「まあ、ぼちぼち。この世界のことも話しましたし、温かいうちに食べてしまいましょ?」
「ヴィーナス様はシャワー浴びてこなくていいんですか?」
「えぇ、ご飯食べてからでいいですよ。ほら席についてください?」
ヴィーナス様と向かい合って席についた
どこかそわそわしているヴィーナス様から一つ提案をされた。
「星くん、あれやりますよ、あれ!」
「……あれって何ですか?」
「食べる前にやるやつですよ!」
あれか!
互いに少し笑ってから揃って手を合わせた
じゃあ、いきますよ……?心の中で考えヴィーナスを見る。
———『「いただきます」』
ヴィーナス様が満足そうに笑っていた。
「誰かと一回いただきますって言ってみたかったんですよね」
久しぶりに誰かと一緒にいただきますしたな……なんか、こそばゆいけど、ちょっと楽しいな。
「俺も、最近はずっと1人だったので…悪くないですね……こういうの」
「昔から星くんの姿はみていたのでご飯を食べる時に手を合わせていただきますって言うのは知っていたんですが誰かと一緒に言うのは初めてだったから楽しいですね」
そっか、“いただきます”って日本だけだよな……
普通にヴィーナス様と話せるから忘れてたけど、この人は神様だからこう言った習慣はないのか……
ちょっと照れくさいな……
冷める前にご飯食べないと!味噌汁茶碗を手に取る。一口すすると……もう動けなかった。やばい、これ……
少し不安そうにしながら聞いてきた。
「星くん……ご飯の味はいかがですか」
「……あっ、これやばいです。めっちゃ美味いです、今まで食べた中でいちばん美味しいです。」
それを聞いたヴィーナス様は、先程まで不安そうにしていたのが嘘だったかのように満面の笑みになり、自信満々にしゃべりかけてくる。
「そうでしょう?そうでしょうとも……!!女神たる私が作ったのですから当然です。」
まじ美味い、これ、やばい
語彙力がなくて表せない、シンプルな料理なのに何でこんなに美味しいの?
「ヴィーナス様、これ毎日食べたいです」
白米をかきこみながら言う。
俺が夢中で食べてるのを見て、ヴィーナス様が笑った。
「わかりましたから、ちゃんと飲み込んでから喋ってください。詰まっちゃいますよ?」
少し照れくさそうに言った。
「まあ、そんなに言ってもらえるなら?毎日作ってあげて……も、——いえ、やっぱり毎日はめんどくさいです。せめて交代制で作るならいいですよ。」
ご飯を食べる手を止めヴィーナス様に尋ねる。
「……一人暮らしの男飯ですよ、俺、こんなに美味しくできないのにいいんですか?」
頬をかきながら、少し照れくさそうにヴィーナス様は言った。
「……さっきは、偉そうに言いましたけど最初は分量を間違えたり、焦がしたりで散々だったんですよ?」
ヴィーナス様でも最初からなんでもできるわけじゃないんだ、こんなに美味しいんだもん、たくさん作ったんだよな……
俺は、努力しているヴィーナス様に、なんだかすごく……感心してしまった。
そう思った瞬間、イタズラっぽく笑ってこう言ってきた。
「星くんは、努力してる女の子にグッとくるんですもんね?」
「え、嘘だったんですか……?」
「……どっちだと思います?」
こんなこと言うけど、ヴィーナス様のことだから、ちゃんと努力したんだろな……
俺は、まっすぐ見つめ、はっきり言った。
「努力したと思いますよ?だっておれ、努力する女の子、大好きですから!」
さっきのお返しですよヴィーナス様、心の中でヴィーナス様に伝えた。
「……これは、1本取られましたね。じゃあ……そう言うことにしておいてください」
その時のヴィーナス様の耳は少し赤く染まっていた気がした。
「それより、次の当番は星くんですよ!」
「わかりましたよ……さっきも言いましたけど期待しないでくださいよ?……不味くても知りませんから!」
「誰かに作ってもらうのがいいんじゃないですか、……自分で作ると美味しいって感じしないんですよ」
こんなに美味しいのに……と考えているとヴィーナス様は続けて言った。
「明日のメニュー考えておいてくださいよ?星くん、楽しみにしてますから。」
「……頑張ります」
これは、責任重大だ。頑張らないと…心の中で決意する。
……でも、不思議と嫌じゃなかった。