「ハッピーハロウィーン----!」
青春に憧れて、イベントごとが大好きな奈々がこの日も浮かれ気味に話しかけてきた。
「タカ君、ハロウィンだよ。仮装しよう!お祭りだよ!!!」
「嫌」
「えーーー!青春だよ」
「青春はコスプレ大会じゃありません」
「なんかタカ君、つれないー!」
頬を膨らませて拗ねる奈々。
(この様子だとサンタクロースの格好もさせられるかもしれない……それだけは死守しなくては。)
「えーーーしたい!ハロウィンやりたい!やろうよー!!」
「……。」
バレーサークルのメンバーでやることを提案。
この前のことを心配していた大樹は、孝志やユキから問題ないと話を聞き安心する。
孝志とユキが2人きりになった時に居酒屋で奈々がタカ君大好きと何度も言っていたことを笑いながら話す、そして今度泣かせたらただじゃ置かないからねと笑いながら、でも本気の目でユキから釘をさされる。
奈々のことを大切にしていこうと改めて思う孝志であった。
「ハッピーハロウィーン----!」
青春に憧れてイベントごとが大好きな奈々が、浮かれ気味に話しかけてきた。
「タカ君、ハロウィンだよ。仮装しよう!お祭りだよ!!!」
「嫌」
俺は、スマホをいじる手を止めずに即答した。
「えーーー!青春だよ」
「青春はコスプレ大会じゃありません」
「なんかタカ君、つれないー!」
頬を膨らませて拗ねる奈々。
(この様子だと、クリスマスにはサンタクロースの格好もさせられるかもしれない……それだけは死守しなくては。)
「えーーーしたい!ハロウィンやりたい!やろうよー!!」
奈々は孝志の腕に猫のようにじゃれつきながら、なおも食い下がる。
「……。」
孝志は、溜め息をつきながらも奈々をどう宥めようかと考えていた。
「そうだ!サークルのメンバーみんなでやるのはどう?」
奈々は、いいこと思いついたと言わんばかりにパッと顔を輝かせている。
その提案に女子メンバーたちは「いいね!」「絶対楽しいじゃん!」「どんな仮装にする?」と大いに乗り気になり、たちまちハロウィンパーティーの話題で持ちきりになった。
(マ、マジかよ……。)
こうして孝志の抵抗虚しくハロウィンパーティーが開催されることになった。
当日、小規模の二次会も出来るアットホームな飲み屋に集まったメンバーたちは、思い思いの仮装に身を包んでいた。魔女、ゾンビ、アニメのキャラクターなど、本格的なコスチュームの人もいれば、ちょっとした小物を身につけただけの人もいる。奈々は、猫耳としっぽに加え肉球のついた手袋まで装着していた。
「奈々ちゃん、大丈夫だった?」
ちょび髭をつけたマリオ姿の大樹が俺とユキに声をかけてきた。
「ああ、もう全然平気だよ。むしろ、ハロウィン楽しみにしてるみたいだし」
ボーダーのTシャツと赤い帽子でウォーリーになりきった俺が答える。眼鏡は普段から家でつけているものでコスプレではない。
「うん、私も色々話したから大丈夫。あの子、立ち直り早いから」
とアリス姿のユキが笑顔で太鼓判を押した。
マリオとウォーリーとアリスが猫(奈々)の心配をしているシュールな展開に、俺は心の中で楽しんでいた。
しばらくしてからユキがやってきて二人きりになった。
「この前、居酒屋行ったときに奈々ったら、酔っ払って『タカ君大好きー!』って店中に聞こえるくらいの声で何度も叫んでたよ。」
ユキはクスクスと笑いながら教えてくれた。
なんて答えていいか照れていると、ユキは急に真顔になり俺をじっと見つめてきた。
「奈々、本当タカ君のこと好きなんだなって可愛かった。だから、今度もし奈々を泣かせたら、私ただじゃ置かないからね」
その言葉には冗談交じりながらも親友を大切に思うユキの本気が込められていた。
俺は、ユキの言葉を真剣に受け止め改めて奈々のことを大切にしていこうと心に誓った。真っ直ぐに自分を想ってくれる奈々の気持ちに応えたい。不器用ながらも強く思った。
ハロウィンパーティーは、メンバーたちの笑顔と笑い声で溢れ大盛況のうちに幕を閉じた。奈々は、誰よりも楽しそうに笑い、俺の隣で本物の猫のように嬉しそうにしっぽを揺らしている。
「奈々、ありがとう。仮装は今後もやるつもりはないけれど、これからも色んな季節を一緒に過ごそうな。」
そっと心の中で呟いた。