「首都まで遠いの?」
「ええ、遠いですよ。歩きとは言ってますが
「え、僕に言ってますよね……すみません1体が限界です! 」
アドリウスは無理なお願いに、何か吹っ切れているのか非常に明るく、元気に返事をした
「1体ですか……すくなくとも2体は欲しかったですが状況的に仕方ないでしょうし、感謝しています」
「いえいえ……ははは」
「アドリウスさんありがとう」
アドリウスはアレトの無邪気な感謝に、ほんの少し引きつった笑顔で
「先生、これってリーナを運ぶためってことだよな」
「ええ、話を戻してなるべく早いほうが良いですし、5分後には出発します、良いですね、ヴォルクくんも急いで準備してください」
「なんでオレもなんだよ」
「ボウズの母親が病気の疑いがあるからだ」
「……」
「ボウズ、そう落ち込むな。今日の朝ボウズのお母さんが意識をハッキリと戻したそうだぞ」
「!! 」
その言葉を聞いたヴォルクは一目散に母親の元へと駆け出した。その様子を見てアレトも提案した。
「俺の母さんも連れて行っても」
「今回はダメですよアレトさん、ヴォルクくんのお母さんは特殊な状態なので連れていくことにしているんです。それに、動けない人はなるべく少ないほうがいい」
「…………わかった。今はリーナ優先ってことだよね、でもなんでエアリアスに行ってから、その“迎え”を待つってことにしないの、ほとんど方向同じなんだよね? 」
「ええ、確かに南方向なのですが、エアリアスはどちらかというと東方向と言ったほうが正確です。加えて首都スセイリアは南側ですが、少し西方向に
「そっか、リーナのための最前の道ってことか、俺も少し準備してくる。お医者さんリーナをお願いします」
アレトは走った、特に持ち物など準備するものは頭に無かったが、ここでしばらく村の人たちと、母さんと別れることになったので別れの挨拶をするためにその場を少し離れた。
「みんな!俺とリーナは少し離れることになったから、みんな元気でいろよな!」
急な報告を受けた村の人々、子供たちは混乱していた。
--どういうことだ?
--にいちゃんどうしたの
--ん?……ん?……
反応は様々だ、だが5分しかないアレトは詳細を説明をする暇がない。
「急いでいるんだ、ごめん! 」
「どういうことじゃ、アレト」
「じいちゃん!……時間がないから簡単に。先生とリーナの為に首都スセイリアに向かうことになった」
ハゼンは鋭い眼差しでアレトを観察した。
「その目……急いでおるがとても真面目なのが伝わるわい。……怪我はするなよ、リーナの為にも」
「わかってる。急でごめん」
「人のために動くときは胸を張れい。……おみあげ待っとるぞ」
「うん!何かあったときはじいちゃんの技、うまく使うから! 」
「やれやれ、忙しいやつじゃ……もう行きおったわい」
母さんのいるテントに駆け足で入る、そこには今まさに診察を受けている眠っている母の姿があった。
「お医者さんごめん」
「これこれ、急に割り込むんじゃない」
「母さん、急だけど今からリーナとスセイリアに行ってくる。リーナが今大変なんだ、だけどきっと大丈夫だし、久々にお父さんに会えると思う。初めて行く他の街がこんな状況なのは予想外だったけど、リーナを治したらすぐに母さんの元に来るから待ってて……」
母さんのいる手をギュッと握り締めた。--母さんも優しく握り返してくれたような気がした。
「お医者さん、母さんをよろしくお願いします!」
「ん!?……お、おう」
「母さんもこの旅を祈ってて! 」
「きゅ、急じゃな…………むっ!これは!! 」
母の容態の変化に気づいた時にはアレトはすでにテントを出ていた。
「はぁはぁ、戻ったよ先生」
「おや、ピッタリですね」
「すごく早いね、僕と同じくらい? 」
「急いだんで、はぁはぁ……ヴォルク!……とお母さん?」
そこにはヴォルクと一緒にヴォルクの母親が立っていた。
あの森の騒動の時は傷だらけであまりわかっていなかったが、男勝りの雰囲気を
「あんたがアレトかい、うちの子と私が世話になったって聞いてるよ」
「どうも、世話になったってそんな大袈裟な、俺もヴォルクに助けてもらったのでお互い様です。そんなことより無事で良かった」
「さて、こんな唐突な顔合わせだけど、もう出発なんだろ? 」
「ええ、では皆さん行きましょうか」
「うん、リーナのために、そしてヴォルクのお母さんのため……に? 」
「事情は歩きながらお話ししますよ」