全てが、赤く染まっていく。
「──、ア ──!! 右 ────」
「ウォオオオオオオオッ!!!」
「なんて、
また、光の束が迫る。先輩の声が遠い。タイミングをずらした四本づつが二回。全力でフットペダルを蹴って、振り切る。
レッドアウトしていく目で、僕は一回。ヤツは二回。
鍔迫り会う鉄刃と雷光が、
これが、マドナグ。力の一端。
「「化物め……」」
同意見だ。言葉が被ったのか。なんでこれだけのアドバンテージで振り絞って、
「やはり、決め手に欠けますか。そちらを落としても良いですが……」
「くっ……」
先輩は上手くアシストしてくれてるけど、そろそろ弾がヤバい。上手くデブリに隠れてリロードしてるけど、それでも、もう持たない。
ひっきりなしにマドナグから、パイロットバイタル診断警告警報が響く。喉が渇いて、呼吸が苦しい。
長期戦は
「貰ったッ!!!」
「なに……?」
震える手を伸ばして、立体映像を望遠、拡大。プラズマ収束砲の砲口が、手足を片方ずつ失ったカニンガムさんのムクに、レーザーで破壊されていた。
「よ、よし……!!」
「ちっ……だから、もう一人よこせと言ったんですよ!!」
目に見えてプラズマ集束砲が小破を繰り返している。巻き込まれないためか、慌てて周囲の機体も逃げ出し始めた。
「アロー、シデン、退けぇ!! 主砲、副砲、プラズマ集束砲に、照準!!」
上手くデブリを利用して、
「撃てぇえー!!!」
光速の火線が、小破を繰り返していたプラズマ収束砲に突き刺さって、激しい閃光を伴って爆発した。衝撃にこの距離でも、コックピットが軋んでいる。
「まあ良い、一度は撃てました。……今回はそちらの勝ち戦ですね。では、またお会いしましょう」
「くそぉ……」
追えるだけの余力は無い。僕と先輩は、閃光の向こうに消えていくヤツの輝きを、黙って見ている事しかできなかった。
◇◇◇
「動けるかい、アロー、シデン?」
「なんとか、視界がまだチカつくけど、行けますよ……ふぅ……」
「すいません、弾が……」
「カニンガムとスーズ、シデンは収容する。艦の外縁カタパルトで、悪いが各機先に向かってくれ」
「了解、急いでくれ、
頬を思いっきり叩いて、叩いて、ついでに良く首を回して、何度も手を開いて閉じて、深呼吸。よし、切り替えよう。味方を守らないと。
「対宙監視班!! 絶対に目をそらすんじゃ無いぞ!!」
「左舷17ブロック被弾、損害拡大!!」
「まだだ、主砲、副砲、対宙レーザー、左舷監視を怠るな!!」
通信からは、今も砲台になって戦っている
「
十メートル級用だから、少し伏せた不格好な形だけど、なんとかマドナグは
「ノアさん、間に合ってくれ……!」
「すまん。少年……ぐっ……すぐ、追いつく」
「進路クリアー!! 再発進どうぞ!!」
「了解。アロー機。マドナグ、再度行きます!!」
方打ち式なので、遠心力が働く。少し進んで
まだ補正映像でも、極小のモザイク状ノイズにしか見えない。声は拾えているけど、距離40000以上。間に合うのか。
…………マドナグ?
「良いのか……、分かった」
「お兄ちゃん?」
聞こえた。
「敵機直上、インテリオル様!! 伏せて下さい!!」
「あぁ、お父様っ!! アローさまぁあっ!!」
狙わず、撃つ。
「え、あぁあ……っ!!」
「すごい。一撃で、二機も……!!」
爆発らしき物を確認。撃ち抜いた。撃ち抜けたはずだ。もう声も聞こえない。距離28000。マドナグのセンサー内。残弾十、撃てる。敵の暗号回線も傍受できている。
「なんだぁ、敵……艦砲……撃か!!?」
「あれか、なんて……してやがる。データに無い大型機影…………信号弾を……、ここまでで十分だ!!」
「退いて、くれるか……」
耳鳴りが、かすかにしている。流石に疲れた。尾を引いて飛んでいく敵影を見つめながら、走査波を走らせる。敵影無し。
「ありがとう。助かったよ、マドナグ……」
軌道上エレベーターに、味方の
◇◇◇
大勢はこちらの優勢で決した。軌道上エレベーターの制圧も完了したと報告は受けたけど、散発的な小競り合いはまだ続いているようだ。
戦域を大きく後退して、ボロボロになったドルム《味方艦》を曳航して港に着くよりも、航行してきた病院船艦隊と合流する方が早かった。
白一色で染め上げられた艦が、目に痛いくらいド派手に赤と黄色の信号光や、回転灯を光らせて航行している。
周囲には同じく真っ白い
完全な非武装機体で、肩に赤色灯と
原則、戦闘には参加しない機体だ。
流石に彼らを前に、武装や照準波を出すわけに行かない。僕はマドナグのコンソールを操作して、戦闘モードを一時的にスリープに。
マドナグはレーザー・ライフルの銃口を上に。
周囲のヘルム達とリアのムクも、同じように武装を格納状態にしている。
ホスピタルが
〝輝かしき黄金の支柱たる兵卒に、栄光あれ〟
イルマさんの言葉が、自然に脳裏に浮かぶ。
「マドナグ。今の、写真に撮ろうか」
どうやらマドナグにとって、すごく良い提案だったらしい。コックピット内、右手脇のサブスクリーンに、搭載型の映像記録装置から、百枚くらいホスピタルの写った連射撮影が、一気に細かくバーッと表示され始めた。
そんなに嬉しいのか。なら今度もっと写真を残さないとね。
ジー……というカメラアイの駆動音を、近くで検知して顔を向ける。リアの乗った僕のムクが、ホスピタルたちを見つめている。
「どうした、何か問題か、リア?」
「う、ううん。ああいうお仕事も、
「そりゃそうだろ。ローゼス内だとあんまり見かけないけど、大型施設に一機以上は居ただろ?」
「うん。でも……あんなにいっぱい動いてる所は、ほとんど初めて見たから……」
少し例えが悪いかもだけど、街中で救急車にすれ違っても、日常のひとつ。でも、戦場近くであれだけの機体数で動いていれば、別物って事かな。
「じゃあ、手伝って来るか?」
「え、良いのかな……?」
「こっちの警備は僕とヘルム隊でやるよ。武装を預けて、イルマさんと彼らに許可をもらえば良いさ。医療ポッドの運び出しも、忙しいだろうしな……」
緊急医療ポッドの中に入れば、高度な再生治療をすぐに受ける事ができる。身体の半分が消し炭でも、時間がかなりかかるけど。現代医療では、再生が可能とされていた。
「分かった。マドナグ、これ持ってて」
リアがマドナグにとっては小さなレーザー・ライフルと、ビーム・ソード。両肩武装の
「ここで預けるのかよ……ははっ、まったく」
────────────────────────────────
今回のまとめ。
🆚カーヴォン、カニンガムさんが意地で収束砲を破壊し、アローくん戦略的痛み分け。レッドアウトはヤバイ。アローくんもたいがいタフである。
シデン君は弾切れ。アロー君、ヘルム隊と共に、緊急再加速発進。見事にドルムを守り切る。
病院船が到着。リアちゃんも思う所あり。マドナグは写真好きと判明。可愛いですね。
狙撃シーン。アニメでry……もう毎回言ってますがな。6回目ですね。呪詛みたいw
ガンダムサンダーボルトはビーム粒子が非常に綺麗なので、そこだけでも一見の価値ありです。漫画の主人公二人のおいたわしさ? の、ノーコメントで……!
まだまだ発展途上のアローくん。いつか、まともなランカーエースを倒せる日が来るのか。あ、ローゼッキは例外で。
見事に弾けますよぉー彼は、なにせ。
病院船とホスピタルには、実は元ネタがあって、是非探してみてください。
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以下その方法と、今回は「リア」ちゃんと「ノア」ちゃん、「マドナグ」の一言と、次回予告です。
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リア「そわそわ……そわそわ……」
ノア「あれ? リアお嬢様、どうなさいましたか?」
リア「あ。どうも……あの、ノアさん。教えてほしいことが、あり、ます」
ノア「はい。どういたしましたか、そんなにかしこまって?」
リア「口紅って、どうやって選べば良いのかな……?」
ノア「………………じ、次回も、よしなに、よしなにぃい👋(ふりふり)」
マドナグ「👋(ツインアイから、ホスピタルの写真を立体映像出力)」
戦いは一時、終わった。兵たちは傷ついた心と身体を休め。愛すべき日常へと帰還していく。死んだ者。生き残った者。なぜか消滅した者。分かれ道。
次回、「願い」……星空を見上げる。傷つき、泣くことなど、叶わなくとも。