「も~いくつ寝るとお正月~」
「いや、もう年明けて2日だけどね。」
私が鼻歌を歌っていると、隣にいたタカ君が冷静かつ的確にツッコミを入れてきた。
穏やかな陽が差し込む1月2日の昼下がり。私たちは神社へ初詣に出かけた。
お賽銭を入れ、二人で手を合わせ静かに願う。
(今年もタカ君と楽しく過ごせますように!!)
参道には、初詣客の穏やかなざわめきとお線香の優しい香りが漂っていた。ところどころに屋台も出ていて食欲がそそられる。
「あっ!」
ふと見慣れた顔が目に飛び込んできた。バレーの指導に行っている一中の二年生だ。家族と来ていたようで、少し遠くから私たちに気づいてぺこりと可愛らしい会釈をしてお父さんとお母さんの間をちょこちょこと歩いて行った。
「あの子、頑張ってんだよね」
生徒の姿を見送ると自然とそんな言葉が口にした。
「あの子、アタッカーの子じゃない?背が伸びたなー俺が行ったときはまだ中学に入学したばかりであどけない感じだったんだよね。」
中学生の頃は身長も一気に伸びる子もいて成長が著しい。奈々も中学の頃は毎年10㎝近く伸びて、卒業するころにはスカートの丈が短くなっていた。
「タカ君も練習行ったことあるんだ?」
「一年半位前にね、今の子が入部してすぐだったから5月か6月かな?2~3回行った気がする」
「今度、一緒に行こうよ。工藤先生も待っていたよ。」
「いいよ、今月行けそうな日に行こうか。」
タカ君も優しい笑顔で答えてくれた。
その日の夜はサークルの初打ちで、体育館には久しぶりに顔を合わせるメンバーたちの明るい笑顔と笑い声が溢れていた。準備運動を終え談笑していると、女子メンバーの一人が私の首元でキラリと光るネックレスに気づいた。
「あータカ君と奈々、お揃いのネックレスしてるー!」
その言葉に他の女子メンバーたちも「えー!可愛い!」「いつの間に?」と私たちを囲んで冷やかし始めた。
少し照れながらも私は嬉しくて顔が綻んだ。
「クリスマスにタカ君がプレゼントしてくれたの。」
「一緒に選んだんじゃないんだ?」
「うん、タカ君がサプライズで選んでくれたの」
と自慢げに答えた。
すると男子メンバーたちがニヤニヤしながらタカ君に視線を送る。
「もしかして孝志が奈々ちゃんとお揃いにしたかったりしてー?」
タカ君は顔を赤くしながら慌てて否定した。
「べ、別に、そんなつもりは……奈々が好きそうなデザインだと思って選んだだけだよ」
その必死な照れ隠しに私はクスッと笑ってしまった。タカ君のそういう素直じゃないところも好きだ。
「ふーん、そっかなー?」
「奈々、愛されてるねー」
「タカ君、奈々の事大好きなんだね」
「奈々も叫んじゃうくらいタカ君のこと大好きなんだもんね」
「もー恥ずかしいからその話は秘密にしてよ!!!」
女子メンバーたちもニヤニヤしながらからかってくる。
タカ君と私が照れて困っている姿を見てからメンバーたちはニヤニヤしてそれ以上は冷やかしてこなかった。
「この二人見てるとラブラブで癒されるし嫉妬するわ」
大樹さんが言っているのを聞き、周りも笑顔でうなずいていた。何かあったら心配して寄り添ってくれるこのサークルが大好きだった。
「タカ君、このネックレスありがとう。すごく嬉しい」
帰り道、改めてそう伝えるとタカ君は少し照れたように笑い「気に入ってくれてよかった」と返してくれた。私はタカ君の手を握ってそっとキスをした。