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第3話【神シリウス戦①】

 入学式典の翌日。俺と花音は理事長と共に厳重に管理された部屋に来た。

 部屋の中央には神が作り出した円状の石碑が置かれている。


「これが神の創り出した石碑だ。ここに君達の持ってきたスフィアを嵌めればシリウスとの頭脳戦が始まる。準備はできてるのか?」

「もちろん」


 俺と花音が箱からシリウスのスフィアを取り出すと少しだけ光を放ち少し宙に浮いた。

 そしてスフィアは自身で石碑の穴に向って行った。


「うっ……」


 スフィアが穴に嵌ると同時に部屋は物凄い光に包まれた。


 そして目を開くと、そこはさっきまで居た部屋ではなく大きな塔の入り口の前だった。

 目の前のドアがゆっくりと開き、俺と花音はゆっくりと中へと入った。


「おや? まさか今回の挑戦者は君達二人だけなのか?」


 中に入ると待っていたのは銀髪に犬の耳を生やした一人の少女だった。


「俺達二人だけだ。それで、お前がシリウスか?」

「その通り。余こそが神であるシリウスだ。それにしても本当に二人だけで余と戦うつもりか?」


 シリウスは頬杖を付きながら呆れたようにそう吐き捨てた。


「まぁ、ちゃんと余のスフィアを持っているって事は遊戯の腕前は間違いないようだけど? もしかして二人だけで余に勝てると?」

「それはやってみないと分からない。なんせ俺はルールも何もかも分かってないんだからな」

「ふむふむ。じゃあルールの説明と行こうか……ところで隣の彼女はいつまで彼の後ろで隠れてるつもりだ?」

「へ⁉ あ、あまりこういう事に慣れてなくて……だって今も沢山の人に見られてるって事ですよね……」


 花音の言う通り今も全国に俺達の様子がリアルタイムで大勢に見られている。


「まぁ余は遊戯ができればいいんだけれど。それじゃあ改めて、余の遊戯のルールは単純。この塔は十階建て、君たちの勝利条件はその十階に居る余を倒すか余のスフィアの破壊のどちらか。そして君達の敗北条件は余のペット、もしくは余に戦闘不能、つまり体力をゼロにされるかスフィアを破壊されるか。そのどちらかだ」


 そしてシリウスは俺達の方へ人差し指を突き出し二度曲げた。


 すると俺達のポケットからさっき石碑に嵌めたはずのスフィアが出てきた。


「君はどうやら人数が少なければ遊戯は有利になると考えたみたいだね。その考えに至るのは褒めてやろう。けれどその考えは的外れかもしれないよ」


 そう言って神は指を鳴らし、スフィアを巨大化させた。


「なんせこのスフィアのHPはスフィアの数、つまり挑戦人数によって変化するんだから。スフィアが多ければ多いほどスフィアのHPは上がる。君の考えは裏目に出ちゃったかもね」

「HPの数値が変わるのはスフィアだけだろ? つまり俺自身のHPは何人居ても変わらない」

「ふふ、君面白いね。普通なら絶望すると思うんだけれどその表情、全然諦めてない」

「それで? 他にも遊戯の説明はあるんだろ?」


 するとシリウスは笑いながら目を光らせ俺達を光に包んだ。


「さっきまでの君達なら余のペットの相手すらならない。余のペット相手に数秒も持たないだろう。けれど今、余の能力を授けた君達なら余のペットともちゃんと戦える。試しに余に向ってスキルを使ってみると良い」


 すると眼前にゲームの攻撃画面のようなものが表示された。


「な、なんですかこれ⁉」


 隣にいる花音にも同じように見えているらしいが、俺には花音の画面は見えていない。つまりこの画面は他人には見えないという事か。


「この画面は脳内で思い通りに動かすことができるよ」

「とりあえず一番上のスキルを……っと」


 するとシリウスに向い大きな火の玉が飛んで行った。それをシリウスは手の平で消して見せた。

 そしてさっき使ったスキルに時間が表示された。

スキルにはクールタイムがあるみたいだ。


「す、凄い!」

「おいおい、それは流石にチートすぎないか? こんなんじゃお前にダメージ与えることなんてできないじゃないか」

「全然チートじゃないよ。だってこのスキルは君達だって使えるんだから。まぁ勿論スキルのレベルは全然違うけどね。君達のスキルレベルは1。余のスキルレベルは……内緒にしておこうかな。勿論スキルレベルを上げる事もできるよ。余のペットを一定の数倒すか塔を一階上るごとに1レべル上がるよ」


 シリウス曰く、階が上がる事にシリウスの言うペットとやらの強さが上がるらしい。


「余もこうして遊戯ができるのは滅多にない事だから少しは楽しませてほしい所なんだけど……」

「心配するな。今後絶対に忘れられない遊戯にしてやるよ」

「ふ~ん。じゃあちょっと遊戯の難易度を上げちゃおうかな~」

「ちょ、ちょっと紅羽さん余計な事言わないで下さいよ! ただでさえ二人だけなのに!」

「あはは、冗談冗談。余たち神はつまらない遊戯は絶対にしない。難易度なんて上げちゃったら君達二階で負けちゃうだろうし、そんなの勿体ないからね。それじゃあせいぜい楽しませてよね」


 そう言ってシリウスは光に包まれて姿を消した。


「……遊戯スタートか」

「ど、どうするんですか紅羽さん! やっぱりルール的に二人じゃ無理ですよ! 直ぐにリタイアしてもう一度スフィアを獲得してもっと大人数で……って聞いてますか⁉」

「聞いてはいるけど、やっぱり神……シリウスは言ってたじゃないか、つまらない遊戯は絶対にしないって。やっぱりシリウスは認めていた、人数はさほど関係ない事を」

「でもシリウスは紅羽さんの考えを否定してましたよ」

「いや、否定はしてない。シリウスは全部疑問で返している。かもしれないって」


 そう言ってくるって事は人数はどうでもいい。一人だとしても勝てる糸口があるって事だ。


「早速二階に行ってみるか」

「一階にはペット……敵は居ないみたいですね」


 ゆっくりと二人で二階に上がると犬の様なモンスターが二対待っていた。


「なんですかあれ! 私達よりも大きいですよ!」

「とりあえず俺は右を倒すから花音は左を倒してくれ」

「ちょ、ちょっと紅羽さん!? あーもうっ!」



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