僕たちの操縦する
各パーツの組み換えによる、高い汎用性と拡張性を持ち、理論上だけは、あらゆる戦場に対応できる点から「戦術的な観点から見て最優秀の兵器」と評されている。
極端な話、ただ脚部を換装するだけで、上半身が人型の車両兵器にも、水上船やジェットホイルよりもずっと高速で動ける。フロート型の水上兵器にも、時間をかければ換装が可能だ。
実際、そこそこの小金持ちは、武装させずに遊び用や競技用、作業用に使っている人も多い。
そんな最優の機体を、個別に高精度カスタマイズして駆る。世界で二九人しか居ない、たった一人で戦略を覆しかねない、常識外れのトップエース達。
それが、目の前で通信してきた、
「嘘だろ……!!?」
十個くらいの束ねたエンジン・ブースターが、マドナグの十二時の方向で、
なんて奴だ。掟破りにも程がある。デブリによる宙域汚染とか、まったく考慮していないであろう非人道的な、最低最悪の攻撃方法。
「このっ……!!」
照準の
「させるかぁああッッ!!!」
トリガーを何度も引いて、光束のレーザーが
「か、回避ーーー!!!」
「きゃああああああああああ!!?」
メインの一番大きいブースターの残骸が、
「大火力ですね、連射性も高い。これは、一撃も貰いたくありませんね」
コノヤロウ。人の
──── 完全にアッタマきた。ブッ殺す。
「…………っ!!」
ペダルを蹴り抜いて、かっ飛ぶ。距離を詰めれば、それだけ当たりやすくなる。最強の傭兵だか何だか知らないが、知った事かぁ!!
「速いっ……!?」
「いただくッッ!!!」
距離100メートル以下。下の小惑星群に踏み込まれたけど、完全に捉えた。光速のレーザーが光る。この距離なら…………外れた?
「なぁっ……!?」
飛び上がられた、上に、高く。
光速が、光の速さが、通用していない。
そんな、バカな、なんで光を避けられる!!?
「勢いは良い、ですが」
「うわっ……!!?」
回り込まれ、接近警報ッ!!! シールドを!!
「機体の重さまでは、誤魔化せません」
「うわぁあああああああ!!?」
間に合わなかった。シールドの峰ごと、器用にすくい上げるように、両足で蹴られた。ダメージ、ダメージなら下がって、ダメージコントロールを。
これが、
「ぐぅうぅ……?」
「硬い、硬すぎる。何ですかその硬さ、通常では、あり得ない……!」
動揺しているのか。落ち着け、頭を冷やせ。相手の足を見ろ。それで、性能傾向はちゃんと見える。
憎らしいほど的確な選択だ。多くのデブリや小惑星群の中で使うなら、これ以上無くベストだろう。
ダメージレベル走査、問題無し。── 戦える。
敵機は右手レーザー・ハンドガン、左手レーザー・ライフル。僕も訓練で使ったベストセラー品セット。悔しいけど納得のセンスだ。僕もムクやシュミレーターなら、それを選ぶ。肩武装は……。
「舌が、ある……?」
何だ、あの生き物が口を開けたみたいな、生物的なデザインの肩武装は?
あんなの、見た事も聞いた事も無い。
照準波を検知、撃って来るか。
「ええい、これならどうです!!?」
レーザー・ハンドガンと、レーザー・ライフルを連射して撃たれたけど、シールドで防いで下がる。
厄介なところに打ち込んでくる。やっぱり相当な技量だ、上手い。冷静に反撃を、そうだ。
「それならっ……!!」
シールドを腕にマウントしつつ、
両方のマニュピレーターでしっかりとライフルを固定して、2連射撃つ。撃っている途中で腕部を動かして、強引にレーザー照射範囲を広げた。
足場の小惑星と、頭上のデブリに撃ち込んだ。レーザーで破壊した後なら、たとえ逆足でも上手く踏み台にできない。
「なんと、そう来ますかっ……!?」
「貰っ……え、あっ!?」
電子音が高い音で鳴って、残弾1。弾がもう、無い。しまった。つ、使い過ぎた。
「っ……!? なにをしているのですか、撤退、撤退して下さい!!」
「えっ、な、なんで……!?」
あれは、確かその場から急いで離れろって色の信号弾だったはず。だけどなんで。
振り返るとそこには、主砲を
◇◇◇
考える間は無かった。気が付けば機体を反転させて、もう一度フットペダルを蹴り抜いて、マドナグを味方艦二隻の方向に、全速前進させていた。
血の気が引いているのが、自分でも分かる。やめろ、やめてくれ。それだけは、絶対にッ!!
「主砲、副砲、
「停船なさい!! 勝敗は決しました!! そのような行いは許しません!! お止まりなさいぃい!!」
さっきのブースター残骸の衝突被害が酷いのか、
間に合え。照準波を検知、敵機、バイザー付き、正面。しまった、撃たれる……!
「うがぁわああああああああああッッッ!!!」
青いネイビー色のムク。先輩が、バイザー付きに突撃して、小惑星にそいつを強引に押しつけた。いけない。バイザー付きは逆手に、レーザー・ソードを抜いている。先輩が刺される。
残弾1。先輩を避けて、撃てるのか。
「よくぞ、止めたぁあッ!!!」
回り込んでいたカニンガムさんのムクが、先にレーザー・ソードで、バイザー付きの腕を小惑星に張り付けにした。
味方艦二隻に向き直る。マドナグの足を止められたせいで、敵艦はもう間近で衝突コースに入っている。物理的に止める事は、もう……。
「聞こえるか、少年!」
「スーズさん!!!?」
「バックパックのマス・クリーバーを使え、それしか方法が無い!!」
僕と背中合わせに敵に向けて、レーザー・マシンガンを撃ちまくっているスーズさんが、的確に指示をしてくれた。もう、やるしか無い。
一息だけ、大きく息を吸う。
レーザー・ライフルを
異常な出力を持つマドナグを、人が扱えるようにリミッターとして背負わせている。
要はコロニー用建材支柱を、床部品ごと引っこ抜いて、大きい床部分にロケットブースターを六つ、強引にくくりつけた。本来絶対に武器ですら無い、何か。
全高実に11.7メートル。総重量、驚異の62.1t。マドナグよりずっと重く。ムクよりもデカい、鉄と植物混合の塊。
「────
ロケットブースター六つに火をつける。チゲさんが即席で配置してくれた、カバー付きの黄色い点火ボタンを、カバーごと拳でぶん殴る。
ぶっ飛ぶ。六つのロケットブースターに振り回されないようにフットペダルを、今までで一番強く蹴り込む。
マドナグ本体と合わせて、計九つの熱核ロケットブースターが、
「ぶ・ち・ぬ・けぇええええええええッ!!!!」
完全にコントロールは不可能。敵艦の甲板に向けて
衝突警報と異常検知警報がめちゃくちゃうるさい。いろんな計器が乱れて、反物質炉の過負荷警告が点滅。マドナグのエネルギーレベルが、大幅に下がっていく。
「マァアドナァァアアアグッッッ!!!!」
機体内部でも
勇気づけるためだろうか、それともただ、異常を検知しての偶然か。複合センサー。光放熱素材のツインアイが、僕の叫びに応じるように、強く光ってくれた。
〝すごい。まるで、流れ星……〟
誰の声だろうか。リアか、イルマさんか、あの傭兵か。それとも別の誰かか。
閃光の向こう。くの字に折れ曲がった敵駆逐艦が大破炎上し、小惑星に激突している。僕は味方艦二隻を無事守り抜く事を、無我夢中でみんなと成し遂げていた。
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今回のまとめ
カーヴォン君のとんでもない汚染攻撃に、アロー君初めての戦場ということもあり、キレる。
互いに撃ち合い。なかなかの妙手に一進一退。
マドナグ固い。敵艦は停船警告に従わず、無言で特攻。これを、流れ星事、
そらもう。流れ星のシーンはアニメで見たい(3回目) オープニングか、特殊BGM付きで(2回目)そろそろこうやって何回目か書くのが、楽しくなってきましたねヒャッハァー!!
案ずるより折るが易し。いっそ祈るくらいに。願い星ですからね。
点火とか宇宙船っぽくていいですよね。今作のテーマの一つが、宇宙と人との関わりなので、カーヴォン君はマジで、カマしてくれましたね……。
居住区の近くでやったら、裁判沙汰の行動ですからね。傭兵は自由で、それゆえにモラルがたまに悪い。まあ、理由があるのですが、わざわざカーヴォンは語らないでしょう。
いくつか思いついたのは土壇場でしたが、なかなか良い締めになったと自負しています。皆様に楽しんで頂けたのなら、これ以上の事はありません。
では、あと1分だけお時間を下さい。面白かったと思ったり、続きに期待ができると思った方は、フォロー&★★★レビューで応援をお願いします!
以下その方法と、今回は謎の仮面傭兵「カーヴォン」と「マドナグ」の一言と、次回予告です。
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3・★を付与する。★★★3つだと、とっても嬉しいです。実際に泣いたほど喜んだ事あります。
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カーヴォン「ははははっ、どうも、仮面枠のカーヴォンです。勝利を楽しく求めるのがモットーなので、今回も頑張りました✨️」
マドナグ「………………(💢)」
カーヴォン「では、あんまり語っちゃうとネタバレになるので、ご挨拶で。今回も応援よろしくお願いしますね〜👋(ふりふり)」
マドナグ「👋💢💢(無言の側頭部機関砲、カーヴォンに向けて、スタンバイ中)」
次回は、生き残った事を噛み締めつつ帰還。宇宙に咲くヒロイン様ご来訪。美脚で勝負。封鎖連盟の異常性も、一部明らかに。
次回「