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体の中が熱い。
消化しきれない熱を持て余しているようで、フワフワする。
「……うあ、蒼愛」
声が呼ぶ方へ意識を向ける。
引き上げられるように目が開いた。
「……紅優?」
紅様、と呼ぼうとした口が、勝手に新しい名前を呼んだ。
いつもと変わらない笑みが、蒼愛を見下ろしていた。
「もう、前の名前は呼べないでしょ? 番の契り、ちゃんとできたね」
紅優が蒼愛の隣に横になった。
腕枕してくれる紅優は裸だ。
よく見たら、自分も裸だった。
(そっか、僕ら、番になるために、名前を与え合って、体を、繋げたんだ)
名前を与え合ってから、頭がぼんやりして、やけに気持ちが良かった。
気持ち良くてフワフワぼんやりした状態のまま、紅優と繋がった。
(体を繋げたの、初めてだ。僕ら、本当に番になったんだ)
お互いに口淫したり、指で気持ち良くしてもらったりはしていたが、繋がったのは初めてだった。
(紅優はきっと、この日のために僕の体を馴らしてくれてたんだ)
手を伸ばして、紅優に触れる。
確かな熱を感じられた。
「紅優、あのね、僕、今、とっても幸せだよ」
胸に溢れる気持ちを伝えたくて、言葉が口を吐いて出た。
蒼愛の手を摑まえて、紅優が自分の頬にあてた。
「俺もだよ。大好きな蒼愛が俺の番になってくれて、一緒に生きてくれて、幸せ」
紅優の笑みが本当に幸せそうで、蒼愛も嬉しくなった。蒼愛が紅優と二人で見付けた幸せの一つ目だ。
「僕はちゃんと、紅優のモノになれた?」
体をぴたりと添わせる。
紅優の腕が蒼愛を包んでくれた。
「なれてるよ。だから蒼愛も俺を自分のモノだと思ってね。俺はもう蒼愛の紅優だよ」
「僕の……。独り占めして、いいの?」
「いいよ。これからは、蒼愛だけの紅優だ」
紅優が蒼愛の髪に口付ける。
出会った頃からされている仕草なのに、今日はとてもくすぐったくて嬉しい。
蒼愛は紅優の大きな胸に口付けた。
「僕の紅優、僕の」
口に出したら恥ずかしくて、嬉しくて、やっぱり胸が擽ったい。
こんなに大きくて大切な自分だけの宝物を貰ったのは生まれて初めてだ。
一日一個のお願いを一生分使い切ったら、何よりも大切な宝物になった。
(万華鏡を貰った時より、何倍も嬉しい)
あの時だって、相当に嬉しかった。
自分だけのモノなんて、もらったのは初めてだったから。
そう思ったら、涙が滲んだ。
「これからは、ずっと二人でいようね。ずっとずっと、二人で生きようね」
紅優となら二人でいるだけで幸せだ。
生きるなんて前向きな考えを口に出す日が来るなんて、思わなかった。
今は素直に、生きたいと思える。
「二人でいるのが当たり前な毎日を一緒に生きよう。永遠に愛してるよ、俺の蒼愛」
紅優の口付けが言葉を吹き込む。
まるで誓いの言葉のようで、滲んだ涙が流れた。
誰かに愛されて、誰かを愛せる今が、たまらなく幸せだった。
これが幸せなんだと、それはとても嬉しくて温かいのだと、初めて知った。