ギルドの受付で冒険者登録を済ませたルナとシアは、そろそろ日も傾いているため宿を探すことにした。
「ルナさん、今日はもう遅いですし、明日から本格的に冒険を始めましょう。」
「そうですねにゃ!みにゃさん、明日から本格的に活動しますにゃ!」
ルナは微笑み、コメント欄でも「おつルナ!」「明日も楽しみ!」といった声が流れている。
ギルドを出ようと扉に手をかけたその瞬間、横合いから無骨な笑い声が聞こえた。
「おいおい、初めて見る顔だな?」
振り向くと、鋭い目つきをしたハゲ頭の男たちが数名、ニヤニヤしながら近づいてくる。
彼らは武装こそしていないが、肩に力を込め、威圧的な態度でルナを見下ろしていた。
「獣人……なのか?耳と尻尾がついてるなんて初めて見たぜ。」
「はるか向こうの大陸には獣人がいっぱいいるらしいが、この辺じゃ珍しいな。」
ハゲの一団は興味津々といった様子でルナを取り囲むように立ち、シアは後ろで少し怯えた表情をしている。
「そんな可愛いなりで大丈夫なのか?冒険者だって?無理だろぉ?」
因縁をつけるように、ハゲ男の一人がルナにニヤリと笑いかけ、尻尾を掴もうと手を伸ばす。
別の男は耳に触れようと指を伸ばしてくる。
「ちょ、触らないでくださいにゃ!」
ルナは反射的に手を振り払う。
すると、そのハゲ男はまるでバネ仕掛けのように後方へ吹っ飛び、ゴンッ!とギルドの壁に激突した。
「え……!?にゃ……?」
ルナ自身も驚きで目を見開く。
ギルド内にいた人々も「なんだなんだ?」とざわめき出す。
にゃん民: え、今軽く手払っただけだよね?
にゃん民: ハゲふっ飛んだwww
にゃん民: ステータス上がってたからだろ!同接500いってたし
「同接500……?」
ルナはコメントを見てハッとする。
いつの間にか、配信画面の片隅に表示されている同接数は500を超えている。
つまり、攻撃力や防御力などがさらに跳ね上がっているということだ。
「まさか、軽く手を振るだけでこんな……」
にゃん民: ルナちゃん、怪力になってるな
にゃん民: ハゲ可哀想w
にゃん民: これは悪用厳禁だが、守るには最高かもな
ハゲ男たちは壁に倒れた仲間を見て青ざめる。
「なんだこいつ……異常な力だ……!」
結局、荒くれ者たちは何も言えず、そそくさと退散していった。
シアはほっと息をついて、ルナに微笑む。
「ルナさん、すごいです……!本当に強いんですね。」
「い、いえ、みにゃさんが見てくれるからにゃ……」
ルナは少し照れながらコメント欄を見る。
「すげえ」「笑った」「ハゲ撃退」と、にぎわっている。
「これはもう、いろんな場所を安全に歩けそうですにゃ!」
にゃん民: 次は宿屋行ってゆっくり休め
にゃん民: 明日から冒険本番だ!
にゃん民: とりまハゲには悪いことしたが自業自得だな
ルナは苦笑いしつつ、シアと共にギルドを後にするのだった。