「あ……あぁ。もちろんいいですよ。それでは倉井さん、放課後に。資料室で待っていてください」
そして放課後。狭い資料室に入るとすでにあやつが待っていた。半村はニコリと笑って私を出迎え、向かい側の席に着くよう目で合図する。
私はドアの鍵をかけ、半村の向かい側ではなく隣の席に着く。半村は少し身を引いた。
「倉井さん、そこに座るんですか」
「うん。こっちの方が教えやすいでしょ?……せんせ、時間作ってくれてありがとう」
「いえいえ……勉強熱心な生徒の思いには応えなくてはね!」
「じゃあ早速……教えて欲しいの。ここ……」
「どれどれ……あぁ、ここか。ここはね……」
……こうして始まった半村との放課後授業。
それは驚くほど……楽しかった。
真面目すぎるその男、谷間をチラチラ見せれば目を逸らし、足を組み替えれば耳を赤くする。胸を押し付ければうつむいて、「倉井さん……当たってるから……」と、小声で呟いて。
「せんせ……なんか照れてる?」
「いや!その!これは……」
「せんせーのえっち。でもかわいい」
「……倉井さん……!ダメです、あっ、そんな……もう……」
……あぁ!
なんていい反応だ!これぞウブな男!
そうだ、この女体を欲しがれ!でも決してくれてはやらぬ!
……その必死に我慢する、苦しそうな顔!
よい。よいぞ、もっと苦しめ!
あぁ楽しい!
それはなんと有意義な時間であったことか!!――
◇◇◇
「悪趣味」
「だまれ篠田」
冷めた目を向けてくる篠田を、パトラは一喝。
篠田はあきれ顔でため息をつき、両手をあげて降参のポーズ。
「そんな子供に遊ばれちゃあ大王じゃなくてもやり返したくなりますよ!……それで? そのあと半村先生はどんな『裏切り』をパトラさんにしてきたんです? そういえばお二人は互いに転生者だって気づいてるんですか? っていうかそもそも転生ってなんな」
パトラが机を、ドン!拳で叩いた。
「ひっ」
「……あやつは……あやつは……!!」
「あやつは?!」
「私に……偽のテスト範囲を教えてきたのだ。私の色香を存分に浴び、今度のテストはここから出るぞと緊張した面持ちでいいながら、絶妙に!違う範囲を!教えて私を騙したのだ!……そこしか勉強しなかった私は合格点が取れず、貴重な夏休み……補習のため登校せねばならなくなった!」
「平和〜〜」
「テストを返却するときの半村のあの顔……!『倉井さん、一緒に補習、頑張りましょうね』と……ニヤリと微笑んだあの顔……!すべて作戦通りとでも言いたげな、あの憎たらしい顔!無駄にいい顔なのが余計に腹立たしい」
「……つまり、パトラさんは半村先生をもてあそんだ。でも半村先生はわざとウブなフリをしてパトラさんに悪い点を取らせて、夏休みの補習に来させた、と……。え、半村先生、もしかして肉食系?!」
「そうだ。半村め。ウブな男のフリをして獰猛な男!」
「うわぁ、面白くなってきたぞ!!」