(で、本題に入るが)
(あ、はい)
(改めて言うが、これから君を危険な目に巻き込むことになる)
(はい)
(場合によっては命を落とすかもしれない)
(はい)
(俺はその責任を取れない)
(はい)
(それでもいいか)
(もちろんです。ボクはあのとき、一度死んだと思っています)
(俺は君の体を奪おうとしたのだが……)
俺の言葉を無視してアルトが続けた。
(アルノさんの復讐、それって正義を実行するためですよね)
一瞬、俺は答えに詰まった。
(ああ……いや、そんなに格好いいものではない。俺の私怨だよ)
(そうは思えません。だから、ボクの体を使って絶対に勝ってください)
(ああ、それはもちろん、最初からそのつもりだ)
(お願いします。ボクを育ててくれた村の人たちのためにも。だけど……)
(ん?)
(リリアを巻き込むのはやめてほしいんです……)
(それは当たり前だ。彼女を連れて行くのは安全のためだから。安心してくれ)
(約束ですよ)
(ああ、王都では俺の師匠に預けようと思ってる)
(えーと確か、大魔術師の?)
(そうだ。老いたとはいえ、魔法だけで闘えば、たぶん俺より強い)
(そうなんですか。それは心強いですね)
(ただ、彼は表立って王に反逆することができない。かつての勇者パーティーの一員だからな)
(ああ、そうなんですね)
(とはいえ、かくまうくらいのことなら協力してくれるはずだ)
(わかりました)
(で、君が王都に行くことをリリアに提案した形になってるだろ)
(はい)
(君が大魔術師のことを知っていたことにしておく)
(はい。そうしておいた方がいいですね)
それに、アルトのことをもっと知っておいた方がいいだろう。
(それから、君の両親と、村で育ててくれた人たち、さっきの村の悲劇を思うと本当に申し訳ないが、どんな人だったか教えてくれないか)
(大丈夫です。悲しんでいても帰って来るわけじゃないので、ボクの方が生かされたんだと思うようにします。そんな簡単に心の整理はつかないかもしれませんけど)
本当に心の強い少年だ。
(ああ、本当にすまない。俺がもっとしっかりしていれば、村が襲われることもなかったかもしれないのに)
(アルノさんは悪くないですよ)
(ありがとう……君は強いな)
(そんなことないですよ。じゃあ、ボクの両親のこと、説明しますね)