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第14話 ヴィーナス様がシャワーから出てきません

 その後も他愛のない会話をしながらご飯を食べた。


 「じゃあ、ご飯も食べたし、シャワー浴びてきます。……覗いちゃダメですよ?」からかうような笑顔で言ってくる。


 もうこの女神は……


 「覗かないんで、早く行ってきてください」


 「そんなこと言って〜、覗きたいっていう考えが見え見えですよ」


 なにも考えてなかったんだけど……!?


 「今は、そんなこと思ってないですよ!」

 「今は……?」

 「……言葉の綾です。ほら、早く行ってきてください!」

 「はいはい、わかりました。行ってきますね!」


 ——20分後


 いや、遅い、まだか、眠いんだけど……

 ヴィーナス様、髪長いし洗うのも時間がかかるのかな……?


——10分経過


 女性ってシャワー長いって本当だった……

 神様だったら魔法で一瞬だろうに……


 ——さらに10分経過


 遅すぎる、浴槽に浸かっているならわかるけどシャワーって身体洗うだけじゃん。

 何をそんなに……ヴィーナス様もスキンケアとかするのかな?もしかして、俺が覗きにくるの待ってたり……?いやいや、ないな!


 あったとしても絶対ネタにされるだけだ。

 ……眠い、俺どこで寝たらいいんだ?ソファもないし……


 ——限界……少しベッドで寝かせてもらおう

 ヴィーナス様がきたら起こしてくれるでしょ、

 明日からのことも聞きたいし……


 ふらふらになりながらベッドに勢いよく倒れ込み、うつ伏せになりながらヴィーナス様と会ってからの事を思い出していた。


 今日はたくさんのことがあったな、恥ずかしいこともあったけど……

 いや、恥ずかしいことしかなかった……でも、それ以上に楽しかった。

 誰かと喋るのってあんなに楽しいんだ。



 そのまま眠りに就こうとゆっくり呼吸を整える。星の鼻に石鹸のいい匂いが流れ込んでくる。


 あれ……なんか、めっちゃいい匂いする。

 石鹸のような……とても優しい匂い……

 何これ…めっちゃ落ち着く。


 神様のベッドってやっぱり特別なんだ……

 俺は30秒もたたずに眠りについた。




 ※ヴィーナス視点


 星くんとリビングで別れた後、私は浴室に入った。


 シャワーをひねると、すぐにあたたかいお湯が流れ、足元に跳ねる。身体を洗いながらヴィーナスは明日のことを考える。


 ……さて、明日からはどうしましょう?

 先ほど星くんが言っていた。時計を置くのもいいですし……どんな時計にしましょうか?


 長い髪を持ち上げて、ゆっくり濡らし、濡れた髪を優しくすき、シャンプーを手に取り、泡を立てて髪に馴染ませていく。


 その後は何をしましょうか?

 あ、……魔法の練習をしてみるのもいいですね。見ている感じ、この世界にも身体が馴染んできてる頃ですし……もしかしたら、意外に魔法の才能があるかも?……いや、それはないですね

星くんですもん。まぁ、1個ぐらいは使える魔法があればいいですけど、使えなかった時はからかってあげますか。


 泡立てた髪をしっかり流し終え、腕から肩、胸、腹、腰、足の順にゆっくり身体を洗っていく。


 それにしても、今日は楽しかったですね……

 あんなに笑ったのは久しぶりでした。

 上映会の星くんの顔と言ったらもう……

 ふ……ふふ、今でも思い出し笑いしちゃいそうです。



 当然ですが、星くんもしっかりと男の子なんですね……普通に……泣いたり、笑ったりして、素直だと思ったら嘘をついたり……見ているだけのはずだったのに。

 ……私、どうして、こんなに気になってるんでしょう……?


 ————私達、神とはやっぱり違いますね……


 そんなことを考えながらシャワーを浴び終え、

浴室を上がる。


 「……それにしても、来ませんね?」


 この美しい女神ヴィーナスがシャワーを隣の部屋で浴びているんですよ?

 普通の男なら覗きにきますよね……?

 他の男神なら浴室の前に行列ができますよ!


 ちらっと扉の方を見ながらバスタオルで身体を拭いていく。


 覗きにきたら明日1日中からかってあげませんと……


遅い、遅すぎます。もう30分ぐらい経ってますよ。


 まだ、服はあえて着ずにバスタオル一枚を体に巻いて、髪を乾かしていく。


 え……もしかして、私って魅力ありませんか?

 いや、そんなはずはありません。私は、美の女神なんですから。


 全く、こんなお約束イベントもこなせないなんてシャイボーイなんですから。





 ……まぁ、星くんが来なかったことに、ちょっと安心してる自分もいますけど。


 私は髪を乾かし終え、寝巻きに着替え、浴室を後にした。



 ———勢いよくドアを開けリビングにいる星くんに声をかける。


 「星くん!いい子に待っていまし——

  ……あれ、寝てますね……」


 私のシャワーよりも睡眠をとりましたか……

 まぁ、いろんなことがありましたからね。



 ———ベッドで寝てますね、じゃあ私はどこで寝たら……。


 「星くん、星くん、起きてください!うち、布団一つしかないんです。私が寝れません、起きてください」


 ヴィーナスは星の肩を揺らして起こそうとするが深い眠りについた。星が起きることはなかった。


 一回ため息をつき、どうするか考える。……私が床で寝るのは絶対にないですね。

ここにきたばかりの星くんを床に落とすのも流石に……


 考えるのをやめた。


 「もう……女神と一緒に寝れるなんてすごい幸運なことなんですよ!わかってます……?」


 星くんの頬突きながら言う。


 「なんてだらしない顔をしているんですか!本当にもう……油断しすぎですよ、星くん」


 私は小さく笑って、そっと布団をかけた。


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