなくてもよくない?」

俺は少し呆れて言った。


「それもそうだね(笑)でもタカ君の事色々知りたくて」

「こんなこと聞いても楽しくないでしょ。」


まだどれくらい付き合ったとか、別れの原因とか今後付き合っていくうえで人柄を知る質問なら分かるが、付き合った人数で何が見えてくるのだろうか。


3人という答えの反応が、あまりにもあっさりしていることが面白くなかったのか……自分でもよく分からなかったがいい気分はしなかった。そして、苛立っているつもりはなかったがいつもより反応が冷たくなってしまった気がする。なんでこんな風に思ってしまうのか、心当たりは少しあったが直接関係のない話なので思い過ごすことにした。この変な雰囲気を変える方が先決だ。


「俺は話下手だから奈々のように面白く喋れないしハードル上がっちゃったんだよね。自分のことってあんまり話さないから聞かれて、どんな話すればいいか分からなくなって。」

本心だった。自分の過去の恋愛なんて詳しく誰かと話すことはない。サークルでも女子メンバー同士で恋愛の話を楽しそうに話をしているが、男が集まっても彼女とどこに行ったとか過去の彼女との恋愛の話なんてしない。男同士なんてそんなものじゃないだろうか。


奈々は、少し不服そうだったが俺があまり聞かれたくないことに触れてしまったと思ったのかそれ以上は聞いてこなかった。


「あーー!コンビニで期間限定でマンゴーのアイスが出たって!美味しそう」

コンビニののぼりを指さし、奈々が話題を変える。


「おお、美味しそうだな。ソフトクリーム買ってく?」

特別興味はなかったが、この車内の雰囲気を変えたくて俺も乗ることにした。


「食べよ。半分こしよ」

「奈々、半分こ好きだね」

「だってさ、ソフトクリームのほかにお互い気になるものもう1個買えば2倍楽しめるんだよ!分け合えるっていいじゃん!!」


いつもの奈々に戻ったことに安堵して、ウインカーを出して駐車場に入る。


「今日は、フライドポテト食べたい」

「えーー熱いのと冷たいの?」

お互い早く変な雰囲気を払拭したくて、手を繋ぎコンビニへと入って行った。



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