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第21話 出発!

 「よし、僕も村の方達のために行動を始めますか」

 「アドリウスさん、みんなをお願いします」

 「うん、アレトくんも気をつけてね」


 「こっちもカザミ村で待機するとしますかな、セッカ団長に来ていただくよう強く伝えたが来るかな」

 「セッカさんは何かとお忙しい方ですからね、ではアレトさんリーナさんをその担架に乗せていきましょう」


 横には簡易的な木の担架があった、その担架は人が落ちないよう柵の部分に高さがあった、担架というよりは浅い棺桶のような構造に近い。その担架はたった2本のつな魔吸馬アトロップの口元へと繋がっている。

 「私にも手伝わせてくれ、ほらヴォルク、あんたも手を貸しな。先生、あそこに置いてある布は使っても良いのかい? 」

 「ええ、大丈夫だと思いますよ」

 「ほら、早く手伝うんだよ!あと、あれもとっておいで、それにあいつらが食えそうなのもいくつかぶん取っておきな」


ヴォルクは今までの狂犬ぶりが嘘だったかのように指示に従い動き回っている

 「ヴォルクのお母さん、ありがとう」


担架に乗せられたリーナの様子はただ寝ているようにしか見えなかった、その表情にアレトは少し安心した。

 そして魔吸馬アトロップの属魔の力によりその担架は、ゆっくりと宙へと浮き上がり魔吸馬アトロップの背に乗っかる


 「いいんだよ、まだまだ恩は返せてないからね、恩返しの一歩目といったところさ、おい医者!あんたがぼーっとしてどうすんだい、この子はもう乗せたけど、これから何をすればいいんだい? 」

 「!!……安静であれば今のところ大丈夫です」

 「ふふ……この状況ではそのお医者様は指示がないと基本動けない立場なんですよ、そんな怒らないでやってください」

 「ははは! 」

思わず笑ってしまった、みんながリーナに対してこんなにあたふたしている状況がなんだかおかしかった


 「何がおかしいんだ、オレに説明しやがれ」

 「こら、ヴォルク!あんたの恩人になんて口の聞き方だい!? 」

 「いてっ!! 」

ヴォルクはゴツッと強めに頭を殴られていた、殴られたところを抑えながら痛みを我慢しているのか涙目になっているような気がした


 「あっはっは! 」

 「テメェ、オレが殴られているのがそんなに面白ぇか! 」

 「こら、あんたまた! 」

 「待って待って待って、ヴォルクのお母さんいいんです」

その場の親子が動きを止めた。そしてそのまま続ける。


 「ヴォルクごめん、今ので笑ったわけじゃないんだ。なんかこう……みんながリーナのためにバタバタ動いてくれて、新しい友達のヴォルクまで動いてくれて、なんだかリーナは絶対に助かるなって思えてきたら嬉しくってなんだか笑ちゃった、ありがとうみんな」


 少しの間沈黙がこの場を通り過ぎた


 「え、俺……今の相当変だった? 」


次第に周りが穏やかな笑顔へと変わっていく、ヴォルクは笑っていなかったけど


 「あんた、いい男になるよ」

ヴォルクのお母さんは優しく頭を撫でてくれた。


 「テメェと友達になった覚えはねぇ! 」

 「ヴォルク、テメェせっかく出来た友達を無下むげにするんじゃないよ、初めての友達だろ!? 」

 「いてっ!さっきからいてぇんだよテメェ! 」


親子の小競り合いが始まろうとしていた中、ゼフィールが口を開けた。


 「ではでは、今の流れを汲んでこのグループの団長はアレトさん、副団長はヴォルクくんでよろしいですね」

 「俺の方が強ぇのになんで下なんだよ」

 「ふふ、強さで言うと、私、お母様、お医者様、ヴォルクくん、アレトさんですよ」

 「俺がやっぱり一番弱いのかー! 」

 「ですが、リーダーとは強さだけで決まるものではないんですよ」

 「そうだよ、ヴォルク、初めての友達から存分に学びな! 」

 「アレトさん、予定より少し遅れていますが行きましょう、リーダーらしく掛け声なんてはどうでしょうか」


 「わかった、その前にヴォルクのお母さんって名前なんて言うの?それにお医者さんも」

 「そっか、遅れたね、私の名前は“シグレ”だよ」

 「私は“ラケト”です」

 「シグレさんとラケトさんね」


名前を聞いたアレトは満足げな表情をし、少年のリーダーらしく、今までの“何でも屋”のリーダーの時のように掛け声を発した。


 「リーナとシグレさんのために、しゅっぱーーつ! 」

アレト率いる、首都スセイリアへ向かうグループは南に向かい、歩き出した。

 そこからアレトたちの姿が声も届かないほど小さくなった頃には、そのグループを見守るように村の人たちが集まっていた。


 「さぁ皆さん、僕たちもエアリアスに向けての準備をしますよ、ただ人手が足りてなくて時間がかかりそうですが」

少し寂しそうなな不安そうな村の人々に対してアドリウスは声をかけた。


 「俺たちがいるぞ! 」

1人の小さな少年が力強く声を発した。


--アレト兄ちゃんはいなくても出来るぜ

--リーナお姉ちゃんがいなくても私が怪我の面倒は見るわ

--困ってる人がいれば助ける

--僕たちは“何でも屋”だからね


 「……そっか、アレトくんはカザミ村でも……うん!じゃお願いしようかな!正直助かるよ!」


アドリウスとその騎士たちはその子供たちに出来そうなことを指示していった。そしてさっきの少年はもう1度アドリウスに話しかけた。


 「エアリアスについたら“ほうしゅう”払えよな」


 「う、うん……ははは」(しっかりしてるなー……はは)







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